1998年にはスカンクの狂犬病が増加しているが,その主因は,スカンクが狂犬病の支配的な陸生宿主である中央平原部や中西部の諸州において,狂犬病に感染したスカンクの報告数が増加したことにある(1997年には943例であったが,1998年には226例増えて1,169例となっている).アライグマの狂犬病が流行している州でのスカンクの狂犬病の報告数については,ほとんど変化が見られなかった(1997年には1,097例であったのに対し,1998年には6例増えて1,103例となっている).アライグマの狂犬病が流行している地域で,狂犬病に感染したスカンクの報告数の増加が5例を超えている州は,マサチューセッツ州(1997年の133例に対して1998年には248例),ニュージャージー州(36例に対して62例),ロードアイランド州(27例に対して68例)だけであった.マサチューセッツ州(アライグマ187例に対してスカンク248例)とロードアイランド州(アライグマ29例に対してスカンク68例)では,狂犬病のスカンクの報告数がアライグマのものを上回っていた.スカンクの狂犬病がアライグマ型の狂犬病ウイルスの流行と関係しているのではないかという可能性も指摘されている.というのも,狂犬病のアライグマに比べ,狂犬病のスカンクのほうが不釣り合いなほど報告数が多かったからである.だが,スカンクとアライグマの狂犬病の報告は時間的にも地理的にも重複しているため,この問題の検証は今後も困難と思われる. 各種コウモリにおける狂犬病の発生頻度は,陸生の宿主と同様,時間的な変動を示す.だが,人に感染した狂犬病の原因として,コウモリ型の狂犬病ウイルスの割合が近年異常に高くなっていることが一般に知られてきているのは確かで,公衆衛生当局がコウモリとの接触で狂犬病になるおそれがあるとの忠告を一般に公示しだしていることもそれに大きく貢献している. げっ歯目およびウサギ目の狂犬病は,主としてその地域の陸生宿主からの飛び火感染によるものである.このグループの動物の報告の多くはウッドチャックのケースで,アライグマの狂犬病が流行している地域でみられる.1998年には,メリーランド州において,捕らえられ外の檻で飼われていたウサギ(O. cuniculus)が狂犬病に感染したケースが2例報告されている.このようなケースは,げっ歯目やウサギ目のなかでも,特に大型の動物や檻に入れられた動物などは,感染してから死ぬまでのあいだに他の動物に危険を及ぼす可能性があることを示唆しているa). 1998年には,ハイイロギツネや犬やコヨーテの狂犬病の流行を阻止するプログラムの一環として,経口型狂犬病ワクチンの追加投与(V-RG;41,000平方マイルを超える地域に260万個の餌を散布)も実施されている.一方,イヌ科型の狂犬病ウイルス(テキサス州原産)に感染した動物が人の手によって運ばれたケースもいくつか報告されている.それらのケースでは,閉鎖的な環境に置かれた動物が感染したり,目的地で動物を解き放す前に感染がみつかったりしている.だが,いずれのケースでも,迅速な対応によってウイルスの定着や拡大は防がれた. |