会長短信「春夏秋冬」
会長短信「春夏秋冬」はメールマガジン(メルマ日獣)に掲載しています
会長短信「春夏秋冬(34)」
「広域的な被災ペット救護支援」
平成28年4月14日夜に端を発する最大震度7の熊本地震は、1カ月経過後も余震が続いています。熊本県及び大分県における震度1以上の有感地震は、5月11日までに1,390回に達し、震度4以上だけでも何と108回に上っています。
私はお隣の福岡県筑後地方で生まれ育ちましたが、これまでに経験した地震の最大震度は3まででしたので、今回の熊本地震がいかに凄まじいものか改めて驚かされます。
熊本県下における被害は、5月23日現在で、死者49人、行方不明者1人、住宅被害9万6千棟、避難者は198カ所の避難所に9千人、被害額は内閣府試算で最大4兆6千億円となっています。被災された方々の一日も早い復興を祈るばかりです。
報道によれば、避難生活による関連死の疑いは20人に上るとされています。
この中には、飼い犬・猫との同行避難を行ったものの、避難所内に入れずに車中泊を行った結果、いわゆるエコノミークラス症候群で亡くなられた方もおられると聞いています。
今後、避難所の縮小や仮設住宅での居住開始に当たって、健康上の理由も含め、同行避難しているペットの継続的な飼育が困難な事態となることが懸念されます。
先月の本メルマガでもご紹介しましたが、現在、一般社団法人九州動物福祉協会では熊本県境に近い大分県九重飯田高原に設置を予定している九州災害時動物救援センターの整備を突貫工事で進めています。
九州災害時動物救援センターは、東日本大震災における被災家庭動物救護・獣医療活動を教訓とし、全国に先駆けて九州圏における拠点施設として九州地区9地方獣医師会の支援を得て設置するものです。
今回の熊本地震により、熊本県、熊本市、熊本県獣医師会等においては、被災ペット等の保護収容に務めています。しかし、上述のとおり、避難生活が長期化するに伴い、保護預かり動物が増加し、動物愛護センター等での収容が困難となることは明らかです。
このため、熊本県獣医師会の穴見会長からは、九州災害時動物救援センター設置のための寄附金募集の強化と、同センターの早期開設による被災ペットの受入れ及び保護管理が強く要請されています。
このような被災ペットの長期保護預かり等については、熊本県、九州動物福祉協会、九州各県の獣医師会等のみの対応では到底困難です。幸い、広域九州圏9県の知事で構成される九州地方知事会では、平成25年10月に「九州・山口9県災害時愛護動物救護応援協定」を締結し、九州各県及び山口県において被害が発生した場合には、被災した愛護動物の救護活動を広域的かつ円滑に行うこととしています。
穴見会長からの要請を受け、九州各県に対しても、人的応援体制を含め支援をお願いして行く所存です。
現在、九州災害時動物救援センターは6月1日からの被災ペット受入開始を目指し、準備を進めています。
それに要する資材等については一般財団法人ペット災害対策推進協会(旧全国緊急災害時動物救援本部)からの支援も受けています。しかし、熊本県獣医師会災害救護対策本部等に代わっての同協会による寄附金募集は、現時点では東日本大震災寄附金に比べ僅か250分の1の金額にとどまっており、このままでは十分な被災ペットの救護活動が実施できない状況となっています。
本会が4月18日から実施している熊本地震動物救護活動等支援義援金のほか、(一社)九州動物福祉協会及び(一財)ペット災害対策推進協会が取り組んでいる寄附金募集についても、特段のご理解とご協力を賜りますよう重ねてお願い申し上げます。
平成28年5月26日 公益社団法人 日本獣医師会 会長 藏内勇夫
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