牛海綿状脳症(BSE)サポーティング・ドキュメント

4.病原体の組織別分布
  上記1.〜3.で述べた点はいずれも,同種の動物,異種の動物および人に対する汚染飼料への暴露によるリスクに関し当てはまる.最も効率的な感染ルートで実験的に感染させ,感染性が検出されなかった組織に経口的に暴露させても感染の危険はほとんどまたはまったくないであろう.実験的または自然にTSEの病原体で感染した動物の各種の組織の感染性に関しては多数の文献がある.一般的なパターンは類似しているが,各組織の感染性は疾病により異なる.めん山羊のスクレイピーの調査により得られたデータは,牛の各組織の潜在的なリスクを予測するのに特に有用である.自然感染のスクレイピーの場合にみられるパターンを要約すると,次のとおりである(付録2aおよび2b).

付録2a スクレイピーに自然感染し発症中のめん羊3頭(サフォーク種,34〜57ヵ月齢)および山羊3頭(38〜49ヵ月齢)からの組織の感染力価(マウスのバイオアッセイによる)とBSE牛からの組織の感染力価の比較データの入手源:めん羊のスクレイピーはHadlowら(1982),山羊のスクレイピーはHadlowら(1980),BSEはFraserら(1992),Fraser and Foster.
組織の分類は,EU優先医薬品委員会(CPMP)による(EC.1991年).
a) 感染力価は,組織1gまたは1ml当たりのlog10mouse i.c.LD50の算術平均値で示した(+Ve=≧2.0).
注意:カテゴリーIIおよびIIIのいずれかの牛組織,ならびにカテゴリーIVのいずれの組織からも感染性は検出されなかった.表に掲げた数値はマウスでのバイオアッセイの検出限界に基づく最大値である(脳内摂取量30μl当たりで計算).

付録2b 発症前のスクレイピー感染めん羊と発症中のスクレイピー感染めん羊からのカテゴリー I および II の組織の感染力価の比較

* 感染力価の値はすべて組織1gまたは1mlあたりのlog10 i.c.LD50で示した.
a) 8ヵ月齢以下の子羊の組織はいずれも感染性は検出されなかった.表に示した力価はマウスでのバイオアッセイの検出限界に基づく最大値である.
b) 感染性は,スクレイピーに暴露しためん羊15頭のうち8頭のみから検出された.
c) 感染性は,スクレイピーに暴露しためん羊3頭のうち1頭のみから検出された.

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