組み換え生ワクチンの製造承認までのハードル

  ポックスウイルスやヘルペスウイルスをベクターにした組み換え生ワクチンが野外で利用できるまでには,その安全性と有効性について4つの試験項目が求められている.まず,(1)科学技術庁の定める「組み換えDNA実験安全指針」の下で「閉鎖系実験」を行い,ワクチン候補株の動物に対する安全性と有効性を調べる.実用化が念頭であれば,農水省の承認を受けた組み換え体培養施設で試作ワクチンを製造し,その性状も調べておく必要がある.(2)良いワクチン候補株が得られた場合は同庁の指針の下で「非閉鎖系実験」を行い,より詳細にワクチンの動物に対する安全性と有効性を検討する.(3)これらの成績も良好で産業利用を本格的に検討したい場合は,「農水省動物用組み換え体利用指針」の下で「限定的開放系実験」を実施し,環境に対する安全性を確認することになる.この実験の実施許可と審査を担当するのが中央薬事審議会バイテク特別 部会である.(4)これらの成績がすべて良好であれば「開放系試験」,いわゆる「治験」へと移る.この実施許可と審査を担当するのが中央薬事審議会バイテク特別 部会と同審議会動物薬部会ならびに都道府県である.項目(4)でも良好な成績が得られて審議会で製造承認されれば,組み換え体としての規制を外れ一般 のワクチンと同様に製造し野外で利用できるようになる.組み換え生ワクチンの利用までに求められている上記4つの試験項目の中で,現行ワクチンに新たに加えられた項目は(2)と(3)であり,項目(1)でも閉鎖系施設で開発することおよび一般 の施設とは異なる組み換え体培養施設で試作ワクチンを製造することが,また項目(4)でも同審議会バイテク特別 部会で審査することが求められている.現在日本で審議が最も進んでいる牛白血病の組み換えポックスワクチンでは審議が項目(3)に入ろうとしている段階である.