会議報告

第60回通常総会の概要

| .日 時: 平成15年6月25日(水)13:00〜17:00
|| .場 所: 明治記念館 2階「蓬莱の間」
||| .出席者:  
1.正会員:全国55都道府県市獣医師会
2.日本獣医師会
会 長: 五十嵐幸男
副会長: 金川弘司,辻 弘一
専務理事: 大森伸男
地区理事: 坂井清治,大島寛一,中川秀樹,
手塚泰文,菅沢吉登,串田壽明,
中間實徳,湊  恵,藏内勇夫
職域理事: 竹内 啓,小林悦夫,山縣純次,
長谷川昂史,森田邦雄
監 事: 原 京平,玉井公宏
顧 問: 中村 寛(元会長)
事務局: 朝日事務局長他
3.来  賓
 獣医師問題議員連盟:江藤隆美・会長(衆議院議員)
 農林水産省:北村直人・副大臣(衆議院議員),伊知地俊一・生産局畜産部衛生課長,小野寺 聖・衛生課課長補佐,谷 義人・衛生課獣医療係長,吉武 朗・経営局保険監理官補佐
 厚生労働省:遠藤 明・医薬局食品保健部長,南 
俊作・食品保健部監視安全課長,桑崎俊昭・監視安全課輸入食品安全対策室長,道野英司・監視安全課課長補佐,加地祥文・健康局結核感染症課情報管理室長,中嶋
建介・結核感染症課課長補佐,加藤政治・結核感染症課獣医衛生係長
 環境省:小野寺 浩・大臣官房審議官,黒田大三郎・自然環境局野生生物課長,東海林克彦・自然環境局総務課動物愛護管理室長
 社団法人全国家畜畜産物衛生指導協会:今井正夫・副会長
 財団法人全国競馬・畜産振興会:織田信美・管理部長
 社団法人全国動物薬品器材協会:今村隆二・理事長
 社団法人畜産技術協会:山下善弘・会長
 社団法人中央畜産会:中瀬信三・副会長
 社団法人日本獣医学会:佐々木伸雄・常任理事
 社団法人日本動物薬事協会:貝塚一郎・理事長
 社団法人日本動物保護管理協会:鈴木一則・会長
4.傍聴者等 47名
|V .議 事:  
第1号議案: 平成14年度事務事業報告及び決算報告の件
第2号議案: 平成15年度事業計画(案)及び収支予算(案)の件
第3号議案: 平成15年度会費及び賛助会費の件
第4号議案: 日本獣医師会定款施行細則の一部改正の件
第5号議案: 獣医師道委員会委員改選の件
第6号議案: 役員選任管理委員改選の件
第7号議案: 役員改選の件

総会議場(明治記念館)
V .概 要:  
【開  会】
 事務局から出席会員数が定足数を満たしており,本総会が成立する旨が報告され,開会する.
【会長挨拶】
 五十嵐会長から大要次のとおり開会挨拶が行われた.
 〔社団法人日本獣医師会 五十嵐幸男会長〕

五十嵐幸男会長
  皆さん,こんにちは.今日は日本列島,梅雨の季節で足元の大変悪いところを各地からご参集いただきまして大変ありがとうございます.冒頭厚く御礼申し上げます.なお,今回の総会に際しては政務,きわめてご多忙のところ,日頃より尊敬しております江藤隆美先生,北村直人先生をはじめ,農林水産省の他,関係官庁から多くの方においでいただいておりますし,また中央畜産会はじめ,日本獣医学会等の友好団体からも役員の方にご出席いただいております.誠にこの総会に錦上,花を添えていただきましたことに感激しております.
 皆さん,ご承知のとおり,世相は北朝鮮の拉致問題,あるいはイラク復興における自衛隊の派遣等,種々の問題がございますが,われわれは政府を信頼しながら,自らに与えられた任務に邁進することが大事であると考えております.BSE発生以来,やや世情が不安定でしたが,政府の懸命なるご努力,あるいはわれわれの積極的な対応等が実を結び,鎮静の方向にございますが,ご承知のとおり一方においては,SARSが中国大陸で発生し,初動の遅れ,国情の問題等により,中国人社会を巻き込みながら香港,台湾,シンガポール,ベトナム,カナダにまで蔓延しており,日本にも上陸が心配されているような昨今ですが,近く厚生労働省では指定感染症の指定も検討されていると仄聞しております.われわれも人と動物の共通感染症の暴発に対しては寸時の偸安を許せない状況にあるということは,いうまでもありません.
 狂犬病予防法の問題にしましても,都道府県業務の市町村への事務移管以後,狂犬病予防注射の注射率が低下しているという残念な現実もございます.要するに動物に免疫をつくり,人間の生命を守るという,国家防疫としての尊い仕事ですので,各県今まで以上にそれぞれの関係機関と連係をとられましてご努力をお願いいたしたい.われわれも中央官庁等のご指導を得ながら対応に努めたいと考えております.このような狂犬病をはじめ,新興感染症がいかなるとき発生するやもしれない状況下ですので,われわれはBSEの発生時における尊い教訓を踏まえながら,あるいは口蹄疫の発生時の尊い体験を思い起こしながら,万全を期していきたい.そのためにわれわれの意識を高めるということで,生涯研修事業を重点的に推進しておりますが,3年間の試行期間を経て,本年度から本格的実施移行したところですので,これにつきましても地方獣医師会長から種々ご指導いただきたいと思います.
 このような状況下におきまして,政府ではご承知のとおり,食品安全基本法を制定されると同時に7月1日から,われわれは「七人の侍」と申しておりますが,7人の委員から構成される食品安全委員会の設置に際しては,江藤先生をはじめ谷津先生,北村先生等の絶大なるご援助により,獣医師1名が委員に選任されました.これはわれわれにとって大きな責任が生じていることと感じております.また,委員会の傘下にも各科の小委員会ができるようですが,そこへも多くの獣医師が参画され,ご活躍いただくという方向で対応されることと思っております.
 また,このように景気が低迷し,日本中央競馬会の収益も落ち込んでいる時代に,農林水産省あるいは全国競馬・畜産振興会のご理解によりまして,多大なご支援,大型事業をいただきました.本年から3年,あるいは5年間の事業,主として,われわれ獣医師への食の安全確保,共通感染症あるいは新興感染症等に対する知識の普及,研修等の事業,このための経費ですので,各地方獣医師会においても積極的に取り組んでいただき,会員の士気を高め,期待される社会に対してしっかりした獣医療を提供していく,このようなことが望まれる時代と私は感じております.
 国立大学の再編整備についても,先般,懇談会を開催した際には,江藤先生にもお忙しい中,ご出席いただきまして積極的なご助言をいただいております.なお,細部については大森専務理事からもご報告を申しあげますが,学校飼育動物についても,普遍的で平準化した取り組み,衛生管理体制等の確立について,関係省のご指導をいただきながら,一層の普及・定着に努めていきたいと考え,新しい執行部では学校飼育動物委員会を立ち上げ,遺漏のないよう対応していきたいと思っております.
 いろいろ申しあげたいこともございますが時間の関係で,後ほど専務から詳細を報告することになっております.本日は誠にお忙しい中,貴重な時間をいただき,このように多くの来賓の先生方においでいただき,心より感謝申しあげます.また,会員の皆様にもこの梅雨の中,多数ご出席いただきました.新しい世紀に,新しい時代に向かって,日本獣医師会のあるべき姿についてご熱心なるご審議をいただけるものとご期待しながら,私の言葉を結びたいと思います.本日は誠にありがとうございました.
【来賓御挨拶(大要)】
 来賓から大要次のおとりの挨拶が行われた.
 〔獣医師問題議員連盟 江藤隆美会長〕

江藤隆美会長
  今日は獣医師会の総会ですから,北村直人農林水産副大臣がご挨拶をされると,私は考えておりましたら,年の順で先に挨拶を依頼されましたので,お許しをいただいてご挨拶をさせていただきます.
 私は宮崎大学農学部獣医科の卒業生であります.しかし,私は優秀な獣医師ではありませんで,とにかく名医,ヤブ,ドテ,それの下.私に一度かかったら必ず家畜は生命の危機に陥るという獣医師でありますから,獣医師でなく,私は政治家に転身しました.地元へ帰りましたら,兄貴が,牛の具合が悪いというものですから,それは早く獣医師を呼べと言いましたら,もう二度と兄貴は私にうちの牛を診ろと言わなくなりました.そのような私ではありますが,不思議と国会に出て行きますと,まるでこの道の大家のように人々がいうものですから,今さら自分で素人になる必要もないと思いながらも,実はひやひやしながら務めております.
 本日はこのような良き日ではありますが,近年は口蹄疫に始まってBSEの発生,それからまた最近は動物を媒体とする妙な病気も流行っています.われわれのまわりではさまざまなことがありますが,過去には魚の診療を依頼されたことがありました.魚に抗生物質を投与して,4,5時間前に餌を与えれば,腐敗を遅らせることができること等も経験しました.その後,私は宮崎大学に水産学部をつくることを計画しましたが,なかなか思うように進まず,水産学科で終わりました.誰が魚病対策を行っているのかと言えば,獣医師であります.しかし,これを専門とする獣医師の方々もいい加減で,庭の池のコイに寄生虫がついたときは,電話すると教授が2人来て,ほうきを持って薬剤を散布したのです.1週間もするとまた訪れました.どうも大学の先生といってもいい加減なものだなと思っておりましたが,それ以上にいい加減なのがこちらですから,その点はお許しいただきたいと思います.
 口蹄疫があのように早く終息しましたが,宮崎あたりでは県警本部まで総動員で協力してくれました.やっと終息したと思ったらBSEでありまして,もう今は話してもよいと思いますが,ちょうど発生した日の明朝に,今度日銀の副総裁となりました財務省の武藤事務次官が訪れてくれました.どうされますかというから,これは農林水産省や厚生労働省に行ったり,財務省と話をしていたら,とてもじゃないが間に合わない.とにかくこれを乗り切るには,大枠は5,000億円確保しておく必要があると申しました.このように実はかかりましたが,皆さんのご協力をいただいてやっとこれを乗り切ることができました.
 できたけれども,そのなかには反省点がいくつもあるのです.獣医学科が大学にいくつもありながら,全部北海道に持っていかないと,その病性鑑定ができない.こんなに愚かな話はない.そうしてやっと終わったら,OIEの本部から女性の獣医師が来ました.ちょうど私の娘のようなものです.しかし,彼女は厚生労働省,農林水産省への対応のためにOIEの本部から来たわけです.なぜわざわざ外国から女性の獣医師が来るのか.日本は国際的に認められていないということです.
 ちょうど大学制度も来年から変わるわけですから,大雑把に言わせてもらえば,北海道,東北で一つ,それから関東,近畿,中部で一つ,九州,中国,四国で一つ,基幹獣医大学を設立するとよい.そうでなければ4年制だったのを6年制にしたけれども,ただ4年を6年にしただけで教官も増えなければ,設備,予算も増えない.そのようなことでは将来学ぶ学生が国際的に胸を張って歩けない.私などは同窓会長ですから,自分の母校がなくなるということになりますが,これから学ぶ者のための学問ですので,大所高所から考えて,三つくらいの大学に大学院まで設置してはどうでしょう.
 医師と同じように6年間学んで国家試験を受けて,そして地方の保健所の所長にもなれない.そんな話がどこにあるのですか.獣医師の給与表の問題が問われて,ずいぶんと久しくなりますが,それは国家公務員も地方公務員も獣医職が恵まれた立場にあるとは言えないからです.
 私は初めて県会議員になりまして,県庁OBと同窓会を開いたのです.そうしたら私の同級生が来ないのです.遅れて来まして,お前何をしていたんだと問うと,犬を捕獲していたというのです.狂犬病予防のため,首に針金を引っ掛けて,犬の捕獲していた.そのとき,しまったと思いました.私はバッチをつけて県会議員,私の同級生は県庁にいて,野犬の捕獲.そのことがずっと頭の中に染み込んでいるのです.官庁においては,このような扱いを受けていることは紛れもない事実です.ですから,やはり獣医職は社会的にも十二分に報いられるようにしなければなりません.
 今,五十嵐会長のお話のように,人と動物の共通感染症に関する研修事業等について日本中央競馬会から助成をいただいた.競馬会は財政的に苦しいのによく奮発したと思います.私は有馬記念には毎年行くのですが,5,6年くらい前までは馬券が約800億円も売れていました.今は600億円を切るという状況です.天皇賞でも同様で,このように収入が少なくなるような状況で,いかばかりかは存じませんが,獣医師会に新しい助成を出すようになったということは,日本中央競馬会にも敬意を表します.それだけにやはりすべきことが多くなっています.
 たとえばブロイラー工場でも社内獣医師は使いません.そのようなことはやめたらよいのです.それなら病院だって院長以外の医者は使えません.もっとお互いに社会的地位の向上を図る.それにはやはり大学教育を充実する.そして給与表等,あるいは職域等も,高齢の医師でなければ保健所の所長に就けないような現状を改める.医師にもいろいろな人がいるから,決して名医ばかりではありません.だから堂々と獣医師が,日本の経済社会の中で生きていけるようにしなければなりません.
 このようなことも考えまして,さきほども北村副大臣と話をしていたのですが,近々適当な機会に獣医師問題議員連盟の総会を開いて,会長さんはじめ皆様にもおいでいただき,今日もいろいろご意見のあるところでしょうから,それらの問題を一つひとつ片付けていきたいと思っております.関係官庁も農林水産省だけでなくて厚生労働省も,近頃は環境省も対応されるようになりましたので,三つの役所が縄張り争いをするのでなくて,三つの力を合わせてより前進するためには,いろいろと擦り合わせが必要でしょうから,そのようなことにこだわりのない,われわれ議員連盟の国会議員が汗をかくべきことではないかという気がいたします.
 いずれにしましても,後ほど北村副大臣から農林水産省を代表してのご挨拶もあろうと思いますし,それぞれ厚生労働省,環境省からもご挨拶があると思いますが,私は大変申しわけありませんが,同じ時間に山中貞則先生が会長をしている子牛価格安定基金協会の総会が開催されておりまして,そちらでも,ご挨拶をする予定になっております.ご挨拶のみで大変失礼しますけれども,お許しをいただきたいと思います.今日の総会が成功裏に終わりますように,お祈り申し上げてご挨拶といたします.