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 1997年(平成9年):
 新年を迎え本誌発刊50年(通巻600号)となり,座談会記事を発表した.この座談会は竹内理事の司会により今泉,粕谷,桑原,田島,幡谷,杉山,五十嵐が出席し,昭和23年12月第1号発刊以来の思い出話や改正の意見発言が続いた.本誌の使命は「日進月歩の科学の進歩に伴い伸展していくわが獣医技術分野の新しい,権威ある論説,研究を掲げて獣医学術の水準を高め,さらに会員の研究業績を公表公布し,相互の切磋に資すると共に獣医技術者の団結の中心として本会並びに地方獣医師会の活動状況の報告,会員相互の連絡親睦を密にし畜産の振興,公衆衛生の推進に努め,以てわが獣医会の発展に大き役割を果すを使命とする」と記してある.最近学術論文関係と会報の分離説や極論とし学術関係は一部の専門者を対象とした内容であるから会報主体でよいとの意見もあるが,前掲の如き本誌の使命を熟考すると当分この形態で発刊されることが最良との意見が多い.唯本誌の内容充実の機会にA4判に改定し,支出増分は,広告料を増すことや郵送費節減策により補うこととした.なお,発刊50周年に際し特集として「あなたの提言」を募集したところ,50巻3号に「小動物診療体制を今後どのように変えるべきか?」,4号に「今後の公衆衛生分野の方向性はいかにあるべきか?」,5号に「家畜衛生分野は今後どのような体制になるべきか?」,6号に「動物福祉活動に対する獣医師の取り組みはいかにあるべきか?」,8号に「日本の獣医学教育が今後進むべき方向とその実現のため方策はいかがか?」,9号に「日本の獣医界における卒後教育制度・生涯教育制度ならびに専門医制度はいかにあるべきか?」,10号に「日本の獣医免許制度の今後はいかにあるべきか?」,11号に「日本獣医師会の組織財政ならびに活動方針は今後いかにあるべきか?」,12号に「日本獣医師会雑誌は今後いかにあるべきか?」等々21世紀に向け獣医界のあるべき姿に会員各位から熱心且つ有意義な提案が続いて掲載され,執行部を預る者として良き道しるべとなった.
 その後51巻3号〜12号に「『あなたの提言』を読んで」と題し,それぞれ要職にある先生方の提言に対するご意見も掲載された.さらに筆者も「最近思うこと」と題し関連事項の一部を述べた.
最後に松山専務から「あなたの提言」を読んでの総括篇が記述されている.
 6月25日,第54回通常総会が明治記念館において開催され,杉山会長からO-157,エイズ,BSE等新感染症発生の時代となり,3月台湾に豚口蹄疫発生し,約300万頭が軍隊の協力によりと殺埋葬された報告もあり,海外悪性伝染病国内進入防止に万全を期してほしいと述べられ,畜産家畜衛生担当理事の池本英志氏も口蹄疫防疫の記事を会報に寄せている.なお「獣医師の誓い―95年宣言」及び「動物医療の基本姿勢」の啓蒙・普及を要望する意見も提言された.


 1998年(平成10年):
 杉山会長新年挨拶の中で,旧獣医師法と平行して昭和24年制定の獣医師倫理綱領に替わって一昨年制定の「獣医師の誓い―95年宣言」が採択されたことに触れ,人と動物の共存を通じて地球環境をも見据えた重要且つ幅広い職種として獣医師を捉えることになった.われわれ獣医師会は専門家集団として動物に関係する世論をリードしなければならないと述べられ,「動物関係行政一元化問題」も世論の支持を受けながら進めたい.また,昨年11月に行政改革会議の福本会長ならびに小里総務庁長官にそれぞれ要請書を提出してあると述べられ,一方,平成9年度から農水省のご指導を受け日本競馬会の交付金による「新疫病等体制強化事業」を3年間の予定で実施する.この事業は家伝法の一部改正によりシカ・イノシシ・犬等の中小動物が新たな防疫対象となるとともに未知の疫病に関する届出義務等,新防疫体制となるため,獣医師が新しいシステムに対応できる体制整備を図ることを目的とし総予算額約4億5000万円で,うち研究指針策定事業に約3億5000万円計上されている.これを機会に総合的教育プログラムを実施できるよう努力する.さらに情報化時代に即応するためコンピュータネットワークの開設を進め「情報高度化検討委員会」を設置検討することにしたい,と報告された.
 6月25日,第55回通常総会が明治記念館で開催され,当日は第18回衆議院議員選挙公示日でもあったが,杉山会長は冒頭最近の週刊紙・テレビ等において小動物医療に批判的報道が行われていることで農水省より注意を受け,ことに医療過誤・過剰診療・高額診療等獣医師に対する社会の不信感が募り,社会的信用まさに地に落ちた感があり,公益法人たる獣医師会の社会的責任も厳しく問われており,誠に遺憾な事態であると述べられ,「獣医師の誓い―95年宣言」,「動物医療の基本姿勢」の徹底を指導することや臨床獣医師の技術向上,平準化を図るため研修指針を策定する予定であり,生涯教育制度の確立を考えていると述べられた.その後来賓祝辞を終り,議事に入り,第4号議案として理事定数を変更し,地区理事を1地区1名とすることが承認された.また本会の創立50周年にあたることから11月25日記念式典を開催することも認められた.また理事会において全国産業動物開業獣医師連絡会設立の件も報告された.
 11月25日,明治記念館において日獣創立50周年式典が開催され,杉山会長より,第2次世界大戦敗戦後間もない昭和23年11月9日社団法人として設立された本会も,現在53の地方獣医師会を会員とし約27,000人の構成獣医師を擁する全国団体として成長し,今年満50周年を迎えた.特に近年獣医学教育制度の改革をあげ,修学年限を4年から6年制に延長する運動を推進し,過渡的に昭和53年4月の入学生から修士課程2年積み上げによる6年制教育に改め,昭和58年の第98回通常国会において獣医学教育年限が学部6年制となり,翌年4月の入学生から6年一貫教育となった.続いて獣医師の基本法である獣医師法も農水省関係当局のご努力と関係国会議員のご支持により,平成4年5月獣医師法の一部改正及び獣医療法の制定が行われ,獣医師の宿願であった二大事項が完結され,さらに平成7年9月WVA(横浜)大会が天皇,皇后両陛下の臨御を仰ぎ,お言葉も賜り世界86カ国より11,000名の参加者を得て盛会裡に終了したこと等々世界における日本獣医師の面目を一新することができたと述べられ,最近BSEやエボラ出血熱のような新興感染症の出現,大腸菌O-157による食中毒の発生等から獣医師・獣医業に対する社会関心の高まっている時代であり,公益法人として重大な社会使命を果したい旨熱心に述べられた.続いて農水大臣,厚生大臣等の祝辞を賜り永年に亘る功労者表彰が行われ盛会裡に終了した.
 なお式典の前日理事会を開催し,「公益法人の設立許可及び指導監督基準」に基づき農水省から指導を受け,[1]本会の役員任期を3年から2年に改める件,[2]地区理事の定数を16人から9人に改められたことに伴い理事定数「19人以上26人以内」から「17人以上21人以内に改めたい旨松山専務から説明された.本件については平成11年6月開催予定の第56回通常総会の議決後,農水大臣の認可申請を行うこと,この改正は第56回総会において選任される役員から適用すること等が承認された.また第2号議案では,(社)川崎市獣医師会から正会員としての入会申込みがあり,異議なく承認された.


 1999年(平成11年):
 年頭挨拶に杉山会長は昨年度マスコミが小動物獣医療に関する問題をとりあげ,一般飼育者に不信感を募らせるという事件があり,今後インフォームド・コンセント(説明と同意)の重要性を述べ,飼育者に適切な情報を提供し理解と協力を求める努力が大切で,社会使命を果すために生涯教育の重要性,新疫病等防疫体制強化事業を実施することと共に研修制度の確立を優先課題の一つとするとも述べた.国際獣医師育成研修事業も6期生を受け入れ5大学の努力に感謝し,さらに今般制定された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の理解や狂犬病予防法の一部改正により輸出入検疫の対象に猫・アライグマ・その他政令で定める動物が追加され,届出義務の規定に猫等も適用されることも述べた.なお最近各団体に見られる若年層の組織離れ傾向が日獣にもみられると警告された.
 3月24日,平成10年度第4回理事会が開催され,[1]前回理事会で承認された理事定数,役員任期変更の件,[2]川崎市獣医師会の入会の件,[3]動物の保護及び管理に関する法律の一部改正(本会要諾内容の70〜80%骨子に入る),[4]獣医師研修指針策定事業(竹内理事説明),[5]学校飼育動物に関する検討会(宮本理事説明),[6]副会長3人制に関する提案(産動,小動物,公衆衛生)の審議がなされた.
 理事会後,第2回全国会長会議が開催前副会長塚田賢一郎氏のご逝去が伝えられ謹んで哀悼の意を表した.
 6月24日,明治記念館において第56回通常総会が開催され杉山会長より挨拶があり,私としては会長として最後のご挨拶であると前置し,28年前理事1期2年副会長は中村会長のもとで5年,椿会長のもとで9年,そして会長職責12年と実に1/4世紀以上の長い仕事であった.その中で一番印象に残っているのはWVA(横浜)大会であり,横浜大会の誘致運動からWVA大会終了まで,先頭に立ち努力を傾注した旨熱意をこめて述べられたのが印象的であり,さらに政治的課題として残した動物関係行政の一元化問題,動管法改正問題,獣医師の生涯教育,フランスのリヨンで9月開催するWVA大会の件に触れられ,心残る問題もあり残念である旨を述べられた.杉山会長28年の長きにわたった理事,副会長,会長職を通し,日獣発展に盡力された功績は永久不滅の偉業であり信念の人杉山氏でなければ果すことが出来なかった数々の業績,後継者として敬仰の誠を盡くしながら傾聴した.
 なお,今次総会席上杉山会長ご勇退により第10代会長に五十嵐が継承することになった.
 尤も無競争にての推薦を賜った裏には5月13日中部地区の総会で会長出馬推薦を受けながらも今後の会運営を円満にするために出馬を断念した鈴木一則先生の決断があったことを忘れることができない.副会長選挙は4名即ち金川弘司,辻 弘一,本好茂一,宮本 譲氏立候補し選挙の結果,金川,辻両名が当選就任した.さらに専務理事について現松山専務理事の再任につき承認を求め全会一致で承認された.議長が解任後五十嵐新会長から新役員一同手を携えて21世紀に向かって日獣を前進させたい旨挨拶が行われ,閉会となる.
 (後記)偉大なる獣医界の指導者であった杉山文男先生は平成14年(2002)8月13日83歳の生涯を閉じられた.心からご冥福をお祈りする次第である.(詳細は本誌第55巻第9号に寄せられた追悼の記事を参照されたい.)
 なお杉山政子夫人が中心となり,杉山文男先生生前の歩みをとりまとめ,座右の銘とした「一隅を照らす者これ国の宝なり」にちなみ「一隅を照らす 杉山文男遺稿集」として発刊された.
(以降、次号へつづく)


† 連絡責任者: 五十嵐幸男
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