五十嵐 幸 男
 日本獣医師会会長


  本日は,要務ご繁忙の中,この式典にご来賓をはじめ,多くの関係者各位のご臨席をいただき厚くお礼申しあげます.

 また,永年の狂犬病予防業務への貢献により,晴れて表彰を受けられる皆様に対しまして心からお祝いを申しあげます.

 さて,今さら申すまでもなく,狂犬病は,人を含め,ほとんどの哺乳動物が感染する致死性の人獣共通感染症であります.日本は,今でこそ世界でも数少ない狂犬病の清浄国となっておりますが,戦後の混乱期には狂犬病が猖獗を極め,多くの尊い人命が失われました.わが国が本病の撲滅に成功したのは,昭和25年に施行された狂犬病予防法に基づき,官民が一体となって徹底した発生予防,まん延防止対策を講じてきた結果であります.

 加えて,わが国が昭和32年以降現在まで清浄国としての地位を保っているのは,本法がいかに優れて機能してきたかを証明するものと言えましょう.そして,これらの成果は,先人の残された偉大な業績として,わが国が誇りとするところであります.

 一方,わが国で92年間発生のなかった悪性家畜伝染病である口蹄疫が本年3月に発生しましたが,幸いにも6月には関係者の懸命なご尽力により無事終息いたしました(9月27日OIEの委員会議で清浄国復帰が承認).誰しもが予想だにしなかった口蹄疫の発生を目の当たりにし,獣医公衆衛生関係者が最も恐れている狂犬病のわが国への侵入という最悪のシナリオだけは,なんとしても防がなければならないと考えるのは,一人私だけではないと考えます.

 狂犬病の侵入を未然に防止し,一般市民が家族の一員である犬,猫等の動物と何の心配もなく接することができる環境を守ることは,私ども獣医師の大きな社会使命であることをこの際しっかりと心に刻みつけなければなりません.

 狂犬病予防法制定50周年というこの節目を迎え,獣医師会といたしましても,心を新たにして,狂犬病予防の一層の推進を図って参る所存でありますので,今後とも関係者のみならず,広く社会のご理解,ご協力を賜りますよう改めてお願い申しあげる次第です.最後になりましたが,ご参会の皆様のご理解,ご協力を賜りますよう改めてお願い申しあげる次第です.最後になりましたが,ご参会の皆様のご健勝と今後ますますのご活躍,ご発展を祈念いたしまして,私の挨拶にかえさせていただきます.


◎来賓祝辞


谷 洋一 農林水産大臣
(松原謙一畜産局衛生課長代読)


  本日ここに,狂犬病予防法施行50周年記念式典が挙行されるに当たり,一言お祝いの言葉を申し上げます.狂犬病予防法は,戦後深刻な状況にあった狂犬病の発生を予防し,公衆衛生の向上と公共の福祉の増進を図るため,昭和25年に制定されたものであります.その後,幾多の困難に対処しながら,半世紀を経過し,今日,我が国における狂犬病の完全な撲滅に成功されたことは世界にも類をみないところであり,本病の撲滅に御尽力されてこられた関係者各位に対し,深く敬意を表するものであります.

 狂犬病の発生予防につきましては,農林水産省といたしましても,有効かつ安全な狂犬病予防液の円滑な供給を始め,イヌの輸出入検疫,獣医事行政の的確な推進等により,鋭意努力を重ねてきたところであります.本年1月からは,「狂犬病予防法」の一部改正により,ネコ,キツネ,アライグマ,スカンクといった新たな動物種についての輸入検疫を実施しており,狂犬病の侵入防止に万全を期しているところであります.今後とも,これらの施策を通じ狂犬病について国内の清浄性を維持していくためには,本日ここにお集りの皆様をはじめ,全国の関係各位の御協力,御支援を賜ることが必要であることは申し上げるまでもございません.

 一方,最近における家畜衛生の状況についてみますと,国内における急性の家畜伝染病の発生は,近年,比較的平穏に推移してきたところですが,本年3月には我が国では92年間発生のなかつた口蹄疫が確認されました.今日のように国際化が進展する中で,国内の清浄性を維持することの難しさをいまさらながら痛感しているところであります.今回の口蹄疫については,幸いにして,関係者各位の御努力により,発生からわずか半年で再び清浄国に復帰することができましたが,国際貿易の進展に伴い,海外から人や家畜の伝染性疾病の侵入機会が増加しているところであります.このため,粗飼料を介した家畜伝染病の侵入防止対策の強化,大規模経営での家畜伝染病の発生時におけるまん延防止措置の強化等を主な内容とする「家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案」を今臨時国会に提出・御審議いただき,去る11月16日に成立をみたところであります.

 このような中で,皆様方におかれましては,家畜伝染病でもある狂犬病の発生予防を通じて,我が国家畜衛生の向上による我が国畜産の振興につきましても,格段の御協力,御支援を賜りますようお願い申上げる次第であります.

 最後になりましたが,本日の式典の開催の労を取られました厚生省ならびに日本獣医師会に対しまして敬意を表しますとともに,御参集の皆様方の今後ますますの御発展と御健勝を祈念いたしまして,私の祝辞といたします.