会長短信「春夏秋冬」
会長短信「春夏秋冬」はメールマガジン(メルマ日獣)に掲載しています
会長短信「春夏秋冬(26)」
「獣医師によるOne Healthの実践」
8月29日の中部地区を皮切りに、本年度の地区獣医師大会が開催されています。私は可能な限り地区獣医師大会に出席することにし、これまで新潟、高知、札幌及び横浜での大会に出席しました。大会の成功に向けご尽力された各地区獣医師会連合会、とりわけ大会を主催された道府県市獣医師会の役職員の皆様方のご貢献に対し、心より感謝申し上げます。
大会におけるご挨拶でも申し上げましたが、私はこれまで日本獣医師会と地方獣医師会とは表裏一体であり、対話を重ね、両者が情報を共有し、同じ価値観、同じ目的意識を持って共に活動することが重要であると述べて参りました。そして、特に緊急かつ重要な課題については特別委員会を設けて検討してきました。
今期は、「人と動物の共通感染症対策」と「マイクロチップ普及推進」の2課題について特別委員会を設置し、ミッションを明確にして検討を進めることにしています。
これらの課題の中で、特に「医師会との連携推進」の重要性について強調して参りました。
一昨年に本会と日本医師会の間で学術協力の推進に関する協定が締結されてから、地方獣医師会の皆様のご努力により、これまで25の都府県市獣医師会と地方医師会の間で同様の協定が締結されました。本会としては、今期中に全ての地方獣医師会における協定締結を達成すべく積極的に支援して参ります。
その具体的な活動として、これまでに「狂犬病」及び「ダニ媒介性感染症」をテーマに医師会との連携シンポジウムを開催したほか、11月6日には「越境性感染症」について、更に来年2月に秋田で開催される獣医学術学会年次大会においては「One Healthを考える」と題して連携シンポジウムを開催することにしています。
また、日本獣医師会雑誌第7号に掲載したとおり、本年5月にスペインにおいて世界獣医師会(WVA)と世界医師会(WMA)が初めて開催したOne Healthに関する国際会議において、私は日本医師会の横倉会長と共に講演を行い、その協力関係が国際的に注目されました。その高評価を受け、6月22日付けのWVA・WMA事務局長の連盟書簡により、第2回の上記国際会議の日本での開催要請がありました。
本件について9月10日に開催された本会第4回理事会にお諮りしたところ満場一致でご承認いただき、また、翌11日には日本医師会からも本国際会議の共催について了承する旨、正式に回答を頂戴しました。
開催時期については現在WVA等と調整中ですが、2017年秋頃の開催を予定しています。
人と動物の共通感染症は、病原体としては、プリオン、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫等広範であり、感染経路も、人、ペット・野生動物、節足動物、食品等と様々です。しかも、エボラ出血熱、新型インフルエンザ、BSE・vCJDなど新興・再興感染症は、いずれも動物由来のものです。今後、科学の進歩と共に、感染症における人、動物及び環境の関連性が一層明らかになるとともに、人と物の国際的な移動が活発化する中で、新興感染症が瞬く間に世界的な大問題に発展することも懸念されます。
獣医師は、獣医療の専門家として、人間は多くの動物の中の1種類に過ぎないことを理解し、広く動物や環境全体を捉えて感染症を分析する能力を有しています。
学術学会やシンポジウムの場で一層の研鑽に努めるとともに、10月3日に開催される動物感謝デーの場等を活用した国民への直接的な普及活動の役割も期待されています。全国的な獣医師と医師との連携体制を確立し、それを世界にアピールしながら、「獣医師の誓い-95年宣言」を力強く実践して行こうではありませんか。
平成27年9月18日 公益社団法人 日本獣医師会 会長 藏内勇夫
バックナンバー
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