以下,本書の項目をあげ,そのいくつかについて原点との比較,考察を加える.黄牛・青牛・黒牛,牛中王相,黄旛牛,孝頭牛相,蒿背牛相,鹿斑凶相,喪門牛相,龍門牛相,白胸牛相,牛診脈之法,牛頭貼地,鼻有汗乾,鍼灸穴法之圖・鍼を用ゆる法(註:原典32穴に対し,本書は36穴,しかも,順番もしくは使用字の違いがある.これで治療に違和は生じなかっただろうか,治療の基本の間違いである.原典にはないが,本文には“……術を誤るもののために又圖像を具へて便覧に便りす穴法病症を誤る事なかれ”と記している),母牛相法療薬併圖(含母牛孔紅),難産仲臍(含胎たる牛瘴,四時の胎瘴),轉胞之牛,吐涎吐糞,食役紫役(註:原典役の字は疫*以下同じ.紫は柴)打肋腸結,乾役肚脹,眼膜蟲脹,生疥,焦毛漏蹄,牛前後,冷咳嗽(註:は顫),経喉悪気,非時中悪,頭黄心黄,暑熱中悪,膝冷肺病,時有瘴役,壅熱風毒,百葉乾燥,肩上生廱,暑月暈悶,牛熱(註:読みはギュウネツである.症状記載なし,吐瀉・下痢の図.20種類の薬,ただし量 なし),牛力病,瘴疫牛,舌生瘡,張口病,狂走,回頭斜走,痩病,四時牛瘴を治するの方(地龍散など20数処方を列挙),採薬吉日を選擇(註:本項目は原典にはない.むしろ本邦独自の日占いのように思われる),飽困肺を傷り,中困しく頭を濕地に懸け,五臓六腑刀にて傷るに,肝を病る者,膀胱に病あるは,肺の病を得るは,五臓積熱喘急,心の病を得る者,喉中出気吼声頻,熱積久しく脳中に聚り,渾身血出水草常のごとく,草気を傷り脾胃和せど,胆脹之牛病軽からず,熱小脹に入る,水臓を傷れば,肺病多くは,肚脹多くは,野山草乾るる頃,脾胃寒冷なり,渾身発熱眼赤く,渾身瘡疥ありて,冷気脾胃を攻め,四肢弓に似,暑に傷られ,肺家の風病,瘟疫を患ふるは,胆脹を患ふるは,■■を生じ,雙脚彎り,木舌(口塞りて鉄條に似たり肚の中飢痩し水漂乃ごとくなるを治す 牙消散.とあり,薬品も原典そのままの訳.鉄條とはなにか),蕩を患ふるは,水草通せず(タイトルのみ,後に全文),結喉を患れば,膊肢風病,交脚風病,雙膊腫れ痛で,気怯く頻に地に臥,虫(ママ)子耳へ入り,便血は皆牧養乃飢飽,蕩を患ふるは(前出重複),腰■り疼み,発熱して喉の骨腫れ,発熱して(前同重複),水草通せず(全文記載)膊腫れ行難く,胞虚胃水便,仙傳海上方(薬種名・薬方・など十数種),巻末(図4)に広告(日用療馬醫便,馬治療調法記,牛科撮要(本著者の所蔵版は大阪心斉橋筋淡路町梅林堂嶝口太兵衛)および版記(前述のとおり,同時期に数箇所の版元から出版され,さらに筆写してまで使用するほどの必要性があったと考える)があり終了.

註)原典中の表示できない文字(旧字等)を■で表示してあります。


図4