4)HACCPシステムの定期的検証による衛生管理計画の改善とその継続
  日常の衛生管理は,各作業工程の担当者がまず一般的衛生管理プログラムがSSOPにより確実に実施されていることをチェックして衛生的な作業環境が確保されていることを確認してから,HACCPプランあるいはCCP整理表に記載された衛生管理事項を機械的に行う.CCPで計画的に,できるだけ頻繁に管理基準をモニタリングして,その結果を決められた文書作成要領に従って記録し,もし管理状態に異常が認められた時には速やかに改善措置を講じる.決して,独自の判断で行動してはならない.
  一方,HACCP専門家チームは衛生管理が適切に機能しているか否かの検証,記録文書の保管,衛生管理に不備が認められた時のプランの見直しを行い,施設に一層適合したプランの改善,さらには外部からの査察に対応する.検証の頻度はシステムの有効性を十分に保証できることが必要である.原材料や最終製品の変更,製造加工および保存条件の変更などの時にもHACCPプランは変更・修正しなければならない.HACCPシステム導入の目的は,衛生管理計画の維持とそれの検証による見直しと修正を継続的に繰り返すことにより,一層安全性の高い食品を生産していくことである[3].したがって,的確な検証が行われなければ合理的な衛生管理と安全な食品の生産は望めないし,HACCPシステムを導入するという意味がない.

お わ り に

  畜産食品の安全性を確保するには,HACCPシステムを導入した衛生管理が最も効果的とされており,導入の前提として家畜の飼育農場においてはGAP, と畜場や食品の製造加工施設ではGMPの確保が必要となる.これらの一般的衛生管理プログラムが確保されていなければ,単に7原則を盛り込んだHACCPプランを作成してみても,畜産食品の安全性確保の目的を果たすことはできない.わが国では,GAPあるいはGMPという確固たる作業手順は定着しておらず,そのためにHACCPシステムの導入を困難にしているのが現実である.また,HACCPシステムの管理対象はなんといっても病原微生物である.したがって,システムの構築には食品衛生上問題となるすべての微生物について,それらの特性,疫学,さまざまな取り扱い条件下における挙動などに関する情報やデータ,さらにはそれらの制御技術について幅広い知識を有する人材の確保が欠かせない.HACCPシステムは食品の衛生管理の概念そのものであり,少しでも人災による食品事故の発生を減少させて,食品の安全性を高めていこうとするシステムである.今後,このシステムの考え方が家畜の飼育農場,食品の製造加工施設,流通,最終消費者にいたるあらゆる段階で普及し,微生物事故防止の三原則である“汚染させない”,“増やさない”,“死滅させる”が“農場から食卓まで”一層確実に保証されることを期待したい.