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【別紙1】
薬食監麻発第0828004号
平成18年8月28日
日本獣医師会長 殿
厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長
動物捕獲等を目的としたケタミンの使用者に係る取扱いについて
 標記について,別添写のとおり通知しましたので貴会員あて周知方よろしくお願いいたします.

薬食監麻発第0828002号
平成18年8月28日
各都道府県衛生主管部(局)長殿
各地方厚生(支)局麻薬取締部(支所)長殿
厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長
動物捕獲等を目的としたケタミンの使用者に係る取扱いについて
 2-(2-クロロフエニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサノン(別名ケタミン.以下「ケタミン」という.)については,動物の捕漢又は不動化(以下「動物捕獲等」という.)を目的として広く使用されているが,平成18年3月23日政令第59号により,平成19年1月1日よりケタミンを麻薬に指定することとしている.これに伴い,動物捕獲等を目的としたケタミンの使用者について,下記のとおり取り扱うこととするので,関係者への十分な周知及び指導をお願いしたい.
 
1 麻薬施用者による動物捕獲等
 麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号.以下「法」という.)第27条第3項により,麻薬施用者は疾病の治療以外の目的で麻薬を施用することを禁じていることから,麻薬施用者の免許を受けた獣医師が,動物捕獲等のみを目的としてケタミンを施用することは認められない.ただし,動物の疾病の治療を目的としてケタミンを施用し,動物捕獲等を行うことは差し支えない.

2 麻薬研究者による動物捕獲等
 法第3条第2項第9号において,学術研究上麻薬を使用することを必要とする者については,麻薬研究者の免許を受けることができるとされていることから,動物捕獲等により学術研究を行う目的でケタミンを使用する場合には,当該研究者に対して麻薬研究者の免許を取得させるよう指導されたい.
 なお,住民の生命及び財産に係る安全確保及びその増進を企図する行為については,当該行為の内容について審査を行った上で,当該行為が学術研究であると判断できる場合には,麻薬研究者の免許を取得させて差し支えない.

【別紙2】
事 務 連 絡
平成18年8月28日
日本獣医師会 御中
厚生労働省医薬食品局
監視指導・麻薬対策課
ケタミンの取扱いに係る質疑応答について
 2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサノン(別名ケタミン)については平成18年3月23日政令第59号により,平成19年1月1日より麻薬指定することとしています.これに伴い当課においてケタミンに関係する取扱い質疑応答【別記2】を作成しましたので,ご参考までに送付します.貴管下関係団体あての周知にご配慮いただきますようよろしくお願いいたします.


【別記2】
ケ タ ミ ン の 取 扱 い
( 質 疑 応 答 )
2006年8月
厚生労働省医薬食品局
監視指導・麻薬対策課
1.規制の背景
Q1-1 ケタミンとはどのような物質ですか.
 ケタミン(Ketamine)は,化学名を「2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサノン」といい,我が国においては,昭和45(1970)年2月から人を対象とした医薬品として市販され,現在では,動物用医薬品としても販売されています.薬理作用として,麻酔・鎮痛作用のほか,血圧降下,頻脈,脳脊髄液圧上昇,脳血流量増加,呼吸抑制などの作用があります.
 ケタミンは,平成18年3月23日に公布された麻薬,麻薬原料植物,向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令の一部を改正する政令(平成18年政令第50号.以下「ケタミンの麻薬指定政令」という.)により,平成19年1月1日に麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号.以下「麻向法」という.)第2条第1号に規定する麻薬に指定され,輸入,輸出,製造,譲渡,譲受,所持,施用等の取扱い等について規制されることとなります.

Q1-2 我が国でケタミンが濫用されているのですか.
 ケタミンは「K」,「スペシャルK」等と呼ばれて密売されています.密売されているケタミンは主に粉末で,そのほとんどが密輸入品と考えられています.我が国では医療用医薬品であるケタミンそのものの濫用は報告されていませんが,ケタミンの濫用が原因となって惹起された精神疾患の症例が学会でも報告されており,ケタミンの濫用との因果関係が強く疑われる死亡事例も発生しています.このほか,濫用されているMDMA等錠剤型麻薬にケタミンが混合されている事例も数多く報告されています.

Q1-3 ケタミンの海外での濫用状況や規制について教えてください.
 ケタミンの濫用状況は国際的に悪化しており,国連麻薬委員会(※)は各国に規制することを呼びかけています.また,世界保健機関(WHO)においても,麻薬を規制する国際条約(麻薬に関する単一条約)の規制対象にするため,国連麻薬委員会に勧告することを検討しています.さらに,米,仏,中,東南アジア諸国等においては,麻薬等の規制薬物に指定しています.
 香港では,ケタミンはヘロインに次ぐ第2の濫用薬物として,特に若者の間で流行しており,中国では,我が国への密輸直前に摘発された事例も報告されています.また,韓国では,動物用のケタミン注射液が加工されて濫用されていることが判明しています.

 ※国連経済社会理事会の下部委員会であり,国際的な薬物問題に関する意思決定の中心機関である.


2.免  許
Q2-1 これまでどおりケタミンを使うためには,どのような手続を行えばよいのですか.
  医師,歯科医師又は獣医師であって,疾病の治療の目的でケタミンを施用する者は,都道府県知事から「麻薬施用者」の免許を取得する必要があります.
 また,学術研究の目的でケタミンを使用する者は,都道府県知事から「麻薬研究者」の免許を取得する必要があります.
 免許申請に係る詳細な手続については,都道府県薬務主管課又は保健所にお尋ねください.

Q2-2 麻薬施用者や麻薬研究者の免許の有効期間について教えてください.
 麻薬施用者又は麻薬研究者の免許の有効期間は,免許の日からその日の属する年の翌年の12月31日までです.

Q2-3 保健所や検疫所は「麻薬診療施設」として取り扱うことができるのですか.
 保健所及び検疫所は,医療法(昭和23年法律第205号)上の診療所の規定が適用されており,麻薬施用者が当該施設で診療業務を行う場合は,麻向法第2条第22号の「麻薬診療施設」に該当します.なお,獣医師が所属する保健所等についても,獣医師が麻薬施用者として診療業務を行う場合は,同じく「麻薬診療施設」に該当します.

3.保   管
Q3-1 私は麻薬施用者(麻薬研究者)ですが,ケタミンはどのように保管すればよいのですか.
 保管については,麻薬以外の医薬品(覚せい剤を除く.)と区別して,麻薬業務所内のかぎをかけた麻薬専用の堅固な設備で保管してください.

Q3-2 ケタミンを診療室のスチール製事務机の引き出しに施錠して保管することは適切ですか.
 そのような引き出しは,麻薬保管庫とは認められませんので,麻薬専用の固定した金庫又は容易に移動できない金庫(重量金庫)で,施錠設備のあるものを設置し,保管してください.

Q3-3 私が開設している診療所は,自宅が別棟となっているため,夜間盗難の心配があり,自宅にも麻薬保管庫を備え,夜間,休日はケタミンを自宅で保管しようと考えていますがよろしいですか.
 麻向法第34条第1項の規定により,麻薬は「麻薬業務所内」で保管するように定められています.したがって,夜間であってもケタミンは,麻薬業務所内のかぎをかけた堅固な設備内に保管しなければなりません.

Q3-4 麻薬施用者ですが,緊急時に対応するため,あらかじめかばん等の中に必要最少量のケタミンを常備し,夜間居宅に保管することは,保管に関する規定である麻向法第34条第1項の違反になりますか.
 緊急用(往診用を含む.)のケタミンであっても,居宅内に保管することは麻向法第34条第1項に違反します.往診の場合,その都度必要最少量のケタミンを麻薬保管庫から持ち出すようにし,絶えず事故防止に配慮するとともに,往診から帰った時は,直ちに麻薬保管庫内に戻してください.

Q3-5 患者の家が遠隔地である場合,往診する際にケタミンを所持したまま途中でホテル等に宿泊しても差し支えありませんか.
 往診に際しては県外等の遠隔地に行く場合があり,往診の途中で宿泊を伴うこともあります.その際,必要があれば,施用のため診療所からケタミンを持参し,ホテル等に宿泊してもかまいません.
 ただし,ケタミンが入っているかばん等を車の中に放置するなどの行為は絶対に避け,宿泊する部屋に運び入れるなど,常時自己の管理が及ぶようにしてください.

Q3-6 私は同一県内で2カ所の診療施設を開設している麻薬施用者です.いずれの施設でも治療のためにケタミンを施用したいのですが,その場合のケタミンの保管方法等を教えてください.
 2カ所の診療施設のいずれにも麻薬保管庫を設置するとともに,主たる診療所(A)に保管するケタミンについては当該診療施設を開設した麻薬施用者が管理し,従たる診療所(B)には麻薬管理者を置いた上で,その麻薬管理者にケタミンを管理させてください.
 診療所(B)に麻薬管理者を置くことができない場合には,診療所(A)において管理しているケタミンを往診という形式で診療所(B)へ持参して,施用してください.この場合,診療録は診療所(A)で保存することになります.

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