牛海綿状脳症(BSE)サポーティング・ドキュメント

 サーベイランスを目的として母集団の一部を検査することは,OIE国際家畜衛生規約第1.4.5章と整合性がとれている.検査のために母集団の一部を抽出する方法を妥当性の高い順に挙げると,
(1)BSEの症状と同様の臨床症状を呈している国産牛の検査:母集団から臨床症状を呈する牛を選び出すことが,仮にBSEが存在する場合に,BSE摘発能力を高める最良のアプローチである.このアプローチでは,神経症状を呈する牛および伝染性でも外傷性でもない瀕死の牛が脳検査の対象となる.BSEは,パソグノモニック(pathognomonic)な臨床症状を起こさないことから,牛が飼養されているどの国でも,個々の牛はBSEの症状と共通の症状を呈するのが観察される.これらの牛の脳の検査により脳リステリア症,狂犬病,脳腫瘍等の他の疾病が確認されることもある.サーベイランスでは,行動異常および神経症状を少なくとも15日間呈し,治療に反応しない36カ月齢超の牛を重点的に対象として実施されるべきである.表6は36カ月齢超の国産牛の飼養頭数に対する,神経組織学的な方法で調査すべき臨床症状を呈した牛の最低頭数を示している.このサンプリングは無作為ではないので,表に示した頭数は厳密な統計的な推定ではなく,主観的な解釈によるものである(表6).
(2)高リスク牛からなる小集団の検査:このアプローチも,仮にBSEが存在する場合の同病の摘発能力を増加させる.高リスク牛とは,BSE発生国からの輸入牛,BSE発生国から輸入された汚染飼料を摂取した可能性のある牛,他のTSEの病原体により汚染された飼料を摂取した可能性のある牛である.サーベイランスは,これらの牛のうち36カ月齢以上の牛を対象として実施すべきである.
  サーベイランスの効果は,これらの2つのアプローチを組み合わせることにより,さらに向上する.

表6 有効なサーベイランスのために1年間に神経組織学的検査をすべきBSE性の臨床症状を呈した最低頭数

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