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4 旧ANMECの増改築の概要
 上記の新棟に加えて,さらに旧棟部分のANMEC各室の機能性を高めるための増改築工事が平成17年7月〜8月の2カ月間にわたって行われた.
 以下,主要施設について簡単に概説する.

  (1)画像診断関連室(1階)
 MRIとCTの機器更新のために両撮影室と共通の操作室の改修が行われた.導入機器は超電動型MRI1.5Tとなり脳神経系の診断精度が一段と向上されている(図6).CTは16列のマルチスライスの最新鋭装置が導入された.特に,16列のCTは短時間でより多くの情報が得られ,診断のための3D画像もリアルタイムで構築可能となっており,CT診断の利用性が拡大されている(図7).

  (2)入院施設部門(2階)
 入院頭数の増加にともなって狭隘であった犬の入院室が拡張された.特に大型犬用のパドック3室が新たに配置され,犬の入院室の収容能力は28〜41頭分が確保されている.また,猫の入院室は17〜28頭分が収容可能となっている.

  (3)供血犬,供血猫飼育室(2階)
 供血犬及び供血猫の飼育室が新設された.特に犬の輸血療法の機会が増加しており,院内には,現在,3頭の供血犬が飼育されている.供血犬は順次増加させる予定となっている.

  (4)内視鏡検査室及び小外科手術室(1階)
 従来の外科手術室(1)を内視鏡検査室とし,外科手術室(2)を小外科手術室として主に歯科などの手術を主体に利用されている.

  (5)集中治療室(2階)
 現在,ICUゲージを4台完備して,重症患者用に稼動している.

図6 MRI撮影室
図6 MRI撮影室
図7 CT撮影室
図7 CT撮影室

 

5 平成18年度の機器・設備の配備計画
 放射線治療室は増築工事により完成しているので,本年度は放射線治療装置である医用リニアセラレータ(ライナック)の導入が予定されている.これまでの放射線治療はオルソボルテージによって治療がなされているが,このライナックの導入によって,腫瘍性疾患への適応が一段と拡大されることが予想されている.導入後は外科手術の適応が困難な部位はもとより再発防止のための術中照射や術後照射などに適応させ,腫瘍に対する治療効果が一段と向上することが期待されている.
 また,院内LANを構築し,受付・会計事務のシステム化,薬剤及び器材管理,MRI・CT画像のデータ処理に運用する予定である.また,同時に電子カルテ化の準備を進める.
 さらに,スタッフへの呼び出し,連絡などは従来,院内放送や内線電話によって行ってきたが,本年度はPHSを導入して,院内連絡をより一層迅速に対応できるように改善する計画である.

6 主たるANMECの活動状況
 大学病院の使命は社会に貢献できる優秀な獣医師を育成するための機関であり,その使命は実践的な臨床教育の中心施設として寄与すること,また,地域医療センターとしての役割を果たすべき地域の臨床獣医師との連携によって,専門性の高い診療を通して患者へのサービスを図ること,また,卒後の臨床教育機関として機能することを目指して活動している.

 (1)診療活動
 ここ数年間の総診療件数の平均は1万件以上の実績があり,そのほとんどが2次診療として診療されており,紹介率は93%以上となっている.
 本院の診療科の特徴としては,総合診療科を有し初診時の診断に応じて専門診療科への的確な橋渡しを行い診療の適格化と円滑化を図っている.
 各診療科の得意とする診断法や治療法は,総合診療科では止血凝固異常,消化管の内視鏡診断,腹腔鏡診断について,神経科では脳疾患の画像と脳波検査の総合診断について,内科では先天性ならびに後天性心疾患,消化器疾患,眼科疾患の診断・治療や透析療法,腹腔鏡検査について外科・整形外科では動脈管開存症や門脈体循環シャントに対するコイル塞栓術,会陰ヘルニアに対する骨盤隔膜の再建術,膝蓋骨脱臼の再建術や十字靭帯断裂の再建術を含む各種関節疾患の外科的治療,椎間板ヘルニアに対する外科療法について,生殖器科ではホルモン測定による犬の交配適期診断,低受胎犬における人工授精,犬の子宮蓄膿症の内科療法について,それぞれ積極的な診療を行っている.

  (2)学生教育活動
 獣医学科では平成16年度の新入生からカリキュラムの大幅な改定を行っており,高学年ではANMECにおいての臨床教育を重点的に実施する計画となっている.その前段階として現カリキュラムにおいてもANMECの各診療科を巡回する実習がすでに開始されている.すなわち,動物医療を通じて学生に貴重な症例の数々を体験させて,罹患動物を体系的に診断・治療する能力を身につけさせ,また,医療現場を通じて獣医倫理や動物福祉などを学ばせることを目的に実施している.

 (3)有給研修医の教育活動
 平成11年度から他大学に先駆けてスタートした有給研修医制度(レジデント制度)は,平成17年度で丸7年を迎えており,これまでに述べ59名が研修し,その内研修修了者は10名となっている.平成18年度はさらに有給研修医の増員を図り,これまでの定員14名から16名になる予定である.この制度は高度医療・専門診療に対応する獣医師の養成を目的に,罹患動物を広く体系的に診察し,実際的な診療能力を身につけるための全科研修(前期2年)と,その後さらに専門分野の特定診療科(内科系,外科系)を中心に研修する後期研修(後期2年)の計4年間研修コースを設け社会に貢献できる優秀で専門性のある臨床獣医師の育成を行っている.
 前期研修では総合診療科,外科,内科,放射線科,皮膚科,歯科などの各診療科で研修し,それぞれの診療科における一般的診察法,基本的臨床検査法,基本的治療法,基本的手技,総合診断法を習得するとともに食の安全の確保のための獣医療知識や人と動物の共通感染症の発生に対する適切な指導ができるように研修させている.また,社会人としての一般教養も身につけること,臨床現場の臨場感の体験,よりよい獣医師となるための獣医倫理や法的知識,動物福祉,病院経営などについても研修目標となっている.
 後期研修では前期研修で習得した診療技術を基本として,さらなる高度な診療技術を習得するために内科系または外科系に専攻させ,専門診療の補助をしながら高度医療の向上を研鑽させる.
 有給研修医は輪番制に祝日を含めて診療をおこなうとともに,毎夕の症例検討会(ラウンド)に参加し,診療した症例のレビューを行っている.さらに症例研究,研究報告を定期的に実施させる.また,研修医は研修成果として学会に発表させるように指導している.
 日本獣医師会による獣医師育成研修等強化対策事業(獣医師育成研修事業)にも研修医は積極的に参加させており過去3年間の実績として10人が参加しており,獣医師としての育成事業への参加協力を行っている.

  (4)卒後教育活動
 卒後教育の一環として近隣の獣医師との交流を図る目的で毎月1回動物病院主催のANMECセミナーを開催している.このセミナーは,日本獣医師会の獣医師生涯研修プログラムとしての認定を受け,受講した獣医師には研修ポイントの1ポイントが取得できるようになっている.このように日本獣医師会が組織的に支援している獣医師生涯研修事業にも積極的に参加し卒後教育施設としての活動を行っている.
 ANMECセミナーは開設当時の平成7年からスタートし,すでに10年を経過している.平成18年3月のセミナー開催は通算して120回を迎えることになっている.今後も地域の先生方と連携し,多くの獣医師の先生方が参加されるようなセミナーを目指して,企画したいと考えている.

 

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