7．日本への狂犬病侵入の可能性 　 日本国内では狂犬病が根絶されたとはいえ，周辺の国々で狂犬病の発生が続いている以上，何らかの経路で日本に狂犬病が侵入する可能性は否定できない．国内で発生する可能性が高いものから列挙すれば， 狂犬病常在地で感染を受けた旅行者などが帰国後に狂犬病を発病する，ヒトの輸入狂犬病， 狂犬病常在地で感染した動物が日本に輸入ないし密輸されたのちに発病する，動物の輸入狂犬病， 日本国内の動物が，輸入や密輸された狂犬病動物に咬まれて起こる輸入狂犬病からの2次感染， 輸入狂犬病動物が発生源となって起こる狂犬病の再流行などである． 8．生物兵器としての狂犬病 　欧米では狂犬病生ワクチンを入れた餌を空中から散布してキツネやアライグマの狂犬病予防を行い，成功を納めている．この成功は，弱毒狂犬病ワクチン株の代わりに，強毒ウイルスを餌に入れて空中散布すれば，思い通 りの地域に狂犬病の流行を発生させることもできることを教えている．狂犬病ウイルスは大量 殺戮の目的には適さないが，実の子のように愛情を注いでいた伴侶動物をある日突然悪魔に変身させて，人々に多大な心理的動揺を与える．したがって，上記の技術を悪用して社会的混乱を起こそうとする集団が出ないとも限らない．