参考:米国における1996年の狂犬病調査
スカンクの狂犬病症例報告が多少減少したのは,同種動物間流行のアライグマ狂犬病がある州からの狂犬病スカンクの報告が減少したためである.ノースカロライナ州,ヴァージニア州およびいくつかの東部州から増加が報告されているが,これはアライグマからスカンクへの狂犬病の溢出の結果であろう.また,アイオワ州,サウスダコタ州およびノースダコタ州からの報告の増加は,狂犬病ウイルスの地域的なスカンク変異株が主因であった.春の豪雨による洪水から生じた生息地以外でのスカンクとの遭遇件数の増加と,集団の循環変動的ピークの時期に生じたスカンク数の増加が,この地域の報告数が大幅に増加した要因かもしれないa).
げっ歯目,ウサギ目,およびその他の野生動物の狂犬病報告症例は全体的に減少しているが,これは主な地域的狂犬病感染源からの溢出が減少したことを反映しているようである.ハイイロギツネとコヨーテ用の狂犬病経口ワクチンの使用によって,テキサス州西部ではハイイロギツネ狂犬病変異株,テキサス州南部では犬/コヨーテ狂犬病変異株の伝播サイクルを妨げるための現行プログラムの一環として餌散布の追加が計画されている.問題の犬/コヨーテ変異株は,遅くとも1978年にはテキサス州とメキシコの国境に存在していたものであり,テキサス州南部での2人の死亡に関係がある.本来テキサス州にあったイヌ科動物の狂犬病ウイルス変異株に感染した動物を人間が移入させたことを示す証拠が,アラバマ州(1993年),フロリダ州(1994年)およびモンタナ州(1995年)で見つかっている.こうした発見に迅速に対応したことが,その発生と蔓延の防止につながったと思われる.テキサス州は狂犬病に感染している可能性のある動物を州外に移出する行為を禁止する法律を制定した.
1993年にアラスカ州のケッチカンでの研究において小型のホオヒゲコウモリ(Myotis lucifigus)から採取された脳組織をアラスカ州立研究所で検査したところ,狂犬病検査用の直接蛍光抗体染色法で陽性反応が出た.1996年,このコウモリの冷凍脳組織の試料がCDCに送られ,狂犬病との確認が行われるとともに,シルバーヘアーバット(L.
noctivagans)に関連する狂犬病ウイルス変異株が検出された.これはアラスカ州からの初めてのコウモリ狂犬病の症例報告である.この症例が発生年の調査合計に含まれていなかったのは,このコウモリが特別研究の中で発見されたもので,通常の受動的狂犬病監視活動の中でアラスカ州保健当局に提出されなかったからであるb).
a)ノースダコタ州ビスマーク郡にあるノースダコタ州保健局のHeer FAからの個人通信,1997年.
b)アラスカ州フェアバンクス郡にあるアラスカ州保健局のRitter DGからの個人通信,1997年. |