会議報告

〔農林水産省 北村直人副大臣〕
北村直人副大臣
  ご紹介をいただきました農林水産副大臣を拝命しております北村直人でございます.一会員としてご挨拶を申しあげたいと思いましたら,副大臣ということで役所から今日も衛生課長が一緒ですが,役所というのはすばらしいですね.きちっと挨拶文を書いて,それも巻紙にして私に手渡してくれました.中身はとてもすばらしい100点満点の挨拶文ですが,これはここに置かせていただいて,そうすると課長はせっかく作ったのになんて思って大変だと思いますが,私が日ごろ感じておりますことも交えて皆さんと同じ獣医師という立場で,今農林水産副大臣をしているということでのご挨拶をさせていただきたいと思います.
 先ほど江藤大先輩からお話がございました.まさしく江藤先生はある面では非常にアバウトに対処していただける,そういうところではその下におります私は非常に対応しやすいことで,先ほどのBSEの問題についても予算をアバウトでこれだけ用意せいと.あとは細かくいろいろなことについては,われわれがそのことを一つひとつ精査をしていったところです.そういう意味ではBSEが1年と少しの間に風評被害もある程度収まって,BSEの発生以前の価格に戻りつつある.これは大変な成果であると思っております.
 私も今般,日本国を代表して5月18日,OIEの総会に出席しました.そして疑似患畜の見直しがOIEの事務局から提案される,また提案を働きかけてきた日本国として,その疑似患畜の見直しを日本は強く支持しようという演説を,基調講演を交えてさせていただきました.今日大先輩の中村 寛先生がおいでですが,私は中村先生がお書きになった『科学者としての獣医師のありよう』という本を何度か読んだことがございました.そのなかから一部を引用させていただいて,OIEで「科学者としての獣医師」というかたちのなかで,どうあるべきかということを基調講演させていただきました.
 多くの皆さん方から終わったあと大拍手をいただいて,そのとおりだ.人権擁護というのは一番大切だということで世界の獣医師の皆さん方からも握手攻めにあったところでした.あのときほど獣医師として国会議員であることのすばらしさ,誇らしさを感じたことはございませんでした.おかげさまで5月23日の最後の総会の場所で,この疑似患畜の見直しが採択をされた.そして晴れて,実は今日6月24日の夕方,衛生課長が記者発表をして,今日付でマニュアルの改正を発布するということで,これも一つの大きな成果があがったと思うところです.
 さて,獣医師行政についてはいろいろな問題点がございます.先ほど江藤先生からお話のあったとおり,やはり大学の問題は避けて通れない問題であると思っております.そして,わが農林水産省も今まではリスク管理部門,さらには振興策というのを一緒になって対応してまいりました.これがBSEあるいは食の安全の中,雪印といった大きな社会問題になったようなことがひき起こされてきた.そういう反省のなかにあって,今回7月1日から新しい仕組みをつくったわけであります.つまりリスク管理はきちっとリスク管理として,振興策と別にしようということにしたわけでして,7月1日付けで獣医師の方々を含めて大きな異動があるわけです.
 そのなかで一つ,意外と農林水産省のなかで忘れがちですけれども,私は小動物について明確にきちっと担当官を置かなければならないという思いがありまして,来年,平成16年度の予算概算要求の中に人員の増員を企画しております.そして衛生課の中にきちっと小動物を司る課長補佐を置かせていただいて,この方を窓口としながら環境省や文部科学省,学校動物,あるいは厚生労働省の狂犬病対策等々と,しっかりと窓口として役割をさせるべく今努力をしているところです.
 なぜ小動物が大切かということは,もう今日おみえの皆さん方はご承知のとおりで,先般私は中央防災会議というものに農林水産大臣の代理として官邸で会議に出席しました.本部長は小泉総理ですが,関東大震災だとかいろいろな被害が出たときに,国は危機マニュアルを持ってどう対処するか.人の命と人の財産を最優先するということは,だれが見ても当たり前でありますけれども,このように分厚い資料のなかに動物の「ど」の字も入っていないのです.
 それで私もこの防災会議のなかで危機マニュアル,人の命と財産,これはとても大切です.しかし,その次に大切な動物,野生動物はその本能で危機があれば逃げることがあるでしょう.あるいは産業動物はわが農林水産省が責任を持って移動させたりいろいろなことをいたします.それではこの間のイラクのように動物園はどうするのですか.あるいは学校で飼われている動物,子どもたちに先生方は命の大切さということを教えながら,子どもたちは,いの一番に避難させて,学校で飼っている学校動物はどうするのですか.あるいは一番大変なのは東京ですと20万頭とも30万頭とも言われているわれわれの伴侶としてのペット,これを災害があったときにどうするのですか.体育館に逃げていった.逃げていったけれども,ペットと一緒に行ったらペットだけ入れてもらえない.これはどうするのですか.国が窓口としてきちっと対処して,それを都道府県や市町村に指導しなければ,都道府県が右往左往してしまうことになります.
 実は隠れた世界の高い評価として,東京都の三宅島のあの大噴災のときの対応があります.三宅島にいる動物はすべて船に乗せて連れてきたのです.これは世界の方々に隠れた評価として大きな賞賛をいただいているところです.小泉さんはあのときちょうどサミットに行く前でありまして,プーチン大統領やブッシュ大統領に会う予定.プーチンもブッシュも犬好きです.そういうことからいうと,小泉さんもお正月の年頭のご挨拶に膝に猫か犬でも乗せて「あけましておめでとうございます」と言えば,間違いなく10%くらい支持率が高くなるでしょうと.このようなお話もしながら,実はお話をして,都道府県の皆さん方が間違いのない危機管理のなかに動物というものについての窓口がなければならない.そういうこともありまして,わが省の中にもきちっと小動物の窓口をつくっていきたい.
 このようなことを深めながら,これからは環境省あるいは厚生労働省,特に厚生労働省とは綿密な連絡,連係をとりながら食の安全,共通感染症等々にしっかりした対応をしていかなければならない.そのためには今日おみえの日本獣医師会の皆さんのお知恵とお力添えが,一致団結をした,このような取り組みがこれからは大変重要になってくると思いますので,今日の総会を通じて獣医師の先生方のさらなるお力添えを心からお願い申し上げまして,少し長くなりましたけれども,私の今日のお祝いのご挨拶とさせていただきます.本日はまことにおめでとうございます.

〔厚生労働省医薬局 遠藤 明食品保健部長〕
 ご紹介いただきました厚生労働省医薬局食品保健部長の遠藤です.私事ですけれども,5年前に埼玉県の健康福祉部長をやっておりまして,当時五十嵐会長に大変お世話になりました.この席を借りましてあらためて御礼申し上げます.動物愛護週間などで獣医師会の先生方と子どもたちを集めまして動物に親しむイベントを開催したりしたことを,なつかしく思い出すわけです.
 厚生労働省を代表して挨拶をさせていただきたいと思います.本日ここに第60回,社団法人日本獣医師会通常総会が盛大に開催されますことを心からお慶び申しあげます.皆様方におかれましては日ごろから公衆衛生行政の推進に多大なご協力を賜り,厚く御礼申し上げます.
さて,平成13年に発生しました牛海綿状脳症問題等を契機とした,食品の安全に対する国民の不安や不信に応えることを目的とし,リスク評価等を行う食品安全委員会の設置と,消費者の保護を基本とした包括的な食品の安全を確保するための法律として食品安全基本法が5月23日に交付され,食品安全委員会の設置が7月1日に予定されております.
 また,食品の安全に関するリスク管理の主要部分を担う厚生労働省におきましては,食品の安全性確保のための施策を通じ,国民の健康の保護を図ることを目的として食品衛生法,と畜場法及び食鳥検査法等の抜本的な改正法案を今国会に提出し,全会一致で可決成立し,5月30日の交付後,すでに一部が施行されております.さらに厚生労働省の組織体制についても医薬局を医薬食品局に,食品保健部を食品安全部に改組し,リスク管理機関としての責務を着実に果たしてまいる所存です.
 また,狂犬病予防対策につきましては,長年にわたりご協力いただきました成果として,他の多くの国で狂犬病が発生しているなかで,わが国での発生防止が図られており,皆様方のご協力の賜物と感謝申し上げる次第です.また外国からの動物由来感染症の侵入防止のため,本年3月プレーリードッグを輸入禁止としましたが,また今般世界的に大きな問題となりましたSARSに関連して,中国産のハクビシン等に感染の疑いがあることから,その輸入を禁止する予定です.さらに米国での外国から侵入したウエストナイル熱やサル痘などの動物由来感染症による患者の発生を踏まえ,感染症法の見直しのなかで輸入動物対策の検討を進めているところです.
 さらに獣医学分野が他の分野と連係を図ることにより,内分泌かく乱化学物質やダイオキシンなどの環境汚染物質,バイオテクノロジー応用食品等の問題など,食の安全をはじめとする公衆衛生分野においてご貢献をいただくことがますます期待されております.今後とも食品の安全確保対策,動物由来感染症対策など種々の施策の充実に努めてまいる所存でありますので,これら施策の推進にあたり日本獣医師会のご理解とご協力を引き続きよろしくお願い申し上げる次第であります.
 最後になりましたが,今後の日本獣医師会のますますのご発展と,本日お集まりの皆様方のご健勝を祈念いたしまして私の挨拶とさせていただきます.どうもありがとうございました.