三塚 博
獣医問題議員連盟会長
日本の狂犬病予防対策は,申すまでもなく,昭和25年8月に公布,施行された狂犬病予防法に基づいております. この法律は,第2次世界大戦後間もない時期,国内で狂犬病が猛威をふるい,犬等の動物ばかりではなく,人にも多くの被害が及んだことから,当時,衆議院議員であり,また獣医師でもあった原田雪松先生が積極的にご尽力され,議員立法として制定されたもので,まさに原田先生が我が国の狂犬病予防の礎を築かれたのであります. 爾来,獣医師をはじめ,公衆衛生行政・家畜衛生行政関係者が一丸となって法に基づく予防対策を積極的に講じた結果,昭和31年の神奈川県下における発生を最後として我が国は狂犬病の清浄化に成功したのであります. このことは,今なお世界の多くの地域で狂犬病が発生していることにかんがみますと,日本の公衆衛生行政の優れた成果として大いに誇ることができるものであります.しかしながら,我が国が狂犬病清浄国となって40有余年を経た今日,その病態を実際に知る者は,医師はもとより,獣医師においてもごく僅かであると言っても過言ではありません.また,我が国で狂犬病が再発生しないとは誰しも断言できないのであります.どうか,関係者の皆様におかれましては,この輝かしい50周年を節目に心新たにして常に研鑽に努められ,今後とも狂犬病予防の万全を期されるようお願い申し上げまして,私の祝辞とさせていただきます.本日は,誠におめでとうございます.
しかしながら,現在世界の数多くの国々で,狂犬病は発生しており,昨年5月には,隣国の韓国において,狂犬病に感染した男性の死亡事例が報告されております.また,本年3月と5月,宮崎と北海道で牛の法定伝染病である口蹄疫が我が国で92年ぶりに発生したことを考えあわせましても,海外交流が盛んな今日においては,我が国にも狂犬病侵入の恐れがあるといっても過言ではない状況にあります. このような状況のもと,本病の発生及び蔓延を防止するために,国として,予防業務の推進に努めているところではありますが,何と申しましても,予防業務の推進には,第一線でこれらの業務に当たられる皆様方の御努力に負うところが大であります.ここに,狂犬病予防業務のために,日頃努力されている皆様方に対し,深く敬意を表しますとともに,今後とも一層の御尽力を賜りますようお願い申し上げまして,私の祝辞とさせていただきます. |
![]() ![]() |