謹賀新年 -藏内会長新年挨拶-
掲載日:2014年01月01日
新年のご挨拶
公益社団法人 日本獣医師会
会長 藏内勇夫
新年あけましておめでとうございます.公益社団法人日本獣医師会の会員並びに構成獣医師の皆さまにおかれましては,ご健勝にて新年を迎えられたことと心からお慶び申し上げます.
旧年中は,本会の事業活動にご理解とご支援を賜り厚く御礼申し上げます.今日,我が国を含め世界各国で最優先課題として社会から求められていることは,新しい国家ビジョンとミッションの確立であり,それに基づくグランドデザインの構築と施策の具現化,さらには国家間や組織間での相互信頼による新しい連携の強化であります.これらは,まさに日本獣医師会においても該当する課題であり,本年はこれまで以上に皆様方と情報の共有化に努め,一体となって積極的な提言とその実践である「攻めの姿勢」と,施策の検証とそれに基づく改善・改革を進める「守りの姿勢」を明確にし,本会の円滑な運営に努めてまいります.会員並びに構成獣医師の皆様方の一層のご支援をよろしくお願いします.
国民の生命を守り,文化的な生活を追求し,人と動物が共存する豊かで成熟した社会の構築を目的に,畜産振興と家畜保健衛生の指導,食品や環境等の公衆衛生の向上,並びに動物の医療推進と愛護や福祉を担うのが構成獣医師であり,その組織団体である獣医師会に対する社会の期待は近年一層高まっています.そうした中で,構成獣医師は,感染症に対する防疫体制の整備,獣医療体制の充実,動物福祉に関する管理と運営の推進,次世代を担う人材の育成強化を目指しています.特に獣医療法に基づいて国が定めた獣医療の質の確保とチーム獣医療提供体制の確立については,全力で取り組まなければなりません.さらに近年の動物愛護及び普及状況を踏まえて,マイクロチップの装着の義務化に向けた活動とその普及啓発が強く求められています.これらの課題に対してスピード感を持って対処する必要があります.
こうした中,日本獣医師会会長に就任して以降,自由民主党をはじめ,公明党,農林水産省,厚生労働省,環境省等の関係機関に対して獣医療に関する施策の整備充実に係る要請を行ってまいりました.近年,口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザ等の家畜法定伝染病が発生し,また,我が国では半世紀にわたり発生が制御されて来た致死性の人獣共通感染症である狂犬病の侵入リスクが高まり,国民が安全で安心できる日常生活を確保する上で,大きなリスクの脅威があります.また,犬や猫が広く一般家庭で飼育され,動物が人の介護や福祉及び学校教育分野で活用される等,動物の社会的役割が一層重要視され,人と動物の共生社会の構築が国家的課題であります.これらに対して獣医師が質の高い獣医療を提供し,社会の期待に応えていくことが強く求められています.そこで,獣医療提供体制の整備・充実が一層促進されるように要請をいたしました.要請事項の中で特に強く指摘したのは,1)緊急災害時における被災動物対策としてのマイクロチップの普及推進について,2)人と動物の共通感染症対策の整備・充実に係る獣医師と医師の連携推進について,3)女性獣医師の就業支援及びキャリアアップの推進についてであります.
第一の課題である緊急災害時の被災動物対策としてのマイクロチップの普及推進については,東日本大震災の被災動物救護活動において,動物の飼育者を確認する上でのマイクロチップの重要性が再確認されました.また,平成24 年に公布された動物の愛護及び管理に関する法律の一部改正において,動物の所有者責任の強化が重要であるとの観点に立ち,マイクロチップ装着の義務化に向けて必要な措置を講じることが明文化されました.また,平成25 年に環境省が策定した「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」においても,平常時に飼い主が行う対策の実例として,ペットが迷子にならないための対策として,マイクロチップ等による所有者の明示があり,緊急災害時の対策としてマイクロチップ装着の重要性が示唆されています.すなわち,家庭動物の個体識別の合理的方式としてのマイクロチップの普及推進の理解を図るものです.
第二の課題である人と動物の共通感染症対策の整備・充実に係る獣医師と医師の連携推進については,共通感染症に対する国民の関心が高まるとともに,これらの共通感染症の侵入と蔓延防止に係る社会的リスクを的確に対処するため,体制整備の重要性が指摘されています.共通感染症の予防において,人と動物の生活環境やフードチェーンの川上に位置する動物の医療を受け持つ獣医師と,その川下に位置する人の医療を受け持つ医師が緊密な連携を保つことが重要であります.日本獣医師会は日本医師会と連携し,共通感染症の危機管理や対策の整備・充実に関して情報交換し,国内や地域の防疫体制の整備を図るために,両組織が効果的に連携するための体制の整備を図るものです.
第三の課題は,女性獣医師の就業支援及びキャリアアップの推進についてであります.獣医学系大学において女性獣医師の増加が顕著となり,近年は各年度の新規獣医師の半数を女性が占めています.女性獣医師が継続的に就業し,しかも責任ある立場で潜在力を発揮し,幅広い職域で活躍できるようにならなければなりません.近年,公務員獣医師職や産業動物獣医師職が不足するといわれる中,獣医師の職域や地域偏在を解決する上からも,女性獣医師が継続的に就業できる職場環境の整備を支援し,就業率の向上とキャリアアップを図ることは,獣医療提供体制の整備を促進する上で必要であります.そこで,速やかに新規女性獣医師の就業を支援する職場環境の改善・整備を図るものです.
さらに,日本獣医師会では,課題の重要性に鑑み,会長の下に狂犬病予防体制整備特別委員会,女性獣医師支援特別委員会,日本医師会との連携推進準備委員会を設置しました.
狂犬病予防体制整備特別委員会では,今日の飼育犬を取り巻く社会環境の変化や飼育者ニーズの多様化の中,狂犬病予防接種率の低下,登録頭数と飼育頭数の乖離,狂犬病予防注射済票による注射頭数把握の実効性低下などの狂犬病事業低迷の状況を踏まえ,狂犬病予防事業の実効性の確保と充実・強化を図るために,科学的根拠に基づいて検討を始めました.委員には地方獣医師会,本会の職域部会,学識経験者の他に,厚生労働省,農林水産省,環境省の担当者が参画しております.狂犬病は我が国において半世紀にわたり発生していませんが,平成18年にフィリピンからの帰国者2名が本病を発症し,死亡した事例がありました.さらに我が国と同様に本病が未発生であった台湾において,平成25年11月11日現在,野生動物であるイタチアナグマ215頭やジャコウネズミ1頭の他に犬1頭で本症の発生が見られ,大きな社会問題になっています.日本獣医師会では大きな社会的リスクを有する狂犬病の完全制御に向けて活動を強化してまいります.
女性獣医師支援特別委員会では,前述しましたように新規獣医師の半数を占める女性獣医師の就業を支援するため,キャリアアップと就業の継続に係る方策を検討し,獣医師の地域や職域の偏在を解決する一助として女性獣医師の活動を支援し,就業者と雇用者双方への情報提供や未就業者に対する就業や現職復帰への学習機会の提供,キャリアアップを図るための体系的な学習機会の提供,職場環境の改善対策等の推進を目指してまいります.
日本医師会との連携推進準備委員会の設置に関して,獣医療と医療を専門職域とする獣医師と医師は,動物と人の健康増進を通して国民の生活向上に貢献する使命を担っています.一方,国民の間で高病原性鳥インフルエンザを始め,多くの人獣共通感染症の流行制御,また食品の安全性確保に関する意識が高まる中,獣医師と医師が緊密に連携し,安全で安心な社会を構築することが求められています.平成24年10月に世界医師会(WMA)と世界獣医学協会(WVA)は,「One World, One Health」の理念に基づき,協力関係を構築する旨の覚書を締結しました.このような状況から,本会は日本医師会と連携を深めるために特別委員会を設置し,その方策について検討を行う必要があります.具体的な検討項目は,人と動物の共通感染症の流行制御に関する情報の共有化,獣医師会と医師会間での課題別活動や体系的活動の推進,全国レベル並びに地域レベルでの獣医師と医師の交流を図るための方策等についてであります.なお,平成25年11月20日に明治記念館で開催された日本獣医師会会長を激励する会「獣医療提供体制の整備充実を目指すキックオフ宣言」に先立ち,公益社団法人日本獣医師会と同日本医師会の学術協力の推進に関する協定を締結しました.歴史上第一歩となる医師会との学術協定の成果は獣医師会のみならず,社会から大いに期待されています.
最後になりますが,改めて日本獣医師会の会員並びに構成獣医師の皆様方の本年のご活躍とご発展,ご多幸をお祈りし,新年のご挨拶とさせていただきます.
公益社団法人 日本獣医師会
会長 藏内勇夫
新年あけましておめでとうございます.公益社団法人日本獣医師会の会員並びに構成獣医師の皆さまにおかれましては,ご健勝にて新年を迎えられたことと心からお慶び申し上げます.
旧年中は,本会の事業活動にご理解とご支援を賜り厚く御礼申し上げます.今日,我が国を含め世界各国で最優先課題として社会から求められていることは,新しい国家ビジョンとミッションの確立であり,それに基づくグランドデザインの構築と施策の具現化,さらには国家間や組織間での相互信頼による新しい連携の強化であります.これらは,まさに日本獣医師会においても該当する課題であり,本年はこれまで以上に皆様方と情報の共有化に努め,一体となって積極的な提言とその実践である「攻めの姿勢」と,施策の検証とそれに基づく改善・改革を進める「守りの姿勢」を明確にし,本会の円滑な運営に努めてまいります.会員並びに構成獣医師の皆様方の一層のご支援をよろしくお願いします.
国民の生命を守り,文化的な生活を追求し,人と動物が共存する豊かで成熟した社会の構築を目的に,畜産振興と家畜保健衛生の指導,食品や環境等の公衆衛生の向上,並びに動物の医療推進と愛護や福祉を担うのが構成獣医師であり,その組織団体である獣医師会に対する社会の期待は近年一層高まっています.そうした中で,構成獣医師は,感染症に対する防疫体制の整備,獣医療体制の充実,動物福祉に関する管理と運営の推進,次世代を担う人材の育成強化を目指しています.特に獣医療法に基づいて国が定めた獣医療の質の確保とチーム獣医療提供体制の確立については,全力で取り組まなければなりません.さらに近年の動物愛護及び普及状況を踏まえて,マイクロチップの装着の義務化に向けた活動とその普及啓発が強く求められています.これらの課題に対してスピード感を持って対処する必要があります.
こうした中,日本獣医師会会長に就任して以降,自由民主党をはじめ,公明党,農林水産省,厚生労働省,環境省等の関係機関に対して獣医療に関する施策の整備充実に係る要請を行ってまいりました.近年,口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザ等の家畜法定伝染病が発生し,また,我が国では半世紀にわたり発生が制御されて来た致死性の人獣共通感染症である狂犬病の侵入リスクが高まり,国民が安全で安心できる日常生活を確保する上で,大きなリスクの脅威があります.また,犬や猫が広く一般家庭で飼育され,動物が人の介護や福祉及び学校教育分野で活用される等,動物の社会的役割が一層重要視され,人と動物の共生社会の構築が国家的課題であります.これらに対して獣医師が質の高い獣医療を提供し,社会の期待に応えていくことが強く求められています.そこで,獣医療提供体制の整備・充実が一層促進されるように要請をいたしました.要請事項の中で特に強く指摘したのは,1)緊急災害時における被災動物対策としてのマイクロチップの普及推進について,2)人と動物の共通感染症対策の整備・充実に係る獣医師と医師の連携推進について,3)女性獣医師の就業支援及びキャリアアップの推進についてであります.
第一の課題である緊急災害時の被災動物対策としてのマイクロチップの普及推進については,東日本大震災の被災動物救護活動において,動物の飼育者を確認する上でのマイクロチップの重要性が再確認されました.また,平成24 年に公布された動物の愛護及び管理に関する法律の一部改正において,動物の所有者責任の強化が重要であるとの観点に立ち,マイクロチップ装着の義務化に向けて必要な措置を講じることが明文化されました.また,平成25 年に環境省が策定した「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」においても,平常時に飼い主が行う対策の実例として,ペットが迷子にならないための対策として,マイクロチップ等による所有者の明示があり,緊急災害時の対策としてマイクロチップ装着の重要性が示唆されています.すなわち,家庭動物の個体識別の合理的方式としてのマイクロチップの普及推進の理解を図るものです.
第二の課題である人と動物の共通感染症対策の整備・充実に係る獣医師と医師の連携推進については,共通感染症に対する国民の関心が高まるとともに,これらの共通感染症の侵入と蔓延防止に係る社会的リスクを的確に対処するため,体制整備の重要性が指摘されています.共通感染症の予防において,人と動物の生活環境やフードチェーンの川上に位置する動物の医療を受け持つ獣医師と,その川下に位置する人の医療を受け持つ医師が緊密な連携を保つことが重要であります.日本獣医師会は日本医師会と連携し,共通感染症の危機管理や対策の整備・充実に関して情報交換し,国内や地域の防疫体制の整備を図るために,両組織が効果的に連携するための体制の整備を図るものです.
第三の課題は,女性獣医師の就業支援及びキャリアアップの推進についてであります.獣医学系大学において女性獣医師の増加が顕著となり,近年は各年度の新規獣医師の半数を女性が占めています.女性獣医師が継続的に就業し,しかも責任ある立場で潜在力を発揮し,幅広い職域で活躍できるようにならなければなりません.近年,公務員獣医師職や産業動物獣医師職が不足するといわれる中,獣医師の職域や地域偏在を解決する上からも,女性獣医師が継続的に就業できる職場環境の整備を支援し,就業率の向上とキャリアアップを図ることは,獣医療提供体制の整備を促進する上で必要であります.そこで,速やかに新規女性獣医師の就業を支援する職場環境の改善・整備を図るものです.
さらに,日本獣医師会では,課題の重要性に鑑み,会長の下に狂犬病予防体制整備特別委員会,女性獣医師支援特別委員会,日本医師会との連携推進準備委員会を設置しました.
狂犬病予防体制整備特別委員会では,今日の飼育犬を取り巻く社会環境の変化や飼育者ニーズの多様化の中,狂犬病予防接種率の低下,登録頭数と飼育頭数の乖離,狂犬病予防注射済票による注射頭数把握の実効性低下などの狂犬病事業低迷の状況を踏まえ,狂犬病予防事業の実効性の確保と充実・強化を図るために,科学的根拠に基づいて検討を始めました.委員には地方獣医師会,本会の職域部会,学識経験者の他に,厚生労働省,農林水産省,環境省の担当者が参画しております.狂犬病は我が国において半世紀にわたり発生していませんが,平成18年にフィリピンからの帰国者2名が本病を発症し,死亡した事例がありました.さらに我が国と同様に本病が未発生であった台湾において,平成25年11月11日現在,野生動物であるイタチアナグマ215頭やジャコウネズミ1頭の他に犬1頭で本症の発生が見られ,大きな社会問題になっています.日本獣医師会では大きな社会的リスクを有する狂犬病の完全制御に向けて活動を強化してまいります.
女性獣医師支援特別委員会では,前述しましたように新規獣医師の半数を占める女性獣医師の就業を支援するため,キャリアアップと就業の継続に係る方策を検討し,獣医師の地域や職域の偏在を解決する一助として女性獣医師の活動を支援し,就業者と雇用者双方への情報提供や未就業者に対する就業や現職復帰への学習機会の提供,キャリアアップを図るための体系的な学習機会の提供,職場環境の改善対策等の推進を目指してまいります.
日本医師会との連携推進準備委員会の設置に関して,獣医療と医療を専門職域とする獣医師と医師は,動物と人の健康増進を通して国民の生活向上に貢献する使命を担っています.一方,国民の間で高病原性鳥インフルエンザを始め,多くの人獣共通感染症の流行制御,また食品の安全性確保に関する意識が高まる中,獣医師と医師が緊密に連携し,安全で安心な社会を構築することが求められています.平成24年10月に世界医師会(WMA)と世界獣医学協会(WVA)は,「One World, One Health」の理念に基づき,協力関係を構築する旨の覚書を締結しました.このような状況から,本会は日本医師会と連携を深めるために特別委員会を設置し,その方策について検討を行う必要があります.具体的な検討項目は,人と動物の共通感染症の流行制御に関する情報の共有化,獣医師会と医師会間での課題別活動や体系的活動の推進,全国レベル並びに地域レベルでの獣医師と医師の交流を図るための方策等についてであります.なお,平成25年11月20日に明治記念館で開催された日本獣医師会会長を激励する会「獣医療提供体制の整備充実を目指すキックオフ宣言」に先立ち,公益社団法人日本獣医師会と同日本医師会の学術協力の推進に関する協定を締結しました.歴史上第一歩となる医師会との学術協定の成果は獣医師会のみならず,社会から大いに期待されています.
最後になりますが,改めて日本獣医師会の会員並びに構成獣医師の皆様方の本年のご活躍とご発展,ご多幸をお祈りし,新年のご挨拶とさせていただきます.