参考:米国における1996年の狂犬病調査

 コウモリ―1996年のコウモリの狂犬病報告症例741件は全報告症例の10.4%を占め,1995年の同787件から5.8%減少している.コウモリの狂犬病は引き続き米国全土に広く分布しており,陸続きの48州中46州から症例が報告されている.1996年には,カリフォルニア州が最多の報告数(127件)で,テキサス州(120件)がこれに続いている.アイダホ州,ミシシッピ州,オレゴン州,ユタ州およびワシントン州の5州からは,コウモリの狂犬病の報告はあったが陸生哺乳類(人間を含む)の症例報告はなかった.アラスカ州,ハワイ州,ロードアイランド州,ノースダコタ州,コロンビア特別区,および自治領プエルトリコからはコウモリの狂犬病の症例報告がなかった.
  キツネ―1996年のキツネ(V. vulpesが主)の狂犬病報告症例412件は全報告症例の5.8%を占め,1995年の同513件から19.7%減少している.テキサス州のキツネ狂犬病報告症例数が大幅に減少した(137件から60件.U. cinereoagenteusが主).この他にキツネ(V. vulpes)狂犬病報告症例が減少したのは,デラウェア州(10件から5件),マサチューセッツ州(7件から1件),ニューハンプシャー州(22件から12件),ニュージャージー州(16件から7件),ペンシルヴェニア州(30件から20件),ロードアイランド州(9件から2件),サウスカロライナ州(18件から14件),ヴァーモント州(31件から23件),およびウェストヴァージニア州(8件から5件)から成る東部諸州である.報告症例が増加したのは,フロリダ州(18件から31件),メイン州(7件から15件)およびヴァージニア州(21件から38件)の3州である.メイン州の一部とニューハンプシャー州,ニューヨーク州およびヴァーモント州の北部を含む中心地を例外として,東部沿岸諸州から報告されたキツネの狂犬病症例の大部分は,感染したアライグマからの溢出の結果と思われる.
  その他野生動物―自治領プエルトリコがマングース(Herpestes auropunctatus)の狂犬病症例を36件報告している.これは1995年の報告症例23件から56.5%の増加である.狂犬病が報告されたその他の野生動物には,コヨーテ(C. latrans,23件),ウッドチャック(Marmota monax,43件),アカオオヤマネコ(Felis rufus,23件),カワウソ(Lutra canadensis,5件),シカ(Odocoileus virginianus,3件),アメリカヤギュウ(Bison bison,2件),フィッシャーテン(Martes pennanti,2件),キタオポッサム(Didelphis virginiana,2件),ウサギ(Oryctolagus cuniculus,2件),リス(Sciurus sp,2件),ワピチ(Cervus elaphus,1件),ミンク(Mustela vison,1件)およびトガリネズミ(Blarina brevicauda,1件)が含まれている.アイオワ州から報告のあったウッドチャック1件を除いて,げっ歯目とウサギ目(ウッドチャックが主,43/47件)の狂犬病症例の報告はすべてアライグマ狂犬病の地域的流行が発生している諸州からのものである.コヨーテ狂犬病の同種動物間流行はテキサス州南部地域で持続している(1996年の同地域のその他野生動物25件中19件).

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