次世代ワクチンの条件次世代ワクチンは将来有望視されているが,現行ワクチンよりも優れたものでなければ実用化は難しい.現行ワクチンの特徴をつかむことで乗り越えなければならない高いハードルを再確認してみよう.現行ワクチンは予防効果の点では優れているが,(1)副作用が強い(生ワクチン,オイルアジュバントワクチン,細菌病不活化ワクチンなど),(2)ワクチン効果が長く持続しない(複数回投与).そして,生ワクチンでは(3)病原性や抗原性の変異を起こす,(4)移行抗体の影響を強く受けるなどの問題点がある.したがって,これから開発される次世代ワクチンは現行ワクチンに匹敵またはそれ以上の効果を備え,かつこれらの問題点のいくつかを克服するものでなければならない.一方,次世代ワクチンに期待が寄せられている分野もある.(1)従来の技術では開発が困難なワクチン,(2)従来の技術では高価なワクチン,(3)緊急開発を要するワクチンなどがそれである. 次世代ワクチンの候補それでは,実際にどのようなワクチンが家畜用次世代ワクチンの候補なのか.研究面ではいろいろな取り組みが行われているが,その候補を私なりに3つに絞ってみたい.(1)1つはサブユニットワクチンである.感染防御抗原が明らかな感染症であれば,これを酵母,バキュロウイルスなどで発現させ,有効なアジュバントとともに投与すれば現行の不活化ワクチンに匹敵する効果が期待される.サブユニットワクチンは安全性が高いので,副作用が強い細菌病ワクチンおよびワクチンが未開発の寄生虫病ワクチンの分野での開発が望まれる.(2)2つ目は遺伝子改変生ワクチンである.TK遺伝子を欠損させたオーエスキー病生ワクチン,莢膜を欠損させた豚丹毒菌生ワクチン[9],VP5蛋白を欠失させた伝染性ファブリキウス嚢病(IBD)ウイルス(IBDV)[13]がこれにあたる.これらのワクチンは従来の生ワクチンに匹敵する高い予防効果に加え,より安全で短期間にワクチンを作出できる利点がある.(3)3つ目は組み換え生ワクチンである.従来の生ワクチン(ワクチンウイルスなど)をベクターにして,他の病原体の感染防御抗原も同時に発現させた多価ワクチンは省力化と動物に対する安全性の点で優れているが,現在までのところその予防効果は現行生ワクチンには及ばない.しかし将来,高い予防効果を導入する技術が開発されれば最も期待できる次世代ワクチンとなろう. |
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