会議報告

〔環境省大臣官房 小野寺 浩審議官〕
 局長は公務多忙で来られませんので,私は自然環境を担当しております審議官の小野寺と申します.代わりにご挨拶をさせていただきたいと思います.
 先ほど北村副大臣から三宅島のお話をいただき,ペットが非常に重要であるということを伺いましたけれども,神戸震災以来,有珠山その他を見ておりますと,まったくそのとおりでありまして,震災が起きた直後に担当大臣なり副大臣が行って,住民への説明会等で要望を取りますと,だいたい聞いてみて驚くのですが,命と水がまだ危ないときに,まず自分の家の犬や猫がどうなっているかというのが,第一に住民から出る質問であり,心配ごとであります.
 環境省はご承知のとおり,自然環境,野生生物を所管しておりますが,1年半ほど前に環境省ができた際に,当時総理府にありましたペット関係の法律も私の自然環境局というところにきまして,言ってみれば自然の生物と愛玩用,いわゆるペットが私どもの局で所管してから1年半ほどたっております.その間,関係獣医師の方にはいろいろな面で大変お世話になっております.たとえば絶滅に瀕した野生生物,ヤマネコ等,その他の鳥においての保護増殖事業とか,あるいは野生の鳥その他がけがをしたときなどに,都道府県単位で野生生物用の医療活動に全面的なご協力をいただいております.ペットについてはまさに申すまでもないことでありまして,自然環境保全行政のなかで獣医師の方々との関係は,これから益々いろいろな領域,範囲,深さも含めて高まっていく一方であると思っています.
 獣医師の方々との関係がどんどん深まっていけばいくほど,冒頭の江藤隆美先生のお話にもありましたけれども,医師は国家試験の合格者が年間約8,000人も輩出されると聞いておりますが,獣医師の方はだいたい最近の数字だと1,000人前後で推移していると聞いております.軽々にあまり増やさないほうがいいという考えももちろんありますけれども,われわれが係っている分野そのもの,あるいは世間で獣医師という名の専門職種に対する要請というものを考えておりますと,本当に毎年1,000人ではとても足りないというのが実感でありまして,ブロック大学構想というものが江藤先生から語られていましたけれども,勝手なことを申せばもう少し数も増やしていただけると,誠にありがたいということを実感として感じているところであります.
 私事でございますけれども,私は5年ほど前まで熊本県の阿蘇で仕事をしておりました.熊本県阿蘇郡は人口が郡全体で7万5,000人ですが,最近の一番近い数字を聞きますと,牛が約10万頭で,人間より牛の方がずっと多い地域におりましたので,家畜関連のいろいろな事柄はよく日常的に見聞きして知っているつもりでおります.また,阿蘇というのは都会に近いせいかどうかわかりませんけれども,高速道路を通って犬や猫を捨てに来る人が多くて,これも非常に困っておりまして,捨て猫の1匹が私の官舎に迷い込んで来たのを,つい情にほだされて飼っておりまして,5年前に東京に来たときに,本当は官舎で猫を飼ってはいけないのですが,内緒で飼って,これがまたよく病気をするものですから,そのようなことでも獣医師の方に,これも日常的にお世話になっているところであります.
 そういう個人的なことだけではなくて,これからの環境行政,自然環境行政にとって獣医師的視点の専門性は本当に欠くべからざるものであるということを私は仕事をしながら確認しているところであります.環境省も獣医師の方々にいろいろなことをお願いするためには,いろいろな観点から準備をしなければいけないことはよくわかっておりますので,今後ともわれわれも頑張りますし,会場の皆様のご協力をお願いして,日本獣医師会第60回総会へのお祝いの言葉に代えたいと思います.どうもありがとうございました.

〔社団法人中央畜産会 中瀬信三副会長〕
 ただ今ご紹介に預かりました中央畜産会副会長の中瀬でございます.本日は社団法人日本獣医師会第60回通常総会にお招きいただきまして,誠にありがとうございます.私どもの山中会長は先ほど江藤先生がご紹介しましたように,本日会長をしておられる会を主催しておりますので参れません.私が会長に代わりまして畜産団体を代表して,今日のこのご盛会をお慶び申し上げますとともに一言ご挨拶を申し上げたいと思います.
 私どもの中央畜産会,実は去る6月20日に総会を行いました.五十嵐会長には中央畜産会の常務理事としてご出席いただきました.おかげさまで無事,理事会,総会を終了することができました.この場をお借りして御礼申し上げたいと思います.私どもの山中会長は折に触れまして,中央畜産会と日本獣医師会は車の両輪のようなものである.ともに手を携えて日本の畜産が当面する諸問題に取り組まなければならないと申しております.私もまさにそのような気持ちでいるわけであります.今後とも何卒よろしくお願い申し上げたいと存じます.
 さて,先程来,お話が出ておりますが,一昨年9月に発生した,あれほど生産者を震撼させ,消費者に不信と不安を与えたBSEもいろいろな後遺症は残しながらもどうやら沈静化しました.牛肉の需給も価格もほぼ元に復したと言ってよいものと思います.その間,諸々の問題克服のために第一線で献身的な取り組みをなされました獣医師の皆さん,また貴会のご貢献に心からの敬意を表したいと存じます.
 このようなBSEの教訓を踏まえて政府の政策対応も今大きく変わろうとしております.農政の目下の焦点は内閣府に設けられる食品安全委員会につきまして食品安全基本法や食の安全,安心のための政策大綱をはじめとした食の安全,安心に関する法体系と,これに関連する行政組織の整備であります.消費者に信頼を得られる政策の転換を図ることを柱としまして,この7月には先ほど副大臣からもご紹介がありましたように,農林水産省でも組織機構が改正されました.新しい局であります消費・安全局を設置する予定と伺っております.生産局畜産部の関連では衛生課と飼料課の一部が新しい局に移管される等,組織の所管事項の大幅な変更が行われ,食品の安全を担う体制が整うことになっております.
 これによりまして家畜衛生関係の行政部門では,これまで一緒に畜産部のなかで机を並べて仕事が進められてまいったわけですが,新しい局への移管によりまして,局をまたいで仕事をするというかたちになります.しかし衛生課の業務のなかにはリスク管理のみではなくて,生産振興業務も含まれていることでもございます.局が変わりましても,お互いの連帯感は持ち続けてほしいと念じております.私ども畜産関係団体もそのような行政姿勢と歩を一にして業務を進めてまいりたいと思っているところです.
 一方,目を地方に転じてみますと,今各都道府県においては畜産関係団体の統合が急速に進んでおります.この7月には全国43の都道府県において何らのかたちで再編統合が完了することになっております.その再編統合の組み合わせ,団体の再編統合の組み合わせをみますと,家畜衛生を所管する皆様に関係の深い家畜畜産物衛生指導協会,そして,肉用子牛価格安定基金協会,畜産会,このような三つの団体が三点セットのようなかたちで,核となりまして,新しい団体を形成する事例が大変多うございます.
 このことからみましても,都道府県段階では家畜衛生と経営の指導,あるいは経営の安定,このような部門はもはや切り離せない関係になっていると思われます.さらに最近の畜産経営の実態をみますと,経営規模はますます大型化し,専業化,法人化も進んでおりまして,従来の経営指導等の枠組みの中では収まり切らないほど経営の多様化が進展しております.それだけにこのようななかでひとたび重大な悪性疾病が侵入しますと,取り返しのつかない結果を招くことになりかねません.日ごろからの家畜衛生部門と,経営指導部門の連係が求められる所以がここにもあろうかと考えております.
 獣医師会の皆様にはこのような畜産会や諸団体,あるいは農家,経営体の新しい時代への対応の進展ぶりを理解されまして,より広い視野,そしてより高い見地から総合的な畜産指導者として畜産会をご指導くださいますようお願い申し上げたいと思います.以上,おもに産業動物部門について申しあげましたが,皆様のお仕事のなかではペット,いわゆるコンパニオンアニマル,その他,諸々の動物に関する分野も目覚しい拡大を続けていると承知しております.近年の物質文明あるいは物中心の価値観が横行する世相のなかにありまして,人の心をいやすコンパニオンアニマルやアニマルセラピーの果たしている役割はますます大きくなると思います.この分野でも獣医師の皆さんのご活躍に心から声援を送りたいと思っております.
 縷々申しあげましたが,今後ともわが国の獣医衛生関係者の皆様に求められる社会ニーズはますます大きくなることはあっても,小さくなることはないと思います.日本獣医師会の役職員の皆さん,そして会員の皆さん,さらに一丸となってわが国国民の生活の安定と発展に大きく貢献されますよう祈念しまして,措辞ですがご挨拶とさせていただきます.ありがとうございました.

〔社団法人日本獣医学会 佐々木伸雄常任理事〕
 本日は獣医学会の理事長であります土井がどうしても抜けられない所用がありまして,私は庶務担当理事をしております佐々木と申しますが,私からご挨拶をするようにということで本日出席いたしました.
 日本獣医学会はほとんどが獣医師会会員です.一部そうでない方もあるかもしれませんが,実際上はそういう意味では獣医師会の一会員としての立場がまず一つです.ただし,この数年,獣医師会と獣医学会はさまざまな形で連係しようということで話し合いをしたり,あるいは一部実際の活動を開始しているという状況です.獣医学会はご存じだとは思いますけれども,日本のなかで獣医学関連の研究団体,学会としては最も大きな規模ですが,ともするとアカデミズムと申しましょうか,基礎的な学問の研究の場というかたちに徐々に進行しているという状況がございました.そのなかでわれわれは獣医師ですので,獣医学の研究はやはり臨床であれ,あるいは公衆衛生であれ,獣医学がもっとも活躍している現場に対応した,そこから上がってくるニーズに対応した研究をすべきではないか.そのためにはより実際の活動している,ある意味では日本の獣医師の代表団体である獣医師会との連携,獣医師会の三学会との連携,このようなことをもっと模索すべきではないかというのがこの数年のわれわれの考えであり,獣医師会とさまざまな話し合いをしてきたところでございます.
 実際にはこの秋に青森市で開催される東北地区の三学会とわれわれの秋の学術集会,これは北里大学が主催校ですが,これを盛岡市で日程を重ねて開催するという第一歩を今年はスタートする予定です.この会ではそれぞれの参加者は地区の三学会であれ,獣医学会であれ,いずれも参加できる.同時に共同のシンポジウム等のプログラムも企画されております.これは非常に小さな一歩ではございますけれども,両者の連携というものをとりあえずかたちとしてスタートしようというのが,この秋の一つの共同と申しましょうか,連携開催ということにつながりました.
 実際は来年秋の獣医学会,学術集会は北海道ですが,これも北海道地区の三学会と同じようなかたちで開催する予定になっております.またそれ以外の日本獣医師会の年次大会あるいはわれわれのほうの春の学術集会,あるいは臨時の学術集会等についてもさまざまなかたちで連携し,お互いが協力し合ってよりよい日本の獣医師のための組織としての活動をしていきたいと考えております.
 日本獣医師会はもちろん単純に研究だけではなくて,実際の活動あるいは社会的な貢献,あるいは政治的な活動,あるいは世界に対しての活動,非常に多くの活動をされているわけですが,われわれは獣医師会の会員の一人として,獣医学会の研究活動を通してお互いによい日本の獣医師社会をつくるために今後も活動していきたいと思います.日本獣医師会がそういう意味でますます発展していくことが,われわれ自身,獣医師会の会員の一人として,あるいは獣医学会の会員の一人としての希望でございます.
 今後とも変わらぬ協力関係をお願いいたしまして,本日の第60回の定時総会におけるご挨拶とさせていただきます.どうもありがとうございました.