牛海綿状脳症(BSE)サポーティング・ドキュメント

3.結   論
  以上より,次のような重要な結論が導かれる.
(1) 汚染飼料が本病のおもな伝播要因であるとする強力な証拠があること.
(2) 本病のまん延において他の暴露の方法は重要でないとする証拠があること,現在までに得られた証拠から,
汚染飼料に暴露されなかった牛が発病することはまずあり得ないこと.
牛が発症するリスクは,同条件下の群がどのような飼料に暴露されるかに左右され,その牛が属する群の過去または現在のBSEの状況に左右されないこと.
BSEの患畜の子牛は,未発症牛の子牛より発症する確立がわずかに(1%未満)高い可能性があること.
仮に母子感染があるとすれば,いかなるルートで起ころうとも,その発生率は低く,BSEの発生に有意な影響を及ぼさないこと.
が示唆されていること.
(3) したがって,たとえ同じ農場で1頭以上の発生があっても,BSEの発生は1患畜が1件の発生として登録されるべきであること.
(4) 本病の潜伏期間は長いことから,臨床的な発生が多発する前に病原体が飼料中に還元される可能性があり,感染源が中断されても,その後発生が数年間続くことが予想されること.
(5) 仮に汚染飼料の給与禁止その他の措置が確実に実施されない場合には,暴露が低レベルで持続し,禁止措置実施後に生まれた牛で発生が生じる.TSEの病原体に汚染された肉骨粉による反芻動物の飼料の再汚染がこのような発生のおもな原因である.

 II 地理的分布

 国内産の牛でBSEの発生が認められた国における発生件数を表1および表2に示した.

表1 英国におけるBSEの発生頭数
* BSEが法定伝染病に指定される以前の発生頭数は,グレート・ブリテンを除き報告された年で計上.グレート・ブリテンの場合は発生した年で計上.
** 暫定値:1998年1月31日末でのデータ(移動制限の発令月で計上).

表2 英国以外の国におけるBSEの発生頭数*
* 確認された年で計上.
a) ベルギーのデータは1997年10月31日現在,フランスのデータは1998年2月9日現在,ルクセンブルクのデータは1997年12月2日現在,オランダにおける最終発生は1997年4月8日,ポルトガルにおける最終発生は1998年1月13日,スイスのデータは1998年2月13日現在.
b) 輸入牛における発生も含まれる.すなわち,1989年5頭,1990年1頭,1991年2頭,1992年2頭,1994年1頭,1995年1頭.
c) 輸入牛での発生.
d) アイルランドからOIEへ報告のあったケースは,1989年に5歳齢の輸入雄牛に認められたケースを除きいずれも雄牛で認められている.すなわち若齢雄牛,虚勢牛での発生は1頭も認められていない.
次の国・領域では輸入牛でのみBSEの発生が報告されている(カッコ内は摘発された年月):カナダ(1993年11月),デンマーク1頭(1992年7月),フォークランド諸島1頭(1989年),ドイツ6頭(1992年1頭,1994年3頭,1997年2頭),イタリア2頭(1994年10月),オマーン2頭(1989年確認).

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