公益社団法人日本獣医師会

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会長あいさつ

令和8年 新年のご挨拶

公益社団法人 日本獣医師会
会長 藏 内 勇 夫

令和8年の新春を迎え,地方獣医師会の皆様,会員構成獣医師の皆様,関係団体の皆様におかれましては,新しい気持ちで新年をお迎えのことと思います.本年も皆様方が健康で素晴らしい一年をお過ごしになられるようお祈りを申し上げますとともに,本会に対しましてなお一層のご指導とご支援を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます.

まだ記憶に新しい新型コロナ感染症の発生ですが,今では新型コロナ感染症の発生があっても大勢の人々が冷静に受け入れており,感染症と共存する社会になってきていると言えます.しかしながら,鮮烈な印象を残したパンデミックの当時の経験や記憶が残っているうちに,私たちは必要な対応等の準備を行っていかないといけないと思います.
 このような中,日本獣医師会では令和4年4月から通常総会や理事会をはじめ各種の会議や行事も,対面で開催することになりました.現在では,令和6年から会議等は,Web 開催のメリットを活かしながら対面開催とWeb の併用やWeb での会議等の開催が定着してきています.

すでに皆様には報告していますが,私は令和6年4月,二年間の世界獣医師会(WVA)「次期会長」に日本人として初めて就任いたしました.このことは皆様のご支援の賜物であり重ねて感謝申し上げます.
 また,令和6年10月に韓国の大田(テジョン)市で開催された,第46回アジア獣医師会連合(FAVA)総会と,それに引き続いて開催された第23回FAVA 大会のFAVA 総会で私のFAVA 会長としての二年間の任期は終了し,後任は韓国のホー会長となりましたが,ホー会長からは,大きく発展してきたワンへルスの取組みを引き継ぎ,今後さらに地域の人や動物,そして環境の健康に寄与していくためメンバー全員の協力を願う旨の力強い所信表明があり,私は新たに設けられた顧問のポストに就きました.引き続きFAVA のさらなる発展に協力しているところです.

昨年11月にタイのバンコク市で開催されたFAVA 大会でもワンヘルスの推進に関する力強い発言がありました.さらに,ワンヘルス推進の一環として,アジア地域から狂犬病を撲滅させるという強い意志が示され,参加者一同が連携していくことになりました.

さて,私は昨年6月25日に開催された第82回通常総会及び理事会において,会長に選任されるとともに,役員も改選され,新たな執行部体制となりました.改めまして二年間という新たな任期を,獣医界のさらなる発展のため,鋭意課題等に取り組んでまいります.これまでどおり日本獣医師会と日本獣医師連盟の関係は,一心同体,車の両輪となって諸課題の解決に邁進してまいります.

加えてお伝えしたいことは,私は昨年7月に全国都道府県議会議長会の会長という重要な役職に就任し,その直後にはワンヘルスの推進,獣医師の処遇改善について政府に要請を行い,内閣総理大臣を始め閣僚に話を聞いていただくことができました.

令和6年は新年早々の元旦に,石川県能登半島において震度7を記録する地震が発生しました.日本獣医師会では,日本獣医師会危機管理室が設置されており,災害発生直後から発災県の獣医師会と連携して対策等を担うこととなっています.
 災害は起きないに越したことはありませんし,被害にあわれた方々のことを考えると慎重な発言が必要ですが,有事の際には円滑かつ迅速に社会の要請に応えることができるよう,日本獣医師会に設置された危機管理室を充実させるための取組を進めています.
 世界保健機関(WHO)は,引き続き自然災害を感染症などの生物災害,台風などの気象災害,地震などの地質災害の三つに区分して,それぞれの災害に対する事前の備えを求めています.わが国は北海道から九州までの全国各地で,台風,集中豪雨,地震,火山の噴火等の気象・地質災害が発生しており,まさに自然災害の多発国と位置付けられています.報道される機会が増えていますが,今後,将来想定される直下型の大規模地震,大規模水害,新興・再興感染症の流行等の発災時には危機管理室設置要綱に基づき,本会の会員構成獣医師並びに本会及び地方獣医師会の役職員の生命,身体等,さらに両会の業務,わが国の獣医療に係る被害の発生に対して速やかに対応するための準備を怠ってはいけません.
 また,VMAT を災害専門の認定獣医師とすることを検討したうえで制度化することを目指していますが,VMAT 構成員の養成・登録及び全国的な派遣体制の構築等の救護体制を整備し,引き続き緊急災害発生時における動物救護活動及び獣医療提供体制復旧の支援に備えていきたいと思います.

今後の私たち獣医師の活動については,獣医師の社会的地位をさらに高めていくとともに,ワンヘルスに象徴されるように,国内はもとより世界に向けた広範な視点で多方面の活動を推進していく必要があると考えます.そのためには,地方獣医師会や会員構成獣医師の皆様方をはじめ,国内の関係団体,行政機関及び教育機関,さらには国際獣疫事務局(WOAH(OIE)),世界保健機関(WHO)などの国際機関とも連携・協力し,これまで以上に獣医師をめぐるさまざまな課題に積極的に取り組んでいく必要があります.また,私たち獣医師は,この職業を通じて世界をより良くする能力を持っていると考えています.私はワンヘルスの概念が,この影響を生み出すためのプラットフォームを提供してくれるとも信じています.今こそ,世界中の獣医師が団結する時でもあります.引き続き皆様のご支援をお願いいたします.

ワンヘルスの推進については,令和6年8月にフィリピンのマニラにおいて私が会長を務めていたアジア獣医師会連合(FAVA)がアジア大洋州医師会(CMAAO)とワンヘルス活動推進の覚書(MOU)を締結しました.すでに日本獣医師会は日本医師会,世界医師会と覚書を結んでいますので,ワンヘルスの推進について,日本からアジア,アジアから世界へと協力して進める土台は完全に固められました.さらなる発展のためには,計画を立て,関係者の皆様の協力のもと準備をし,ワンヘルスを通じて健康で持続可能な世界を築くという目標に向かって実行あるのみです.
 なお,政府が公表した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2024」の中には,狂犬病予防法関連手続きのオンライン化等の人獣共通感染症対策の課題に対して,ワンヘルス・アプローチに基づき,国を挙げて取り組む旨が明記されました.また,骨太の方針2025においても,DX の推進は引き続き,デジタル・ガバメントとして政府を上げて行政のデジタル化を推進することとされています.さらに,日本獣医師会ではワンヘルスの理念を踏まえ,新型コロナ感染症をはじめ人獣共通感染症対策等に先進的に取り組んできました.引き続き,人獣共通感染症や薬剤耐性問題などに対処していくためには,日本国内だけでなくアジアをはじめ世界においても同時に連携して有効な対策に取り組んでいかなければなりません.
 薬剤耐性(AMR)対策の推進に関する対応については,政府が公表したAMR 対策行動計画(2023-2027)に基づき,普及・啓発,モニタリング調査等への協力,特に小動物臨床現場における抗菌剤の適正使用・慎重使用のための具体的な方策を検討することとなっています.しかしながら,昨年は農林水産省,厚生労働省等への協力は会議等に参加しただけにとどまり,具体的な対応については改めて検討し,実行に移していかなければなりません.
 すでにAMR 対策に取り組まれている先生方もいらっしゃいますが,畜産分野での動向調査や監視は進んでいるものの,全体としてはまだ十分なものではなく,日本獣医師会においても,政府のアクションプランをサポートする視点での活動にはなっていません.また,獣医師会の強みを活かして本会の先生方の協力を得ながら,具体的には小動物分野における抗菌薬使用量データの収集,診療獣医師とのつながりを活かした飼い主さんへの慎重使用を指導・教育していく必要があります.

販売用の犬・猫に対するマイクロチップ(MC)法定登録事業は,日本獣医師会が指定登録機関として取り組んでいますが,最大の問題であった手数料を令和6年4月から値上げした結果,本事業よる財政への圧迫は解消されました.しかしながら,販売犬猫のMC の装着・登録については具体的な項目について話し合いを進めて,要請し,手続きを進めることにより相当程度の準備はできましたが,国会での法案審議に至らず動物愛護管理法の一部改正等はまだ行われていません.この件についても,引き続き関係方面に働きかけを行い,当会の会員を始め関係者の納得が得られるように進めていきます.
 関連して,地方自治体及び飼育者の利便性の向上のため,日本獣医師会の狂犬病予防法の犬登録手数料及び狂犬病ワクチン等管理システムを厚生労働省が進める狂犬病予防法関係手続のDX 化の中に組み込んでいただくとともに,犬の登録促進,登録料の確実な徴収,予防注射接種率の維持・向上等,円滑な支援の推進を検討し,説明及び要請を行い,活動を進めています.
 昨年に引き続き再度お願いすることではありますが,地方獣医師会におかれましては,いかなる事態においても狂犬病予防注射事業を円滑に運用するため,狂犬病予防事業全体の市区町村からの一括受託を推進され,MC 法定登録事業とともに,一層円滑かつ効果的な運用体制の確立に向けて,本会とともにご尽力をお願いいたします.このような制度の抜本的な改善は,犬猫等の飼い主をはじめ国民全体の利益の向上に繋がるとともに,獣医師会組織の基盤強化にも大きく寄与することが期待されますので,皆様のご理解とご協力について重ねてお願いいたします.

新たな国家資格である愛玩動物看護師については,昨年2月に第3回国家試験があり5,048人が合格しました.合格者の累計は2万8,000人超の有資格者となります.今後の活躍を期待するとともに,獣医師との関係だけではなく社会にどう貢献していくかということも重要となります.
 令和6年3月に報告された「新たな国家資格としての愛玩動物看護師のあり方に関する検討報告書(中間とりまとめ)」(獣医事審議会免許部会・中央環境審議会動物愛護部会愛玩動物看護師小委員会(合同委員会))の中に,「令和5年4月に新たな国家資格者である愛玩動物看護師が愛玩動物診療現場で業務を開始し,これまで獣医師のみの獣医療現場が大きく変化していくこととなる」.また,この報告書には,チーム獣医療環境の構築が重要であると書かれており,そのチーム獣医療を考えた場合,獣医師だけでなく愛玩動物看護師の役割は欠かせないものになっていきます.そのうえで,高度な獣医療提供体制の構築と,高齢飼育者の支援や地域コミュニティーの再構築等で,動物病院が地域社会と連携した獣医療提供体制の確立等に努めていかなければなりません.

日本獣医師会が長年取り組んでいる課題として,獣医師の地域及び職域における偏在の解消と,その主な要因となっている公務員獣医師と産業動物獣医師の処遇改善があります.これまでの粘り強い要請活動で成果は出ていますが,今後は関係者が処遇改善に向けて一丸となって地方獣医師会,関係団体,関係省庁とも連携しながら,関係者にとって有益な成果を出していかなければなりません.
 さらに,女性獣医師の就業継続及び復職への支援等,女性獣医師の活躍推進については,引き続き,女性獣医師活躍推進委員会における就業支援対策を検討し実行に移していきます.「女性獣医師が活躍する職場は,男性獣医師を含むすべての獣医師が活躍できる職場である.」という理念の下,勤務条件及び職場環境の向上のための取組みを強化します.併せて,女性獣医師の加入を促進するための方策も検討し具現化していく必要があります.

家畜伝染病である豚熱,アフリカ豚熱等への対策については,引き続き発生動向を注視するとともに,特に高病原性鳥インフルエンザは,昨シーズンは国内での初めての発生がこれまでで一番早く大規模な発生でした.全国における野鳥や家きんの鳥インフルエンザの発生状況も注意する必要があります.また家畜伝染病予防法で届出伝染病に指定されているランピースキン病が,令和6年11月に国内で初めて発生した後に,緊急政令で法定伝染病に準ずる措置が定められた状況を踏まえ,必要に応じて本会に設置された豚熱等家畜伝染病対策検討委員会において,本会や地方獣医師会における防疫対応等の支援等について検討を行い,その結果を踏まえ速やかに体制の構築,要請活動等の必要な措置を講じつつ,家畜保健衛生所等の行政機関にも協力していくことは獣医師としての役割でもあります.
 併せて,すでに誕生した「農場管理認定獣医師」を家畜伝染病予防法の飼養衛生管理基準で定められた農場ごとの担当獣医師に位置付け,養豚農場における豚熱ワクチン接種の方策を含め,農場の飼養衛生,経営管理等全般を管理する体制を普及し,その構築に努めていかなければなりません.

獣医学教育の改善・充実については,日本獣医師会では,国際水準の獣医学教育の提供を目標に掲げ,文部科学省や獣医学系大学と連携して支援活動を実施してきました.診療参加型臨床実習及び体験型家畜衛生・公衆衛生実習の実施体制を確保するため,全国の獣医系大学と連携・協力の下で「獣医学実践教育推進協議会」を通じて,農業共済団体の協力も得ながら,わが国の獣医学教育の改善・充実の取組みを続けていきます.
 また,獣医師の卒後教育を一層充実させるため,日本獣医師会の中に設置され農林水産大臣の指定を受けた「認定・専門獣医師協議会」が,評価・認定した研修プログラムの受講者であり,認定試験の合格者に付与する資格または名称について,当該認定獣医師の資格等の広告を法的に可能となりました.昨年1月の試験での7名の合格者がその第1号となりました.このような獣医学的知識及び技術の研鑽の場を提供していくことは,若手獣医師にとっても魅力ある生涯を通じての学びの機会になるものと考えています.
 なお,「認定・専門獣医師協議会」は,認定・専門獣医師の認定分野の設定,専門性認定団体の認定要件の評価・認証,認定・専門獣医師の登録・管理・公表に係る事業を実施しており,その進捗状況等を説明すると,認証業務を行う「認定・専門獣医師協議会」は,令和6年7月24日に農林水産省(農林水産大臣)から認定要件確認機関としての指定を受けました.今後,認証に当たっては,専門性認定要件を満たした団体から「認定・専門獣医師協議会」に評価申請があった場合に,改めて評価し認証していくこととなります.現在,認定・専門獣医師認定団体は7団体15資格であり,今後,認証された認定・専門獣医師は,「認定・専門獣医師協議会」に登録され,氏名と資格名が外部に公表されていきます.
 一方,農場管理認定獣医師については,「農場管理認定獣医師」研修プログラムを受講しており,5年間以上の農場管理獣医師に係る業務経験を有するなど資格認定基準を満たす獣医師が認定試験を受けられるようになります.本会では,鋭意情報発信を行い,問い合わせ対応をしてまいりますので,よろしくお願いいたします.また,本年1月に実施される第2回の認定試験は試験会場を東京と福岡の2カ所として,受験者の便宜を図ります.

さらに,獣医学術に関する国際交流の推進のため,WVA 次期会長である私が主体となって,WVA 及びFAVA 等の関係国際機関の活動に積極的に参加する必要があります.特に,2026年4月21日から24日まで有楽町の国際フォーラム会場で開かれる世界獣医師会東京大会の万全な準備を整え,大会の成功に向けて努力してまいりますので,皆様のご支援・ご協力をよろしくお願いいたします.また,世界獣医師会東京大会の期間中に,私はWVA 会長に就任しますので,お伝えいたします.

一方,日本中央競馬会及び公益財団法人全国競馬・畜産振興会の助成を受けて行っているアジア地域臨床獣医師等総合研修・ネットワーク事業については,アジア地域の家畜衛生対策の向上に努めることによりわが国への越境性感染症の侵入防止を図るとともに,アジア地域各国の獣医師会及び研修修了獣医師との交流と連携を一層推進することにより,大きな成果が期待されているとともに,成果は出てきています.
 これらの国際交流活動を通じて,本会が国際貢献に努めることにより,わが国はもとより,アジア,世界の獣医師の地位向上を図ることができると考えています.これらの活動等についても,積極的に参加いただける方が必要であり,皆様のご理解とご協力が力強いものとなります.

もう一つ重要なことは,地方獣医師会の組織率向上を図るため,特に,新規若手獣医師等に対する有用かつ魅力ある獣医師活動を提供するなど,引き続き日本獣医師会の中に設置している総務委員会において,獣医師会組織の強化方策について検討を行い適宜実施することとします.併せて,現在取り組んでいる日本獣医師会の事務・事業の経費削減・事業の見直しについても,総務委員会の下に置かれている組織財政小委員会を中心として,職域別部会委員会,獣医学術学会年次大会,動物感謝デーなどの効率的な運営のほか,各種事業の見直しを行い,必要に応じてスクラップアンド・ビルド,事務局体制の効率化,健全な財政運営の検討を行っていますので,本年からできるところから速やかに実施していきます.

日本獣医師会は,獣医師人材の育成を図ることにより,動物に関する保健衛生の向上,動物の福祉及び愛護の増進並びに自然環境の保全に寄与し,もって人と動物が共存する豊かで健全な社会の形成に貢献することを目的としています.この目的を達成するためには,55の地方会のご協力がなければできないものであり,日本獣医師会事務局としても,本年も日ごろから活動内容等を情報としてお伝えするとともに,また地方会の皆様が何を求めているのか,あらゆるツールを使い情報交換・意見交換等を行ってまいります.

以上,地方獣医師会及び会員構成獣医師会の皆様,また日本獣医師連盟をはじめ関係団体の皆様のご理解とご協力をいただき,本会会長として多様かつ重要な課題に積極的に取り組むため,本会の組織,事業及び財務の見直しと改善を含め,本会が強靭かつ柔軟に,厳しい社会情勢に的確に対応し,時代のニーズに応じて,一層発展することができるよう,引き続き努力してまいります.本年も通常総会,全国獣医師会会長会議,理事会,職域別部会委員会,特別委員会等で積極的で有意義な議論を重ね,その総意に基づき新たな決意で積極・果敢に挑戦してまいります.皆様におかれましては,改めて一層のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げまして,新年のご挨拶とさせていただきます.

日本獣医師会とは