牛海綿状脳症(BSE)サポーティング・ドキュメント

6.結   論
  以上から,次の結論が導かれる.
BSEの感染のリスクは,感染畜の特定の組織への暴露またはこれらの組織から生産された製品ヘの暴露により生じる.
マウスの感受性は牛の約1,000分の1であるが,BSEの牛の感染力を確認するための実験用動物として使用可能である.
BSEの症状を呈し,死後検査によりBSEが確認された自然感染牛の感染性は,感受性マウスでのバイオアッセイにより,脳,頸部および末端脊髄ならびに網膜でのみ認められている.
汚染組織の大量経口投与により実験的に感染させた牛の場合は,感染性は潜伏期間の初期および後期において子牛の回腸遠位部から検出され,潜伏期間の後期にはCNS,後根神経節,三叉神経神経節から検出された.また,発症期には骨髄にも感染性がある可能性があるが,現在までの実験では確定的ではない.
逆に,発症期も含めどの時期にも感染性は検出されない組織が多数ある.たとえば,骨格筋,牛乳,原皮,皮革,精液,IETSの基準に従って洗浄された受精卵.
組織の感染性に関する現在までの調査は,母子感染はBSEの伝播において重要な役割を果たしておらず,したがって,汚染された肉骨粉を給与されていない牛に本病が潜伏している可能性は低いことを支持している.

 クロイツフェルト・ヤコブ病
  クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)は,年間200万人に1人の割合で世界中で発生している.しかしながら,年間発生率が通常の30倍以上に及ぶような地理的多発地もまれにみられる.このような多発地は,イスラエルおよびスロバキアで認められている.これらの発生は,PrP遺伝子のコドン200での突然変異の存在に明らかに関係している.CJDの全ケースの約15%が家族性であり,これらのケースの一部はPrP遺伝子の他の突然変異に関係している.CJDの大部分のケース(85%以上)が散発型である.これらのケースのほんの一部が医原性であり,CJDに汚染された手術機器の誤った使用,角膜移植,硬膜移植(いずれも潜伏期間が比較的短い),人の死体,脳下垂体から抽出した成長ホルモンまたはゴナドトロピン(いずれも潜伏期間が9〜30カ月齢と比較的長く,小脳に病巣がみられる)が原因である.フランスおよび英国を含む多くの国での疫学的調査から,めん羊はCJDのレゼルボアでないことがわかっており,従来型(散発型,古典型)のCJDの原因が動物に由来するとの証拠はまったくない.1993年におけるCJDの発生率は,フランス,ドイツ,イタリア,オランダおよび英国できわめて類似しており,これらの国におけるBSEの発生率の違いとは対照的で,1993年のCJDの発生率はBSEの出現によっても変化しなかったことを示している.BSEが存在する国,地域または群の牛組織が医薬品の原料として使われたことによる仮説的なリスクは,OIE国際家畜衛生規約に定められたガイドラインを守ることにより排除される.

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