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3 新日本大学動物病院(ANMEC)の概要
 開設10年目を迎えた平成16年4月,ANMECの大幅な増築工事(新動物病院棟)と後述の「動物医科学研究センター」の建設が着工された.新病院の拡張面積は既存のANMECの延べ床面積1,600m2をはるかに上回る2,100m2となり,新ANMECの建物は,総延べ床面積3,700m2となった.建設期間は約1年を要し平成17年3月,新日本大学動物病院と医科学研究センターが計画通りに竣工した.
 さらにANMECは平成17年の7月,8月の2カ月にわたって旧ANMECの改築工事を行い,ようやく2年がかりの増改築工事を終え,ここに新動物病院(ANMEC)が完成した.
 増築工事の基本的なコンセプトは旧ANMECを有効利用して一体的に使用できるように計画された.動物病院の建物部分は従来と同じ2階建で,1階部分は中廊下によって院内が一周できるように回廊型の形態として診療業務の効率化を図っている.
 診察系ゾーンでは,診察室,臨床検査室,X線検査室,超音波検査室,処置室などが増設され,各室における人の動線を十分に考慮するなど効率よく稼動できるように配置された.外科系ゾーンでは,クリーンエリアを確保するために中廊下の2カ所にドアーを配置して他室とのゾーンを明確に区分している.
 感染系ゾーンでは専用の入口が設けられ,他のエリアと平面的に及び空調的に分離できるようにして院内感染防止に備えている.
 2階には遺伝子診断検査室,精密分析機器室,病理検査室,医療情報図書室,研修医室など教育・研究施設を重点に増設されている.
 以下,主要施設について簡単に概説する(図1).

  (1)受付・事務室・待合室・カウンセリング室(1階)
 病院の入り口は従来の入り口がメインエントランス(東側)となり(図2),新たに感染系の疑いのある患者用の入口は動物医科学センターの隣(西側)に設けられ(図3),これまで,感染系の患者の対応に苦慮した点が改善されている.
 メインエントランスの正面に受付,事務室を配し,待合室も十分に拡張された(図4).待合室に面した受付の隣が薬局となり,クライアントに直接薬をわたせる窓口を2つ設けた.待合室にはカウンセリング室を設け,クライアントとのプライバシーの保護にも配慮がなされた.

  (2)診察室・処置室(1階)
 診察室は各診療科が円滑に流れるように6室増設され合計12室となった.増設された6診察室にはCR撮影した映像が診察室内にフイルムビュアー装置に映され,クライアントに画像を示しながら説明できるように配置されている.6診察室の裏手には共通の処置室を設けて利便性が図られている.

  (3)臨床検査室,X線撮影室,超音波検査室(1階)
 臨床検査室は診察室の隣に配置された.X線撮影室は2室となり,同時に両室で撮影が可能となったことから,撮影の待ち時間が短縮され診療の効率化が図られている.また,診断には欠かせない超音波検査室を新たに設け,3台の超音波診断装置が同時に稼動可能となっている.

(4)手術関連室(1階)
 手術関連室は,手術動物控室,手術準備室,手洗い室,陽圧手術室(手術台1),陽圧手術室(手術台3)回復室,監視室,滅菌室,機器室で構成され,外科チームは1日クリーンエリア内ですべての作業が可能なように構成されている.手洗い室は5人が同時に手洗いできるようになっている.陽圧手術室1では,脳脊髄外科手術,整形外科手術などクリーン度の高い手術室となっている(図5).陽圧手術室2では3台の手術台が配置され,同時に3つの手術が可能である.また,各手術室にはモニター設備が整えられ,その映像は学生のいるカンファレンスルームの大型スクリーンに連動されている.映像は手術室全体と無影灯に配置されたCCDカメラあるいは術者頭部のCCDカメラによって術野が鮮明に映しだされ,術者のマイクからの解説によって手術方法が十分に理解できるようになっている.

  (5)放射線治療室(1階)
 腫瘍疾患の急増に伴い,放射線による治療の機会も増加していることから,ライナックの導入に備えて,現行の放射線防護の法律に合致したライナック専用の放射線治療室が設けられた.ライナックは平成18年度に導入する計画で進められている.

  (6)感染系関連室(1階)
 感染系の諸室は感染系専用の入り口,待合室,診察室,処置室,入院室,消毒室から構成されている.これによって,感染動物の診察が他のエリアと隔離することが可能となり院内感染の防止を図っている.

(7)病理解剖室・冷蔵室(1階)
 新たに病理解剖室が設けられ,これまで別棟で行われていた剖検の煩雑さが解消されている.

(8)教育関連室(1階,2階)
 1階にセミナールーム,2階に医局兼カンファレンスルーム(1)が増設され,既存のカンファレンスルーム(2)と併せて,各診療科で行われる症例検討会(ラウンド)やセミナーなどに幅広く利用されている.医局には院内のモニター設備が整えられ,ICUや入院室における動物の監視や薬局・器材室の監視ができるようになっている.
 また,医療情報図書室(2階)が設けられ,専門書が整備され幅広く教育・研究に利用されている.

  (9)研究関連室(2階)
 研究機関として疾病の診断法や治療法の開発などを行って,臨床面にフイードバックさせるための研究関連室として遺伝子診断検査室,病理検査室,標本観察室,精密分析機器室が新たに設置され,研究部門への充実が図られている.

(10)そ の 他
 医療相談室(2階)を設け,医療全般にわたる相談や,飼育相談あるいはペットロスの問題など,クライアントの悩みについて相談を行っている.
 また,建物の中心エリアはドッグランとして利用されている.その他,霊安室,リネン室,宿直室,応接室兼講師室,有給研修医室などが完備されている.
 建物全体は身体障害者などにも十分に配慮し,入り口,受付,薬局,トイレなどバリアフリーとしている.また,会計,薬局,待合室など動物を一時繋留するための装備を施しクライアントが一時的にリードを繋留できるように配慮している.

図1 新動物病院平面図
図1 新動物病院平面図 (※クリックすると拡大図を開きます)

図2 新動物病院メインエントランス
図2 新動物病院メインエントランス
図4 受付,薬局及び待合室
図4 受付,薬局及び待合室
     
図3 中央の階段ならびにスロープを昇ったエントランスが感染系専用入口,左側は動物医科学研究センター
図3 中央の階段ならびにスロープを昇ったエントランスが
感染系専用入口,左側は動物医科学研究センター
図5 陽圧手術室
図5 陽圧手術室

 

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