牛海綿状脳症(BSE)サポーティング・ドキュメント

IV 伝播様式

  BSEとスクレイピーと同類の自然に発生する疾病を付録1の表に示した.これらの疾病の定義に当たっては実験的な感染性が重要な要因となる.感染が生じるメカニズムは,BSEとスクレイピーとで異なるが,動物および人への感染のリスクに関する結論は,関連する要因の分析により導くことができる.
1.伝播ルート
  BSE,スクレイピー,TME,クールーおよびCJDの感染に経口ルートがあることが実験的に示されており(クールーとCJDの場合にはサルに継代した脳を用いて),経口ルートは,CJDを除きこれらの疾病の自然感染において大きな役割を果たしている.しかしながら,経口的投与は,非経口的な暴露に比べ,感染ルートとしては非効率であることが実験により示されている.マウスにスクレイピーを起こすのに,経口的な投与の場合は脳内接種に比べ約10万倍の量が必要である.BSEの場合には,経口的ルートでマウスで発症させるのに必要な汚染脳の量は脳内接種の場合の20万倍と推定されているが,人へのBSEのリスクの推定は,これより高い感染効率を前提として行われる.
2.動物種間バリア
  めん山羊のスクレイピーと人の海綿状脳症との間には病原的な関連性は認められていない.世界におけるCJD(付録1)の発生は,めん羊の分布,スクレイピーの分布およびめん羊製品の食品としての利用との関連性はない.CJDの患者がめん羊またはめん羊製品へ職業的にまたはその他の理由で暴露されていたとの事実も示されていない.また,CJDの患者と牛肉または牛肉製品の摂取との統計的な関連も示されていない.
  変異型CJDは,1996年にはじめて報告された.この疾病の病原体はR III マウスにおいて同株のマウスでのBSEと臨床症状,潜伏期間および病巣に関し,よく似ており,同じ病原体が両疾病の病原体であることが推定される.分子レベルでのタイピングもこのような推定と整合性がとれている.しかしながら,変異型CJDの感染源が牛であるのか他の動物であるのかは判明していない.

付録1 自然発生が報告された伝染性海綿状脳症(TSE)

*:感染実験は行われていない.
**:輸出前にグレート・ブリテンですでに暴露されていたと推定される.

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