牛・豚のヘルペスウイルスベクターワクチン

  牛では牛伝染性鼻気管炎ウイルスベクターが,豚ではオーエスキー病ウイルスベクターが開発されているが,感染実験でその有効性が確認されたものは少ない.牛伝染性鼻気管炎ウイルスベクターに口蹄疫ウイルスのVP1蛋白を発現させたもので牛での抗体誘導が[3],またオーエスキー病ウイルスベクターに豚コレラウイルスのE1蛋白を発現させたもので豚での発症阻止が報告されている[14].しかし,これらが十分なワクチン免疫とは考え難いので,鶏ヘルペスウイルスベクターのように今後の改良が必要であろう.

アジュバントとしてのサイトカインの利用

 サイトカインをウイルスベクターに発現させ,組み換えワクチンの効果を高めようとする取り組みはおもにワクシニアウイルスでマウスを用いて検討された[4].その概略は以下のとおりである.細胞性免疫に働くTh1系のサイトカイン(IL-2,IL-12,IFN-gなど)を抗原と同時に発現させるとウイルス増殖初期には一時的に細胞障害活性が高まり,その結果 ポックスウイルス自身の増殖も抑制されるため全体としてみると顕著な免疫増強は得られていない.一方,液性免疫に働くTh2系のサイトカイン(IL-4,IL-5,IL-6)を抗原と同時に発現させた場合は抗体産生は高まるものの,逆に細胞障害活性が抑制され防御効果 が低下した例が多い.鶏ポックスウイルスの成績でも今のところその範疇を出ていない(表6).ヘルペスウイルスベクターではどうなるかについては今後の検討課題である.
  組み換えトリアデノウイルスの報告は現在までのところ,IBDVのVP2を挿入したものに限られる[8].この系では,接種ウイルス量 が多ければ現行IBDV生ワクチンに匹敵する高い免疫が誘導された.