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日本獣医師会 薬剤耐性(AMR)対策推進検討委員会報告書の公表について

掲載日:2019年09月12日
日本獣医師会に設置された「One Health 推進特別委員会」の課題別委員会である「薬剤耐性(AMR)対策推進検討委員会」は、このほど委員会報告「小動物獣医療における薬剤耐性(AMR)対策としてのリスク管理措置の在り方」をとりまとめました。
ページ下のリンク「委員会報告「小動物獣医療における薬剤耐性(AMR)対策としてのリスク管理措置の在り方」」をクリックしてご覧ください。


【報告書の概要】
1 委員会の開催:3回(平成29年11月6日、平成31年1月29日、令和元年6月18日)

2 検討内容:①小動物診療施設における動物用・人用・輸入医薬品の使用実態調査の実施、②小動物診療における薬剤耐性対策の在り方

3 報告の概要
(1)薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2016-2020)に基づく農林水産省による調査
①愛玩動物分野における人用抗菌剤の販売量調査(平成29年度実施)
平成28年に愛玩動物を対象とした飼育動物診療施設に販売された人用抗菌剤総量は6,480.7kg(45.4%)、動物用抗菌剤の量は7,793.1kg(54.6%)、合計14,273.7kg(100%)。
抗菌剤の系統別では、第1・2世代セファロスポリンが3,115.0kg(48.1%)、ペニシリン系が1,932.0kg(29.8%)、テトラサイクリン系275.8kg(4.3%)、フルオロキノロン系114.3kg(1.8%)、第3世代セファロスポリン107.0kg(1.7%)、カルバペネム系6.6kg(0.1%)。
②疾病罹患愛玩動物(犬・猫)由来細菌の薬剤耐性モニタリング調査結果(平成29年度実施)
動物種及び菌種による数値の幅があるが、第3世代セファロスポリン耐性率は約25%~80%、フルオロキノロン耐性率は約30%~80%と、高率に耐性菌が検出された。
③健康な愛玩動物由来薬剤耐性菌モニタリング調査(平成30年度実施、本会が調査協力施設リストを提供)
本会が協力し、全国178カ所の小動物診療施設の協力を得て大腸菌(犬152株、猫159株)、腸球菌(犬145株、猫90株)を分離。現在集計中。

(2)小動物診療施設における動物用・人用・輸入医薬品の使用実態調査
動物診療施設における抗菌剤の使用実態を使用量ベースで把握することを目的とし、地方獣医師会会員動物診療施設172施設から有効回答を得た。
平成29年度1年間の使用量は、成分量ベースで動物用抗菌剤157,763g(37%)人用抗菌剤265,665g(62%)、輸入抗菌剤6,263g( 1%)であった。結果からは、小動物用の医薬品が承認・許可されていれば、それらを優先的に使用する傾向が示唆された。

(3)小動物獣医療分野における薬剤耐性リスク管理の在り方
小動物診療現場では、伴侶動物の生命と健康を守ることが最優先であり、フルオロキノロン製剤等、効果が見込める抗菌剤を積極使用せざるを得ない現状にある。一方、承認・許可された動物用医薬品が少ない上に、動物用抗菌剤は人用抗菌剤に比べ価格が割高なことから、人用抗菌剤が広く使用されている。人用医薬品の転用による動物用医薬品の承認促進と、飼育者の利便性を高め、価格が割高となっても市場競争力を確保できるよう剤形変更手続きの簡略化が必要である。
このため、薬機法関係事務取扱を規定した農水省による関係通知を改正し、①承認特例措置にフルオロキノロン系等製剤を含むこと、②特例措置による承認に必要とされている「国内外の臨床経験に基づく文献情報」、「使用実態調査」、「生物学的同等性試験」等の添付資料について、「特別承認申請可能医薬品リスト(仮称)」に掲載された人用医薬品の転用申請の場合はすべて不要とし、又は現場での使用実態確認の目的を超える資料提出を不要とすること、及び③人用医薬品と剤形が異なる場合等に課せられている生物学的同等性試験等は不要とし、対象動物を使用した安全性試験及び用法用量決定試験により確認することを提言する。
その上で、本会、地方獣医師会及び会員構成獣医師が農林水産省、動物用医薬品メーカー等と密接に連携・協力し、承認・許可された小動物用医薬品が存在する場合には、原則として当該動物用医薬品を使用することとし、薬剤耐性に留意した適正使用と慎重使用を徹底すべきである。
委員会報告「小動物獣医療における薬剤耐性(AMR)対策としてのリスク管理措置の在り方」