牛海綿状脳症(BSE)サポーティング・ドキュメント

 (5)牛組織由来のタロー
  タローについては,肉骨粉中のスクレイピーの病原体を不活化するのには不十分な処理で得られた濾過前のものでも感染性は検出されなかった.したがって,枝肉から得られる食用のグレード2のタローは,飼料用としても食用としても,使用前に濾過すれば安全であると考えられる.
  タローの安全性を確保するためには,安全な原材料の確保が最も望ましい方法である.安全な原材料の確保は,本病の地理的分布および病原体の組織的分布に基づき行うことができる.化製に関する限り,TSEの感染物質をスパイクした脳を使った実験から,タローは濾過前でも濾過後でも感染性は検出されないことが示されている.どのようなリスクが残存しているとしても,蛋白質の含有量または感染力を排除したり,低下させたりする処理を行うことにより,製品の安全性はさらに高まるだろう.タローの用途についても,リスク評価に当たっては考慮すべきである.頭蓋骨および椎骨以外の脱脂骨を承認された方法で化製処理して使うべきである.
  タローは医薬品の原料としては使われないが,タロー誘導体は,高温高圧の承認された方法(たとえば,TSEの汚染のリスクが少ない安全な原材料)による加水分解により生産されたものまたはこれと同等の効果を有する方法で生産されたものであれば,どのような目的の使用であっても安全と考えることができる.
5.母子感染
  前述のとおり,生きた牛を使った自然および実験例から,母牛から子牛への感染はBSEの発生において大きな要因ではないと考えられる.このことは,スクレイピーと大きく異なる特徴であるが,TMEおよびクールー(いずれも“最終宿主”疾病)の自然感染の場合と同じである.上記(3)のデータは,BSEの感染性の組織別分布はTMS(TSEでは母子感染は生じない)と似ており,感染性は発症畜の中枢神経系(CNS)に他の組織の10万倍の濃度で集中していることを示している(付録2a).自然感染のスクレイピーのめん羊では細網内皮系は高い感染性を有し,感染めん羊の胎盤はめん山羊への実験的な経口的暴露により感染を伝播することができ,現在のところ,受精卵移植を介してのスクレイピーの伝播の可能性は排除できない.BSEの場合,雄および雌の生殖器組織,胎盤並びに受精卵(IETSの基準に基づき採取した受精卵)を感受性マウスにバイオアッセイした結果,感染性は検出されていない.さらに,子宮の洗浄液も同様の方法で検査した結果,感染性は検出されていない.これらの調査では牛からマウスへの種間バリアが認められている.しかしながら,BSEが確認された牛の胎盤により経口経鼻的に暴露させた牛は7年後でも発症せず,現在牛はと殺され脳の検査が行われている.BSEの確認された多数の牛から採取された受精卵は,ニュージーランドから輸入された347頭の受卵牛に移植され隔離観察中である.今までのところ,受卵牛および子牛にはBSEは観察されていない.最も高齢の子牛は,現在6歳以上である.この実験は2001年まで続けられる.

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