牛海綿状脳症(BSE)サポーティング・ドキュメント

 疫学的調査の結果,BSEの発症牛の大半は,若齢時にBSEの病原体へ暴露されたことが判明した.また,発症牛はおもに酪農家の牛であった.1997年12月19日現在,英国(グレート・ブリテン)における酪農家の60.33%および素牛生産農家の15.99%でBSEの発生が1頭以上にみられ,素牛生産農場の発症例の80%以上が酪農家で生産され,感染していたと推定される雌牛に認められた.防疫措置がとられなかった場合の発生のピークは4〜5歳齢である.典型的な潜伏期間は60カ月であるが,牛の生涯にわたる可能性もある.1994年12月までに記録された最も若齢での発症は,20カ月齢での発症1例である.発生頭数は1986年から1992年まで増加したが,その後防疫措置が功を奏し減少した.1989年にみられた発生の急増は,感染牛を原料として生産された肉骨粉を通じて病原体が牛に大量に還元されたことが原因であるとの説明が可能である.しかしながら,英国(グレート・ブリテン)全体でのBSEの発生率は,飼料中の病原体への有効な暴露は一般的に少なかったことから,ピーク時でも成牛1,000頭当たり発症10頭と,低水準であった.
  BSEが飼料を介した共通感染源型の流行であるとの仮説を裏付ける疫学的調査がある.英国での反芻動物の飼料の給与禁止の結果,BSEの発生が減少した.減少はまず若齢牛でみられ,次第に年齢の進んだ牛でみられ,8歳齢(7歳齢以上8歳齢まで)まで波及した.飼料の給与禁止の実施以降もしばらく汚染飼料が供給され,牛に給与されたことおよび反芻動物の蛋白質が誤って牛用の飼料に含まれていたことから,反芻動物由来の蛋白質を含む飼料の給与禁止以降に生まれた牛での発症例(BAB)が34,500頭に認められている.これらの発症牛の大部分は1988/1989年の分娩シーズンに生まれた牛であり(英国の乳牛の77%は7月から12月に生産される),その後の分娩シーズンに生まれた牛では大幅に減少している.1997年12月1日現在,BABは34,537頭に達しているが,1994年3月以降に生まれた牛での発生は1頭も報告されていない.1990年に生まれた牛5,246頭,1991に生まれた牛3,611頭,1992年に生まれた牛1,289頭,1993年に生まれた牛174頭,1994年に生まれた牛2頭に発生が報告されている.BABの原因は,おもに,反芻動物用の飼料への汚染された肉骨粉の誤った混入による.
  国内で生産された牛での発生が報告されている英国以外の国およびその他の国では,飼料の給与禁止措置は1990年以降実施された.EUでは1994年6月に哺乳動物由来の蛋白質の反芻動物への給与が禁止された.反芻動物だけではなく哺乳動物全体が対象となったのは,肉骨粉の大部分は反芻動物および非反芻動物の両方から生産されるからである.しかしながら,反芻動物由来の蛋白質を含んでいないことを加盟国が証明できれば,従来どおり豚由来の肉骨粉の使用を認める規定がある.このような肉骨粉の生産は,反芻動物と非反芻動物の副産物が異なる化製場で別々に処理されれば可能となる.

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