参考:米国における1996年の狂犬病調査
家畜における狂犬病
1996年の家畜の狂犬病報告症例は全体の8.0%を占める.1996年の報告症例574件は,1995年の同630件から8.9%減少している.1996年の猫,牛,および犬の狂犬病症例は1995年に比較してそれぞれ7.6%,3.7%,および24.0%減少している.猫は1996年も家畜中最多の狂犬病報告症例となっている.アイオワ州は他のどの州よりも多くの狂犬病家畜数を報告している(80件).
猫―1996年の猫の狂犬病報告症例266件は全報告症例の3.7%を占め,1995年の同288件から7.6%減少している.猫の狂犬病報告症例の大部分は,アライグマ狂犬病の同種動物間流行がみられる州からのものである.残りの症例報告は主に中部平原諸州からのものであり,症例の分布は狂犬病感染スカンク(テキサスではキツネも)の分布に沿っている.10件以上の猫狂犬病症例を報告した州は,フロリダ州(18件),ジョージア州(12件),アイオワ州(20件),メリーランド州(19件),ニューヨーク州(28件),ノースカロライナ州(29件),ペンシルヴェニア州(19件),サウスダコタ州(10件),テキサス州(10件)およびヴァージニア州(29件)の10州である.20州とコロンビア特別区からの狂犬病感染猫の報告はなかった.
犬―1996年の犬の狂犬病報告症例111件は全報告症例の1.6%を占め,1995年の同146件から24.0%減少している.1996年にはテキサス州の犬狂犬病報告症例数が最も多く(15件),うち6件はテキサス州南部でのコヨーテと犬の狂犬病の同種動物間流行に関連したものであった.テキサス州以外で5件を超える犬狂犬病症例を報告したのは,ジョージア州(8件),アイオワ州(12件),ノースカロライナ州(10件),サウスダコタ州(8件),テネシー州(6件)および自治領プエルトリコ(12件)だけである.24州とコロンビア特別区からの狂犬病感染犬の報告はなかった.
その他家畜―1996年の牛の狂犬病報告症例131件は全報告症例の1.8%を占め,1995年の同136件から3.7%減少している.牛の狂犬病症例の分布は,米国中部地域ではスカンク狂犬病症例分布,北東/中部大西洋沿岸地域ではアライグマ狂犬病症例分布,テキサス州ではコヨーテ,キツネおよびスカンクの狂犬病症例分布にほぼ近いものである.狂犬病感染牛の報告数が最も多かったのはアイオワ州,サウスダコタ州およびテキサス州である(それぞれ37件,16件および10件).その他に9件を超える牛狂犬病症例を報告した州はなかった.その他家畜の狂犬病報告症例は,ウマ科の動物(馬,ロバおよびラバ)が46件,めん羊が10件,山羊が6件,ケナガイタチ3件およびラマ1件であった.
季節的傾向
アライグマの狂犬病症例報告数は大まかにみて一峯性である.4月に春のピークに達してから6月まで徐々に減少し,その後10月にかけてやや増加をみせ,11月に再び減少となっている.スカンクの狂犬病症例報告数はほぼ二峯性であり,3月と4月に春のピークに達した後,夏に低水準となり,10月にはもう一つのピークを作っている.コウモリの狂犬病症例報告数は1月の低水準から徐々に増加して,8月にピークに達している.キツネの狂犬病症例報告数は低水準(通常,50件未満)で,5月〜7月にかけて水準が高くなる一峯性である.
猫の狂犬病症例報告数は一峯性で,8月に大きなピークに達している.犬の狂犬病症例報告数は3月と5月にピークに達した後(4月は減少),夏にかけて徐々に減少して8月に夏の低水準になってから,10月に秋のピークに達している.牛の狂犬病症例報告数はスカンクの春のピークを反映してか,2月〜5月にかけてピークをむかえ,その後減少して夏の低水準になり,そして12月に2番目のピークに達している. |