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4.施  用(総合)
Q4-1 ケタミンは,現在バイアル製剤しかありませんが,1バイアルのケタミンを複数の患者(患畜)に分けて施用すると違反になりますか.
 従来,病院及び診療所に対しては,保管・管理面,衛生面等の理由から,アンプル入り麻薬注射剤を分割して2人以上に施用することを避けるとともに,同一患者であっても手術等で連続して施用する場合以外は麻薬注射剤を分割して施用することは避け,残液は麻薬管理者に返納するよう保管・管理面,衛生面等の理由から,行政指導をしているところです.
 一方で,ケタミンについては,大容量のバイアル製剤が流通していますが,バイアル製剤については,錠剤又はアンプルと異なり,同一バイアルに入れられたケタミンを複数の患者(患畜)に施用することもあると考えます.
 よって,麻薬の保管・管理面,衛生面等に問題がなければ,複数の患者(患畜)に施用しても差し支えないこととしますが,その際には,実際に施用した数量を患者(個体)ごとに診療録及び麻薬帳簿に記載してください.

Q4-2 麻薬施用者である獣医師がケタミンを施用する際,動物の特徴に応じて,投与しやすいように剤形を粉末から錠剤にしたり,より強い効果を得るために,液剤を濃縮する行為は認められますか.
 麻薬小売業者が麻薬処方せんを所持する者に麻薬を譲渡するため,又は,麻薬診療施設の麻薬管理者(麻薬施用者)が施用するため,あらかじめ麻薬を調製する行為は調剤の予備行為であり,麻向法第22条には抵触しません.特定人畜の特定の疾病に対し,治療のため,必要性に応じた範囲内で,その処方の性質(特異性や保存性等)を考慮した上で,あらかじめ調製することは認められます.
 設問のように,客体に応じて,ケタミンの粉末を錠剤にする行為や,ケタミンの溶媒を揮発させ濃縮する行為等は,調製行為に当たるため,認められます.ただし,具体的な客体を想定せずに粉末を錠剤にする行為等や,濃縮する際,抽出等により不純物を除去することは精製(製造)に当たるため,認められません.

Q4-3 麻薬施用者の免許を持たない医師,実地修練生又は看護師が麻薬施用者の直接の監督又は指示の下にケタミンを注射するなど施用の補助をする場合,麻向法上,問題はありませんか.
 麻薬施用者の免許を有しない医師が自らの判断でケタミンの施用に関与する場合は,麻向法に違反する行為に該当しますが,麻薬施用者の直接の監督及び指示によるものであれば,麻向法上の問題はありません.

Q4-4 ケタミンの麻薬指定政令の施行後,麻薬診療施設等でない病院等においてケタミンを発見した場合,どのような処置を講じる必要がありますか.
 直ちに,都道府県薬務主管課又は保健所へ連絡し指示を受けてください.また,発見したケタミンについては,勝手に廃棄したり,卸売業者に返品しないように注意してください.

Q4-5 手術患者(患畜)の場合,1バイアルのケタミン注射液を1人の患者(患畜)に時間をおいて数回に分けて施用する場合がありますが,その際の診療録や帳簿の記載はどのようにすべきですか.
 診療録には施用の都度,施用したケタミンの品名及び数量を記載するとともに,帳簿には「1バイアル分の払出し」と記載してください.

5.施  用(獣医療)
Q5-1 獣医師である麻薬施用者が動物(患畜)にケタミンを施用した場合に,施用に関する記録はどうすればいいのですか.
 麻向法第41条の規定により,麻薬施用者は,動物(患畜)の種類,病名,主要症状,その所有者又は管理者の氏名又は名称及び住所並びに施用した麻薬の品名及び数量を診療簿に記載する必要があります.野生動物や保護動物等で所有者がいない場合や不明な場合には,病名,主要症状,施用した麻薬の品名,数量,施用年月日とともに,動物(患畜)の特徴,捕獲場所等を記載してください.
 なお,注射剤の数量については,アンプル(バイアル)単位ではなく,実際に施用した数量(ml等)を記載してください.

Q5-2 競走馬の獣医をしておりますが,競馬開催ごとに全国を移動しております.移動するたびに診療所からケタミンを持ち出していますが,麻薬施用者免許を取得し,麻薬指定政令施行後は往診の解釈でケタミンを持ち出すことでよろしいですか.
 貴見のとおりです.なお,往診(出張)先での取扱いについては,【Q3-5】を参照してください.

Q5-3 動物にケタミンを施用する際に注意すべきことはありますか.
 麻薬施用者は麻向法第27条第3項の規定により,疾病の治療以外の目的での麻薬の施用は禁止されています.
 なお,治療検査等に際して,患畜の不動化や疼痛緩和の目的でケタミンを施用することは疾病の治療目的での施用に当たります.

6.施用(使用)(野生動物・鳥獣捕獲等)
Q6-1 ケタミンを野生動物の調査,研究,鳥獣の捕獲に際し使用していますが,ケタミンの麻薬指定政令の施行後も使用することができますか.
 野外においてケタミンを使って動物を捕獲し,調査研究することについて,目的等を勘案して学術研究として必要であると認められれば都道府県知事から「麻薬研究者」の免許を取得することで,これまでどおりケタミンを使用することができます.
 また,ケタミンについては,周辺住民の生命及び財産の保護等を目的として,動物等を捕獲又は不動化するために使用されている実態があります.このような目的でケタミンを使用する者は,野生動物等の疾病の治療を目的とした施用ではないことから,麻薬施用者の免許を取得することはできません.ただし,都道府県知事あてに「研究計画書」を提出し,動物等を捕獲又は不動化する行為が学術研究の要素を持ち合わせると判断された場合には,麻薬研究者の免許を取得することができます.

Q6-2 大学で野生猿の研究をしている者です.研究のため猿の捕獲に研究員多数が山に入り,ケタミンを使いたいのですが,研究員全員が麻薬研究者になる必要がありますか.
 研究室において研究を指導している責任者が,都道府県知事から麻薬研究者の免許を取得すれば,他の研究員は麻薬研究者の指示の下,麻薬研究者の補助者としてケタミンを使用することができます.
 なお,ケタミンの保管,管理等の責任はすべて麻薬研究者にあります.

Q6-3 吹き矢や麻酔銃を使って動物にケタミンを注射することはできますか.その際に注意すべきことは何ですか.
 従来,野生動物等にケタミンを使う場合,従事者の安全を確保するため,吹き矢等が使われており,麻薬施用者及び麻薬研究者が,ケタミンを吹き矢等に充填して動物に施用(使用)することは差し支えありません.
 ケタミンを吹き矢等で施用(使用)する際は,発射したすべてのケタミンについて,施用(使用)したものとして麻薬帳簿にその旨を記載してください.命中しなかったにもかかわらず回収できたケタミンを持ち帰り廃棄する場合は,麻薬施用者にあっては施用残として,また,麻薬研究者にあっては麻薬含有の廃液として,他の職員の立会いの下に適切に廃棄してください.この場合,都道府県知事あてに「麻薬廃棄届」を提出する必要はありません.

Q6-4 奥山放獣の運動を展開している民間団体です.熊などの希少動物が民家近くに出没した際に,周辺住民の安全確保と動物愛護のためにも射殺することなくケタミンを使って眠らせて山奥に返したいのですが,この場合どのような手続が必要でしょうか.
 設問のような事例において,ケタミンを使用するためには,麻薬研究者の免許を取得する必要があります.
 当該団体の担当者(責任者)は,ケタミンを使用して動物等を捕獲又は不動化する行為について,その詳細を書面に記載して都道府県知事あてに麻薬研究者の免許を申請してください.都道府県知事が当該行為の内容等の審査を行い,当該行為が学術研究の要素を持ち合わせると判断でき,また,欠格事項にも該当しない場合には,麻薬研究者の免許を取得できます.免許取得のための詳細な手続については,都道府県薬務主管課又は保健所にお尋ねください.【Q6-1参照】

Q6-5 吹き矢や麻酔銃でケタミンを動物に施用(使用)する場合,どの時点で施用(使用)となるのですか.
 施用(使用)形態の特殊性にかんがみ,吹き矢等でケタミンを施用(使用)する場合には,動物に命中したか否かにかかわらず,薬剤を発射した時点で施用(使用)したこととします.

Q6-6 麻薬研究者等が野外の使用(施用)場所に臨場せず,遠隔地から携帯電話や無線機を利用して従事者等に必要な指示を出し,その指示を受けた従事者等が,ケタミンを吹き矢に充填して,動物に発射しました.このような事例は認められますか.
 「麻薬研究者等が携帯電話等で指示を出す行為」は,麻薬研究者等が現場に赴くことが困難な山中において,ケタミンを野生動物等に対して使用(施用)することが想定され,そのような場合に限って認められます.ただし,ケタミンの取扱いについての責任は麻薬研究者等にあります.

Q6-7 野山で動物を治療するためケタミンを施用(使用)する際,県境を越える場合があります.その場合,麻薬を免許取得以外の都道府県で施用(使用)することができますか.
 麻薬施用者である場合は,往診として扱われるため,県境を越えて施用することができます.また,麻薬研究者である場合は,免許申請時に県外における使用がありうる旨を記載してください.

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