最後に―市民のコンセンサス 組み換え植物では米国で生産されたものが日本でも利用されているが,その表示については1999年8月10日に農水省案が発表され2001年4月からその法律が適用されるようだ.組み換え植物は栽培しやすく,安価,高生産,低農薬などの利点を持つものの,それを長期間利用した場合に人間や環境に予期しない害をもたらす可能性を誰も否定できない.じっくりと時代の評価を待つしかないだろう.動物用組み換え生ワクチンについても同じことがいえる.ここで紹介した組み換え生ワクチンはウイルス学的には親株である現行ワクチンと同等あるいはそれより安全と考えられるが,あらゆる角度からみてまったく安全だと断言することはできない.組み換えワクチンの有効性や安全性の議論を始めるためには,まず組み換え植物のように優れた組み換え生ワクチンが必要である.その安全性と有効性は実験室レベルの試験でわかることが多いが,野外試験で調べなければわからないこともある.そして,野外利用されて初めて,生産者,消費者,ワクチン会社,家畜衛生関係者,食品メーカー,行政などを交えた広い議論が始まるのであろう.この組み換え生ワクチンの有効性や環境への影響が本当の意味で明らかにされるのは野外である程度広くある期間以上利用されてからであろうし,人体に対する安全性について市民コンセンサスが得られるのは長期利用によって安全性が確認されてからのことになろう. |
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