牛海綿状脳症(BSE)サポーティング・ドキュメント
(1)めん山羊でのスクレイピーの発症
8カ月齢までのめん羊ではいずれの組織からも病原体は検出されなかった.10〜14カ月齢のめん羊では,細網内皮系の組織(パイエル氏斑)を含む腸管,消化管その他に付随するリンパ節で弱い感染性が認められた.これらの組織の感染性は,月例が進むにつれ増加し,臨床症状が出現する直前に脊髄,間脳その他の脳に感染力が検出された.脊髄を含む中枢神経系の感染力は,臨床症状の出現までに,細網内皮系の感染力を上回る.
(2)めん山羊における感染性のない組織
その他の組織における感染性を検出するための試みがなされた結果,非経口的に感染させためん羊の組織で感染性を有しない組織は,次のとおりである.―骨格筋,心臓,腎臓,初乳および牛乳,乳腺,子宮,卵巣,精巣,血塊,唾液および唾液腺,皮膚(めん山羊およびマウスへのバイオアッセイ),精液.
(3)BSE感染牛における病原体の分布
BSE発症牛からの各種の組織を用いたマウスの感染実験が行われてきた.現在までに,BSEは脳,頸部および尾部脊髄ならびに網膜の給与または注射により伝播することが確認されている.実験的に牛乳,乳腺,胎盤,リンパ節または脾臓を給与したマウスは通常の寿命においてBSEの感染は生じなかった.さらに,表5に掲げた組織に非経口的に暴露されたマウスの通常の寿命においてはBSEに感染しなかった.BSEの牛から生産された牛乳を接種または給与したマウスでの感染性は認められなかった.これらの調査では牛からマウスへは種間バリアがある.ところで,ほとんどの子牛が初乳を摂取し,ほとんどの肉用子牛が生後6カ月間は母牛からの牛乳を摂取するにもかかわらず,BSEの伝播において母子感染を示す疫学的証拠はない(仮に,母子感染があるとすれば,牛乳からの感染が観察されていもいい)ので,牛乳は感染力がないと結論づけることができる.BSEにかかった繁殖用肉牛からしばらく牛乳を摂取した子牛を用いた現在実施中の調査のデータを分析した結果,子牛にはBSEの発生はみられず,牛乳も濃厚な接触も危険因子でないことが示唆される.
表5 BSE発症牛の組織のうちマウスへの非経口的接種により感染性が検出されなかった組織
異なる牛とその他の動物からの組織を使った調査が現在実施されている.
Dr.H.FraserおよびDr.D.M.Taylerのデータによる. |