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〈環境省 黒田大三郎大臣官房審議官〉 本日は,第65回日本獣医師会総会が盛大に開催されますことを心からお喜び申し上げます.また,山根会長を初め日本獣医師会の皆様方には,日頃から自然環境行政の推進に格別のご理解とご協力を賜りまして,この場をおかりしまして厚く御礼を申し上げます. 近年,地球温暖化であるとか生物多様性の保全を初めとして地球規模での環境問題,これに非常に大きな関心が高まっています.また,その一方で身近な動物との共生も重要な課題となっているところです.このような背景のもとに,ここ数年は生物,生き物や動物に関する法律の制定・改正が相次いでおるところです.先の国会におきましても,谷津義男先生が中心となって議員立法でまとめていただいた生物多様性基本法が新たに制定され,農水省と環境省共管のいわゆるペットフード法も成立したところです. 生物多様性基本法は,生物多様性の保全と持続可能な利用に関する最も上位に位置する法律として2010年に日本,愛知県名古屋市において開催される生物多様性条約の第10回の締約国会議に向けても,大きな弾みとなるものです.実際に私も先月,ドイツのボンで開催されました前回の第9回生物多様性条約締約国会議に出席してまいりましたが,多くの国から我が国の生物多様性基本法の制定に対して,高い評価の言葉をいただいたところです. もう一つのペットフード法は,昨年夏に農水省と共同で設置した有識者研究会,この研究会には獣医師の方々にも参加いただきましたが,この研究会の報告をもとに法案を提出したものでして,国会でのご理解を賜りまして,6月11日に成立の運びとなりました.先程もお話がありましたが,今後は具体的な基準・規格づくりに,農林水産省と共同して取組んでまいりたいと考えており,この際に獣医師の皆様方の知見やご意見をいただければ幸いであり,また,来春の施行後にも,特に情報の提供あるいは共有等の分野でご協力をいただきたいと思います. 加えて,動物愛護管理の分野では,これは北村顧問のご尽力のもとに改正されました動物愛護管理法に基づきまして,各種施策の推進に取組んでいるところです.特にマイクロチップの装着率を増加させるためには,獣医師の方々のご理解,ご協力がますます重要になってきていると認識しているところです. さらに,野生生物の分野でも各地域で獣医師の皆様のご助力を賜っております.先般,北海道,青森,秋田で回収されたオオハクチョウから,高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出されました.このような野生鳥獣における感染症対策に当たっても,高度で専門的,技術的な知見の提供を今後ともよろしくお願いしたいと思います.また,ツシマヤマネコ,ヤンバルクイナ等,絶滅の恐れのある野生動物の野生復帰を視野に入れた飼育下繁殖の取組み,一方で,アライグマ,マングース等,外来種の防除対策についても,地域の獣医師の皆様に多大なるご協力とご指導をいただいているところです. 今,お話ししましたとおり獣医師の皆様,とりわけ日本獣医師会と環境省の関係は,生き物や動物といった言葉,これをキーワードとして非常に幅広くなってきているところです.この関係を今後,ますます深めていただきたいと心から念願しております.環境省といたしましては皆様方のご意見も十分いただきながら,人間と動物が共生できる社会づくりに向けて,最大限の努力をしてまいりますので,なお一層のお力添えをよろしくお願い申し上げます. 最後でございますが,日本獣医師会のますますのご発展と皆様方のご健勝を祈念いたしまして,私の挨拶とさせていただきます.本日はおめでとうございます. |
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〈社団法人中央畜産会 菱沼 毅副会長〉 畜産団体の代表ということで,一言ご挨拶を申し上げたいと思います.本日は第65回目の総会ということで,関係団体の中でも歴史と由緒ある団体であることを改めて認識いたしました.また,私も獣医師の一員でありますが,冒頭斉唱された獣医師倫理綱領にありました,良識ある社会人としてのあり方,獣医学の知識の吸収と技術の研鑚,普及等を耳にし,自らを省みるとともに,本日の総会は素晴らしいと感銘を受けた次第です. まず,中央畜産会においては,山根会長に常務理事,藏内副会長には理事,さらに森先生にも理事に就任いただいておりますが,会場におられる地方獣医師会会長の方々にも地元の畜産会にご支援いただき,また,全国37府県において全国家畜畜産物衛生指導協会と地域の畜産会が一体となって取組んでいる衛生指導の他,我々の経営コンサルタント,経営支援事業等についても,地域の獣医師の方々からご協力をいただいており,このように中央と地方の双方においてご指導をいただいていることに対し厚くお礼を申し上げる次第です. なお,広島県獣医師会瀧口会長が会長を務めておられる,社団法人全国家畜畜産物衛生指導協会でも総会が開催され,中央でも畜産,衛生関係組織が一体となって,業務に取組む方向の旨決議いただいたということです.我々も多くの地域で獣医衛生関係の方々と一緒に業務に取組んでおりますので,明日開催される我々の総会で,全国衛指協との統合について議決したいと考えております.これにより衛生の領域,獣医師の領域と畜産指導が一体となり,昨今,地域において経営困難を極めている畜産農家あるいは地域畜産の振興に大きな力を発揮できるものと期待しています. また,過去に目を向けてみると,昭和49年後半からの第一次石油ショックの際の飼料の高騰が起きましたが,今回も石油,飼料の高騰による畜産の危機的状況を迎えています.これは森先生をはじめとする政治の力で,財政的措置も含めて,対策を練る必要があると考えています.その他,畜産物の自由化等の問題を含めると,過去30数年の間に6度にわたり,日本の畜産は危機的状況に見舞われていますが,その半数は衛生問題であり,これらは獣医師皆様方のお力により解決されましたが,近年の口蹄疫,BSE,鳥インフルエンザ等についても,皆様方のご努力,ご尽力により解決あるいは解決しつつあると思われます.しかし,今後も畜産を脅かす疾病がいつ何時発生するか,分からないような状況であることから,有事の際は獣医師の方々の力強いご支援をお願いする次第です. 今回の飼料高騰の問題については,政策価格等の期中改定の他,各種の経営対策が図られていますが,農家では最終的に低価格の飼料を入手するとともに,衛生面で,事故率の低下あるいは繁殖率の向上により,コストを低減して,経営安定に繋げる必要があります.農家が立ち行かなくなれば,獣医師も畜産業界も共倒れとなります.さらに農水省から,飼料対策として,まだ利用されていない高品質な資源を発見し,これを配合して,安全性を確認しつつ,実験的に農家に普及するよう依頼されていますが,安全性,栄養等の問題を含め,獣医師の皆様方にご指導をいただく必要があると考えています. 日本の畜産は,3兆円市場といわれていますが,末端まで含めると30兆円規模の市場であると考えられ,地域における雇用機会の提供等,互いに巨大な産業を担っていることから,様々な課題については,畜産関係者,獣医師が一体となって現場を指導し,我が国の畜産業の衰退防止に努力されるようお願い申し上げ,本日,総会が無事に終了することを祈念いたしまして,ご挨拶にかえさせていただきます.本日はおめでとうございます. |
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〈社団法人日本獣医学会 西原眞杉理事長〉 先ほど来,皆様方からもお話がありましたが,昨今,獣医師に対する社会的な要請は,獣医診療をはじめ,食品の安全性,人と動物の共通感染症等,多岐にわたり,重要性を増してきているように思われます.しかし,一方で山根会長からもご指摘がありましたが,例えば獣医学教育の充実等,様々な課題が各方面から指摘されていることも事実です.このような状況に対応していくためには,獣医師に関わる多くの関係者が協力し,情報を共有しながら,解決に当たっていくことが非常に重要であると思われます. このような観点から近年,各地で獣医師会の地区学会と獣医学会の秋の学術集会が連携して開催されています.また,春の学術集会につきましても,山根会長,佐々木前獣医学会理事長ら関係者のご尽力で,2006年3月,つくばで初の連携大会が秋篠宮殿下のご臨席を賜りまして,非常に盛会裏のうちに開催されました.しかし,春の学術集会は開催時期,あるいは開催場所等の問題で毎年開催することは非常に困難な面もあります. そこで,昨年,獣医師会の年次大会での獣医学会企画によるシンポジウム等の開催について両会で合意がなされ,これを受けて,本年2月,高松での獣医師会年次大会では,獣医学会の初の企画として,動物の問題行動の診断と治療に関するシンポジウムを合同開催いたしました.これには多くの獣医師会の会員の皆様方にご出席いただき,大変感謝しております. 来年1月の岩手県での年次大会においても,現在,様々な企画が予定されていますが,獣医学会では,BSEに関するシンポジウム,あるいは獣医界の懸案となっている獣医師の専門医制度に関するシンポジウム等の企画を検討しておりますので,多くの方々にご出席いただきたいと思います. 獣医師会と獣医学会が連携を強化することは,獣医師の活動,あるいはその活動の重要性が,社会に一層認知されていくことに繋がると思っています.今後とも両会が連携を継続し,また,その連携を深めていくことができるよう,皆様方のご理解とご協力をお願い申し上げる次第です. 今後とも日本獣医師会が重責を果たされて,ますますご発展されることを祈念いたしまして,ご挨拶とさせていただきます.本日はおめでとうございました. |