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会長短信「春夏秋冬」

会長短信「春夏秋冬」はメールマガジン(メルマ日獣)に掲載しています

会長短信「春夏秋冬(63)」

「己亥は、十分な準備をして果敢にチャレンジし、発展する年」
 新年明けましておめでとうございます。  本年は己亥(つちのとい)、平成最後の31年を迎えました。  己亥は、「草木が種の中にエネルギーを貯め、次の段階を目指す準備をする年」とされています。 日本獣医師会にとっても、力を貯めて次の発展に繋げる1年になるよう祈念しています。 昨年の通常国会や臨時国会で成立を期待していた動物愛護管理法の改正による犬・猫へのマイクロチップ装着・登録の義務付けや、愛がん動物看護師法の新規制定による動物看護師の国家資格化は越年となりました。 それでも、昨年12月10日の臨時国会閉会日には、「愛がん動物を対象とした動物看護師の国家資格化を目指す議員連盟(仮称)」の設立発起人会が開催され、本年の通常国会開会後に超党派による議員連盟の設立総会を開催し、3月には愛がん動物看護師法案を国会に提出することが検討されています。  動物愛護管理法の改正とともに、国会の環境委員会での審議と早期成立に期待しています。私達も、獣医療現場における愛がん動物看護師と獣医師との適切な役割分担と連携による高度で多様なチーム獣医療体制の構築を目指して、準備を進めて行かなければなりません。  また、マイクロチップ装着・登録の義務化に向けても、本会、地方獣医師会及び会員構成獣医師の連携体制と個人情報の適正な取扱いなど獣医師会全体の情報ネットワーク管理体制の構築とともに、狂犬病予防事業との一体的な運用体制の整備についても準備を進めていく必要があります。 一方、残念ながら、現在畜産業界にとってイノシシは鬼門となっています。 ご承知のとおり昨年9月に岐阜県で26年ぶりに豚コレラが発生し、既に8例の養豚農場及び110頭の野生イノシシで発生が確認され、家畜保健衛生所の獣医師等による連日の防疫対応や国などの支援にもかかわらず、感染は終息していません。 このような事態を受け、昨年11月22日付けで岐阜県獣医師会の石黒会長から私宛に緊急要望書が提出され、①野生イノシシ等の検査体制の強化を図るための人的支援、②野生動物対策を恒常的に担う検査機関の整備、③農林水産省、厚生労働省及び環境省に所管が細分化されている事業を一元的に管理・統括するシステムの構築について要望されました。 このため、私からは平成31年1月18日付けで3省の担当局長宛に「家畜伝染病、人獣共通感染症等に対する防疫体制の充実・強化について(要請)」と題する文書を提出しました。 その要請内容は、①岐阜県における豚コレラ防疫に要する検査体制の強化、②特定家畜伝染病、狂犬病等重要疾病に対する検査体制の確立、③野生動物に対する検査体制の確立、④”One Health”の実践体制の構築、⑤農研機構動物衛生研究部門の国の機関としての位置付け等の家畜伝染病及び人獣共通感染症等に対する危機管理体制の整備・充実です。 これらの対応は、豚コレラの防疫措置にとどまらず、口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザ、アフリカ豚コレラなどの越境性感染症対策、狂犬病や重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などの人と動物の共通感染症対策等の観点からも早急な実現が望まれます。 これらの感染症が我が国でひとたび発生すれば、2020年の東京オリンピック開催、外国人観光客4千万人目標達成、1兆円を目指す日本農産物の輸出促進政策など国家的な取組みに大打撃を与えることが懸念されます。私達獣医師も、これらの感染症の未然防止、発生時の迅速な防疫対応と積極的な支援について、主役として中心的な役割を果たして行かなければなりません。 新年早々、大きな期待と懸念事項が錯綜するスタートになりましたが、しっかりと準備をして果敢にチャレンジし発展する1年にしたいと思います。 今年も皆様方と共に種々の課題解決に取り組んでまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。 平成31年1月31日 公益社団法人 日本獣医師会 会長 藏内勇夫

バックナンバー

会長短信「春夏秋冬(63)」「己亥は、十分な準備をして果敢にチャレンジし、発展する年」 (平成31年1月31日)
会長短信「春夏秋冬(62)」「日本獣医師会創立70周年記念行事、盛大に開催」 (平成30年12月28日)
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会長短信「春夏秋冬(59)」「災害去って、学問の秋」 (平成30年8月20日)
会長短信「春夏秋冬(58)」「第75回通常総会における事業承認を踏まえた獣医師の主体的役割」 (平成30年7月17日)
会長短信「春夏秋冬(57)」「動物愛護とチーム獣医療の進展」 (平成30年6月5日)
会長短信「春夏秋冬(56)」「「認定VMAT講習会」の共同開催を推進します」 (平成30年4月27日)
会長短信「春夏秋冬(55)」「平成30年度に向けた活動のスタート」 (平成30年3月30日)
会長短信「春夏秋冬(54)」「獣医学術学会年次大会【大分】の成功と、医師会との連携によるワンヘルスのアピール」 (平成30年2月28日)
会長短信「春夏秋冬(53)」「戊戌は「変化」の年」 (平成30年1月26日)
会長短信「春夏秋冬(52)」「獣医学教育の国際水準化と獣医師会活動の国際貢献に向けたスタート」 (平成29年12月28日)
会長短信「春夏秋冬(51)」「平成30年度に向けた政策要請」 (平成29年12月6日)
会長短信「春夏秋冬(50)」「目まぐるしく活動したひと月」 (平成29年11月2日)
会長短信「春夏秋冬(49)」「日本及びアジアが世界の獣医師活動をリードする時代」 (平成29年10月3日)
会長短信「春夏秋冬(48)」「SFTS対応等による”One Health”の実践の強化に期待」 (平成29年8月22日)
会長短信「春夏秋冬(47)」「予測できない天変地異への万全の備え」 (平成29年7月31日)
会長短信「春夏秋冬(46)」「第74回通常総会を終え、課題多き三期目のスタートに思う」 (平成29年7月5日)
会長短信「春夏秋冬(45)」「平成29年度はアジアの獣医師が活躍する年に」 (平成29年4月19日)
会長短信「春夏秋冬(44)」「獣医学術学会年次大会【石川】の成功と、OIEとの連携への期待」 (平成29年3月31日)
会長短信「春夏秋冬(43)」「県議と獣医師との二足のわらじで歩みます」 (平成29年2月22日)
会長短信「春夏秋冬(42)」「獣医学部新設の検証なき矛盾だらけの決定に怒り」 (平成29年1月30日)
会長短信「春夏秋冬(41)」「私が選んだ2016年日獣10大ニュース」 (平成28年12月27日)
会長短信「春夏秋冬(40)」「“One Health”国際会議の成功を歓び、禍根を残す無責任な特区決定に憤りを」 (平成28年11月22日)
会長短信「春夏秋冬(38)」「諸事の繋がりを大切に」 (平成28年9月30日)
会長短信「春夏秋冬(37)」「AIPO活動の再開への期待」 (平成28年8月29日)
会長短信「春夏秋冬(36)」「日本獣医師会によるアジア地域獣医師研修事業の再開」 (平成28年7月15日)
会長短信「春夏秋冬(35)」「外圧に屈せず一枚岩の団結で」 (平成28年6月24日)
会長短信「春夏秋冬(34)」「広域的な被災ペット救護支援」 (平成28年5月26日)
会長短信「春夏秋冬(33)」「災害に備える」(平成28年4月21日)
会長短信「春夏秋冬(32)」「AMR アクションプラン」(平成28年3月23日)
会長短信「春夏秋冬(31)」「日本獣医師会獣医学術学会年次大会【秋田】開催迫る」(平成28年2月19日)
会長短信「春夏秋冬(30)」「第2回One Healthに関する国際会議の開催決定」(平成28年1月22日)
会長短信「春夏秋冬(29)」「驚きのニュース」(平成27年12月18日)
会長短信「春夏秋冬(28)」「医師と獣医師との連携による感染症の解明」(平成27年11月19日)
会長短信「春夏秋冬(27)」「獣医師一人一人との繋がりこそ力(チカラ)」(平成27年10月16日)
会長短信「春夏秋冬(26)」「獣医師によるOne Healthの実践」(平成27年9月18日)
会長短信「春夏秋冬(25)」「新役員体制でのスタート」(平成27年8月19日)
会長短信「春夏秋冬(24)」「第72回通常総会を終え、二期目のスタートに思う」(平成27年7月23日)
会長短信「春夏秋冬(23)」「世界獣医師会と世界医師会の共催によるOne Health国際会議で講演」(平成27年6月19日)
会長短信「春夏秋冬(22)」「中国獣医協会の皆様を迎え、有意義な意見交換」(平成27年5月22日)
会長短信「春夏秋冬(21)」「All Japan Pet Expo in Tokyo及びインターペット -人とペットの豊かな暮らしフェア- に参加して」(平成27年4月21日)
会長短信「春夏秋冬(20)」「獣医師として巣立つ卒業生の皆さんに対する期待」(平成27年3月16日)
会長短信「春夏秋冬(19)」「マイクロチップ装着による個体識別推進シンポジウムに出席して」(平成27年2月25日)
会長短信「春夏秋冬(18)」「魅力ある組織の発展を期待 -新たな挑戦元年に-」(平成27年1月22日)
会長短信「春夏秋冬(17)」「気持ちも新たに年を越します」(平成26年12月22日)
会長短信「春夏秋冬(16)」「日本医師会との連携シンポジウムを開催して」(平成26年11月14日)
会長短信「春夏秋冬(15)」「地区獣医師大会に出席して」(平成26年10月23日)
会長短信「春夏秋冬(14)」 「意識改革によって組織の整備・充実を」(平成26年9月25日)
会長短信「春夏秋冬(13)」 「人とペットとの共生社会の構築を」(平成26年8月21日)
会長短信「春夏秋冬(12)」 「地方獣医師会との連携を強化し、迅速な課題解決に向けた更なる決意」(平成26年7月17日)
会長短信「春夏秋冬(11)」 「国際馬術競技大会に不可欠な獣医師会の支援」(平成26年6月20日)
会長短信「春夏秋冬(10)」 「地方獣医師会との連携を強化し、迅速な課題解決に向けた更なる決意」(平成26年5月16日)
会長短信「春夏秋冬(9)」 「獣医師会の約束」(平成26年4月21日)
会長短信「春夏秋冬(8)」 「平成25年度獣医学術学会年次大会(千葉)が成功裏に終了」(平成26年3月20日)
会長短信「春夏秋冬(7)」 「共に歩む日本獣医師会に期待を」 (平成26年2月20日)
会長短信「春夏秋冬(6)」 「目標実現の年に」 (平成26年1月17日)
会長短信「春夏秋冬(5)」 「新しい年に向かって」 (平成25年12月18日)
会長短信「春夏秋冬(4)」 「私の活動の原点は動物愛護運動から」 (平成25年11月19日)
会長短信「春夏秋冬(3)」 「五十嵐幸男先生のご逝去に接し」 (平成25年10月17日)
会長短信「春夏秋冬(2)」 「広く国民の理解の下で狂犬病対策の推進を」 (平成25年9月17日)
会長短信「春夏秋冬(1)」 「本会の発展はスピードある対応と組織行動で」 (平成25年8月17日)
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