【参考】

牛海綿状脳症(BSE)サポーティング・ドキュメント

―1998年1月改訂版―

 1990年9月,牛海綿状脳症(BSE)の影響を検討するため開催されたアドホック・グループ会合により報告書が作成され,1991年第59回国際獣疫事務局(OIE)総会で採択された.
  その後,本資料はOIE国際家畜衛生規約(OIEコード)におけるBSEに関する章を起草するための参考資料とするため,1991年,新たな知見を盛り込みサポーティング・ドキュメントとして改訂され,1992年の第60回総会で採択された.
  その後,本ドキュメントは1994年12月,1996年5月に改訂され,今回の改訂に至っている.
  今回の改訂では,加盟国がどのようにしてBSEのサーベイランスおよびモニタリングをすべきか,特に,脳の検査をすべき牛の年間最低検査頭数を示している.

I 発 生 の 原 因

1.英国その他の国における発生状況
  BSEは1986年11月に英国で初めて確認された.しかし,その後の情報から,最初の発生は1985年4月にあったことがわかっている.初期の疫学的調査で広範囲にわたる共通感染源型の流行が示唆されたことから,各発生例に共通する多数の要因(治療薬,農薬または生物学的製剤の使用,輸入動物,精液または畜産物からの侵入,めん羊を混牧する農場での直接または間接的な伝播等)について危険因子としての可能性が検討された.これらの調査の結果およびスクレイピーとの類似性から,反芻動物由来の肉骨粉を介して伝染性海綿状脳症(TSE)の病原体への暴露が,最も考えられる本病発生の原因として特定された.肉骨粉の役割は,患畜・対照畜群調査の結果により支持された.英国(グレート・ブリテン)で1988年7月の反芻動物由来の蛋白質の反芻動物への給与の禁止の実施以降本病の発生が減少したことからも裏付けされた.BSEの病原体が一部の商業的な化製処理で死滅しないことが証明されたことも,肉骨粉を原因とする仮説を支持するものであった.病原体の由来に関しては2つの仮説が疫学的および実験室内の結果と整合性のある仮説として存在する.すなわち,スクレイピーの病原体への牛の暴露が増加したかまたは過去に確認されたことがないTSEの病原体への牛の暴露が増加したかのいずれかである.
  コンピュータ・シミュレーションによると,本病の臨床的な発生は,1981年か1982年に始まったことが推定される.発生の重要な要因は,本病の病原体への暴露の時期と同時期に英国における化製処理工程の変化(溶媒を使った脂肪の抽出の減少)と考えられる.この考え方は,本病の発生源がめん羊であろうと,牛であろうと,他の動物であろうと,TSEの病原体に汚染された組織が化製処理の対象となっていたのであれば,当てはまる.仮にめん羊が発生源であったとすれば,他の要因,特に,牛とめん羊の飼養頭数の関係(これにより,めん羊由来の肉骨粉への依存率が左右される.)およびスクレイピーの有病率も,危険因子であると考えられる.