会長短信「春夏秋冬」
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会長短信「春夏秋冬(46)」
「第74回通常総会を終え、課題多き三期目のスタートに思う」
平成29年6月22日、日本獣医師会第74回通常総会が、関係省庁・団体等から多数のご来賓を迎え、成功裏に開催されました。議長に池尾辰馬長崎県獣医師会会長、副議長に荻曽敏之名古屋市獣医師会会長が就任され、第1号議案から5号議案まで原案どおり承認・報告されました。また、第6号議案「役員選任の件」では、第1回理事会で選出・承認され6月9日に公示された役員候補者名簿に沿って各役員が選任され、総会後に開催された第3回理事会において、私は代表理事・会長に選任され三期目がスタートしました。
私は会長に就任して以降、日本獣医師会と地方獣医師会が表裏一体となり、同じ価値観と目的意識を持って、山積する課題の解決に邁進してまいりました。昨年11月10~11日に福岡県北九州市において開催された「第2回世界獣医師会-世界医師会“One Health”に関する国際会議」は、世界31カ国から639人が参加して「福岡宣言」が採択され、大きな成果を収めました。また、この会議に先立つ11月8日までに全国55地方獣医師会すべてが地域の医師会と学術連携協定を締結し、“One Health”を実践する全国ネットワークが整備されたことは、私にとっても大きな歓びでした。しかも、このような医師会との対等な立場での獣医師会の活動が福岡県人事委員会にも高く評価され、福岡県職員の給与について、従来の「医療職給料表(一)・(二)」を廃止し、「医師職給料表」と並んで「特定獣医師職給料表」が新設され、平成29年度から実施されるという副次的成果にも繋がりました。このことが、地域・職域偏在による獣医師不足の解消に繋がることを期待しています。
三期目においては、第3号議案として報告した平成29年度事業計画の中でご説明したように、緊急かつ重要な課題を解決するために二つの特別委員会を設置します。一つ目は“One Health”推進特別委員会で、狂犬病予防体制整備、医師会との連携強化及び薬剤耐性(AMR)対策について検討します。二つ目は動物飼育環境整備推進特別委員会で、マイクロチップ普及推進、家庭動物飼育健全化及び災害時動物救援対策について検討を進めます。これらのほか、各職域別部会委員会においても諸課題の解決に向け検討・実践してまいりますので、引き続きご支援とご協力を賜りますようお願いいたします。
一方、総会に先立って開催された第2回理事会においては、国家戦略特区による獣医学部新設問題について、各地方獣医師会においても強い懸念が示されているとの意見が出されました。このため、特区に対する本会の考え方とこれまでの取組を、改めて55地方獣医師会及び会員構成獣医師にご理解をいただくこととし、「国家戦略特区による獣医学部の新設に係る日本獣医師会の考え方について」を作成、理事会で新旧役員にご確認をいただいた上で、総会終了後に55地方獣医師会をはじめ出席者に配布いたしました。
その主な内容は、①我が国の獣医師の需給に関しては、全国的な獣医師総数は不足していないものの地域・職域偏在が見られることから、その解決のためには魅力ある職場の提供、処遇改善等が必要であること、②全国的観点で対処すべき獣医師の需給問題の解決及び長期的な視点で検証すべき国際水準達成に向けた獣医学教育の改善には、特区制度に基づく対応は馴染まず、獣医学入学定員の抑制策は維持する必要があること等です。
これに関連し、理事会において事実関係を質問され、また一部のマスコミ等において誤った報道がなされているのは、本会が「1校のみ」と要請したために今治市に1校に限り獣医学部を新設することにしたというものです。事実は、本会は昨年11月9日に特区による新設が決定された後も一貫して特区による新設は馴染まないと主張しており、苦渋の選択として、仮に地域が指定され設置認可申請が行われた場合には、国際水準の獣医学教育の提供と閣議決定された4条件を満たすものとなるよう厳しく審査するとともに、1カ所かつ1校のみとするよう、1カ月後の12月8日に要請したものです。正しくご理解を賜りますようお願いいたします。
我々は、特区そのものに反対している訳ではありません。動物の生命を守り人の健康を支える獣医学術と都市開発に係る規制緩和を同列に考えるのはおかしいのではないか、このような趣旨から獣医学術は特区には馴染まないと主張してきました。しかし、法律に基づき獣医学部を新設することが国において決められた場合には、公益社団法人である本会としては、この決定に従わなければなりません。
今治市における獣医学部の新設は、加計学園に決定いたしました。加計学園はこれまで教員の確保等、先行して獣医学部の設置に取り組んできました。現在、文部科学省に設置された大学設置・学校法人審議会において厳正なる審査が行われています。我々が目指す理想的な大学ができることを期待しています。いずれにしても我々は、国においてどのような結論が下されるにしても、常に公平・中立な立場で国民生活に貢献できるよう我が国の獣医療の発展に尽くしていかなければならないと考えています。会員及び会員構成獣医師をはじめ国民の皆様には、引き続きご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
平成29年7月5日 公益社団法人 日本獣医師会 会長 藏内勇夫
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