参考:米国における1996年の狂犬病調査

データ収集
  データ収集手続きは前回の報告で説明したものとほぼ同様であった.1996年1月1日から12月31日の期間に,全米50州,コロンビア特別区,および自治領プエルトリコが動物の狂犬病の症例数を疾病管理予防センターに報告した.郡別と動物別の症例数が毎月提出された.大部分の陸生哺乳類の報告には動物の俗称が用いられていた(通常は最低,属レベルであり,種レベルも多い)が,コウモリの報告については通常,分類上の目レベルにとどまっている.また,年末データをファクシミリ,電子メール,またはフロッピーディスクで報告してきたところもあった.公衆衛生研究所情報システム(the Public Health Laboratory Information System)(PHLIS)データ管理ソフトウエアを用いて,狂犬病検査用に提出される動物検査結果の記録と報告を行ってきた州の大部分は,PHLISまたは該当するPHLISカテゴリーが含まれている研究所情報追跡システム(the Laboratory Information Tracking System)(LITS)を継続使用している.PHLISまたはLITSのソフトウエアを要請したその他の州も同様である.すべてのデータは,年末集計の際,各州,コロンビア特別区,および自治領プエルトリコの保健当局者との電話によって確認されている.カナダについては同国食品検査局(Canadian Food Inspection Agency)の家畜衛生部門(Animal Health Division)のDr. Ronald Rogersから,メキシコについては,同国保健省(Ministry of Health)のDr. Juan GarzaおよびDr. Fernando Vargas-Pinoからデータを入手した.
  狂犬病感染の疑いがある動物の診断は,州や地方の保健当局に提出された脳組織の狂犬病ウイルス抗原の直接蛍光抗体(DFA)染色法によって行われた.一部の症例では確認のために,神経芽細胞培養組織内のウイルス分離法やネズミが用いられた.
野生動物における狂犬病
  1996年の野生動物の狂犬病報告症例は全体の92.0%近くを占める.1996年の報告症例6,550件は1995年の同7,247件から9.6%の減少である.アライグマが引き続き最多の狂犬病報告症例野生動物であり(1996年は全体の50.4%),スカンク(23.2%),コウモリ(10.4%),キツネ(5.8%),およびげっ歯目やウサギ目などのその他野生動物(2.1%)がこれに続いている.1995年との比較では,キツネ,アライグマ,スカンク,およびコウモリの報告症例がそれぞれ19.7%,9.3%,6.7%,5.8%減少している.
  アライグマ―1996年のアライグマ(P. lotor)狂犬病報告症例3,595件は全報告症例の50.4%を占め,1995年の同3,964件から9.3%減少している(1993年のピーク水準5,912件からでは3年連続減で累計−39.2%).この減少は大部分,アライグマの同種動物間流行の影響を受けていた東部諸州からの報告症例の減少によるものである.この流行の影響を受けていた州のうちアライグマの狂犬病症例数の1996年の増加を報告してきたのは,フロリダ州(7.6%,184件から198件),ジョージア州(4.4%,203件から212件),メイン州(32.5%,40件から53件),メリーランド州(56.7%,326件から511件),ノースカロライナ州(60.5%,362件から581件),およびヴァージニア州(41.3%,271件から383件)である.同種動物間流行の中心地である北東部/中部大西洋沿岸諸州(コネティカット州,デラウェア州,メイン州,メリーランド州,マサチューセッツ州,ニューハンプシャー州,ニュージャージー州,ニューヨーク州,ニューヨーク市,ペンシルヴェニア州,ロードアイランド州,ヴァーモント州,ヴァージニア州,コロンビア特別区,およびウェストヴァージニア州)からは1996年に2,455件(アライグマ全症例の68.3%)の報告があり,一方,アラバマ州,フロリダ州,ジョージア州,ノースカロライナ州,およびサウスカロライナ州から成る南東部諸州からの報告は1,109件(アライグマ全症例の30.8%)である.

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