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 1995年(平成7年):
 杉山会長年頭の挨拶でいよいよWVA大会が8カ月後と迫り,永年招致運動の先頭に立ち努力して来た感激を満面に浮かべ,WVA協会創立132年の歴史の中で初めてアジア地域で開催するに至った経過を述べ,殊に世界小動物獣医師会も,8年振り同時開催される画期的大会であり総力をあげて成功させたいと堅い決意を示された.次いで国際獣医師育成事業も2期目に入り,3期目から予算額も6億より9億円に増額し従来の10名から15名に増員し,関係国の予想以上の期待を受け,かつ競馬界減収の時代の予算対応にお礼を申された.なお,今年に入り獣医師道委員会で戦後に作られた獣医倫理綱領を時代に即する内容にあらためる方向で検討中であることにも触れられた.
 2月に入り獣医師の劇薬等特定薬品取扱について異例の注意が地方獣医会長,日小獣会長宛に発信された.このことはさきに大阪市の某獣医師が自ら診察しないで塩化スキサメトニウムを犬の訓練士に処方し,大きな社会問題となった.当人は獣医師法第18条違反により50万円の罰金刑(刑事罰)に処せられるとともに,農水大臣から5カ月の業務停止処分(行政罰)を受けた.これに続いて埼玉県内においても類似事件が報道され,当時(平成7年)私は県会長職にあり平成7年4月アフリカ・ケンネル事件に関連ありと思われた某獣医師より,電話報告を受け顧問弁護士と協議の上,対応をすると共に日獣に経過報告をした.今日に至るも犯人とみなされる者の自白もなく法的決定にも行政罰も某獣医師に及んでいない.事件当時警察,報道関係者昼夜に関係なく来訪,地方獣医師会員より何故某獣医師を処分しないかと脅迫の電話を受けたことも忘れられない.この種の事件は感情に流されず現状把握に努めて弁護士の専門的指導を受けながら対処すべきことであるとの思いを深くしている.
 一方,日獣では,小動物医療の適正化を期する目的で昨年3月より6月にかけ全国の小動物診療従事者約5,100名を対象に「小動物診療全実態調査」を実施し,約1,500名からの回答を得,集計整理の結果を本誌第48巻第2号(1995)に各項目毎の平均値と共に紹介した.
2月8日,第5回理事会席上,杉山会長から1月30日阪神・淡路大震災による被害の実状視察の報告と支援対策本部,関係獣医師会の救援活動等についても説明された.
 6月27日,フロラシオン青山において第52回通常総会開催,杉山会長より阪神・淡路大震災に際し,全国会員よりの暖かい義援活動に感謝の意を表し,また,68日後に追ったWVA大会の準備状況説明があり,国内の登録者6,000名同伴者2,000名を加え,8,000名の参加を見込んでおり,外国からの参加者も600名に達していると報告された.議事に入り,事務事業報告後,[1]犬の登録制度におけるマイクロチップの利用,[2]広報のあり様,[3]動物薬事講習会におけるPL法の同時講習,[4]「獣医師の誓い―青山宣言95年」採択等が審議された.
 9月3日〜9日まで我々獣医師会にとって永年の宿願であり一大イベントであるWVA大会(横浜)がパシフィコ横浜で国内外から1万名余の参加者を得て華々しく開幕された.
 この大会は世界獣医学協会創立以来,初めてアジア地域において開催される記念大会であり,9月3日午後4時国立大ホールにおいて開会式が挙行され,天皇皇后両陛下のご臨席を賜り,会員一同感激の中で華々しく開会された.今回は,第25回WVA大会と第20回WSAVA大会が世界獣医学大会(横浜)として合同開催であり,2つのホールと16の会議室がフル稼動の状態であった.9月5日には社交プログラムとしてジャパンフェスティバルが行われ,駒踊り・阿波踊り・チャグチャグ馬ッ子・馬祭り・流鏑馬等日本特有の催しが行われ,外人参加者も大きな歓声に包まれた.懇親パーティーでは両陛下が60分余に亘り,特に外人との会話を至近の距離で交わされ,某国の代表からは日本の皇室のこのようなご対応におどろきの様子であった.9月9日正午からWVA大会閉会式があり,杉山会長が感激の中で挨拶され,次期大会開催地はフランス・リヨン市開催が決定されラプラ組織委員長を歓迎する旨のスピーチ後,再会を約し閉会された.その後,フランス大会に出席の折,数カ国の代表より,横浜大会の賞賛ともう一度日本での開催依頼に対し深い感動を覚え,かつ開催にあたり関係官庁・団体・会社の協力の結実として感謝の念を深め,帰国したことが思い出される.
 10月2日,熱海市「ニューさがみや」において理事会に続き全国獣医師会長会議が開催され,この席上農林省青沼衛生課長より豚コレラ撲滅確立対策としてワクチンを用いない防疫体制の要望が生産者を中心に検討されているので獣医師会,家保関係者の理解協力を求めたいとの挨拶があった.

 1996年(平成8年):
 杉山会長年頭の挨拶にWVA大会に天皇皇后両陛下の臨御を仰ぎお言葉を賜り,引続きレセプションにも長時間お出まし下され,広く世界各国獣医師と交歓を賜ったことは異例のことと深く感銘していることやフランス代表のピレー氏より「オープニングセレモニーは完璧であった.天皇皇后の臨御は,日本獣医師のステータスを示しているのみならず,世界の獣医師の栄光と認識している」との感想を述べられたとの紹介もあり,この大会は86カ国から,11,500名の参加者があったと報告された.続いて農水省が豚コレラ撲滅体制確立事業として来年度予算に6億8,700万円を計上したことにも触れ,最終的にはワクチンを使用しない防疫方式に移行し,海外からの豚コレラ侵入防止対策を撤廃し,5年後を目途に豚コレラの撲滅を達成することとされ,目標が達成されるときは安全な畜産物を国民に供給することができ,且つ種豚や豚肉を輸出することの可能性も含め,日本養豚界の安定的発展に寄与するであろうと述べられた.また,狂犬病予防関係では生涯一回登録制となり,登録手数料収入の減額を予想されるので全国で総額約10億円が計上され狂犬病予防行政遂行に支障を来さぬよう手当されたことも報告された.
 1月25日,理事会が開催され,橋本内閣が発足し,獣医師問題に関する議員連盟は自民党の三塚会長とする連盟と新進党では北村議員(獣医師)の尽力により結成された渡部議員を長とする獣医師問題研究会をそれぞれ設立いただいた経緯が報告され,農水省青沼衛生課長より直接「豚コレラ撲滅対策事業」の内容説明を受け,生産者と獣医師の連携が一層重要となることが強調された.一方獣医師サイドより西ドイツにおける豚コレラ発生事例をとりあげ予防注射中止による日本での発生の危険性を指摘する意見も出た.五十嵐常任理事から三学会運管規程の一部改正により平成8年度より,発表議題に応じ複数の地区学会長賞を授与できるようになったとの報告もあった.さらに杉山会長よりWVA大会を機会に日・独獣医師の学術交流に調印した件につき報告があった.
 2月5日,「家畜共済制度改善について」の要望と「動物行政の一元化に関する」要請を関係官庁に提出した.特に動物行政一元化に関する要旨は,[1]獣医療や家畜衛生等を所管する農水省,[2]狂犬病予防や食肉衛生等を所管する厚生省,[3]動物の保護・管理等を所管する総理府,[4]野生鳥獣の保護等を所管する環境庁,[5]野生希少動物の保護・国際取引を所管する通産省があり,政府が行政改革・簡素化・合理化につき検討が進められ,改善が図られているが動物関係行政に関しては一元化がみられない現状で,不測の事態に混乱を生じ迅速処理に,支障を招来することも想定されるので,この一元化を強く要請することになった.
 3月20日,英国政府がBSEの人間への感染可能性を認める発表を行い,EU諸国も英国産牛肉輸入を禁止,日本は英国からの生体牛・牛肉の輸入を禁止したが農水省はさらに加熱処理肉やペットフード等の輸入も禁止して本疫に対する警戒を強化し,関係情報の伝達に努めた.また,日本獣医学会では5月29日「プリオン疫の現状―狂牛病理解のために」のテーマでシンポジウムを開催,日獣も協賛した.
 さらに4月26日,伝染性海綿状脳症を家伝法第62条の疾病として指定し,各都道府県知事あてに通知された.日獣では会誌を通じ小沢義博氏の「狂牛病の与える影響と教訓」の記事をはじめ関係情報を提供し会員への啓発に努めた.
 6月8日,理事会において獣医師道委員会において策定した「動物医療の基本姿勢」を承認し,社会から「より親しまれ,より信頼される」職業に発展する責務を果すこととした.
 6月55日,第53回通常総会において杉山会長が再選され,副会長に五十嵐幸男と鈴木一則両氏が選任された.この副会長選任にいたるまでの経過について,鈴木一則氏著「獣医師会との五十年」の中で杉山会長からの働きかけで関東地区より塚田,五十嵐の両名が副会長選挙に立候補したと述べられておられるが真実は関東地区会長会議席上,深沢山梨県会長の発言で2名立候補に至ったものであり,決して鈴木氏を排除するための立候補でなかったことを述べておきたい.
 10月31日,東大安田講堂において緊急シンポジウム「腸管出血性大腸菌O-157感染症の流行メカニズムと予防対策」が開催され,座長に小川,丸山両教授があたられた.この開催は5月岡山県内にO-157による食中毒が発生し,以来,全国に広がり多数の感染者があり,死者も7名に及んだことに鑑み,衛生管理の徹底により予防の完遂を期す目的で実施されたものである.O-157の集団下痢症事件は平成2年(1990)10月浦和市の幼稚園で初めての集団感染があり,園児2名死亡し,世の注目を集めた事件であった.なお,この年は悪いことが続き,行政監査により獣医療の中で劇毒薬の保管状況,X線器材の管理,防護の不適当な者が指導を受ける一方,所得税申告の適正でない者への指導もあり,各自に反省自粛が求められた.

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