(2) 各CCPにおいて危害を制御するための管理基準を設定[手順8:原則3]
  各CCPにおいて,危害リストの防止措置欄に示された数値および危害分析の際に得られたデータにより科学的根拠に基づいた管理基準を設定する.管理基準とは「危害を管理するうえで許容できるか否かを区別するための基準」であり,管理基準を逸脱した場合は危害発生の可能性があり,絶対に越えてはならない基準である.したがって,食品生産者が現場で実施する工程管理では,管理基準よりも厳しい基準(工程限界:operating limit)を設定することにより衛生管理に余裕を持たせるべきである.基準はリアルタイムで判断できる必要があるため,微生物の増殖や死滅に直接関係があるか相関性の高い温度/時間,湿度,水分活性,pH, 食塩濃度などの物理学的あるいは化学的パラメータおよび官能的基準を採用する.
  (3) 管理基準に対応するモニタリング方法を設定[手順9:原則4]
  モニタリングは,各CCPにおいて管理基準を満たしていることをリアルタイムで確認するために行われる.全数検査に相当する作業であり,理想的には連続式が望まれるが,バッチごとあるいは定期的に行うような時には,その回数や頻度はCCPが正常な管理下にあることを十分に保証できる必要がある.したがって,微生物検査よりも迅速で正確な物理学的,化学的または官能的な方法が採用される.たとえば,加熱処理のような場合は管理基準の温度と時間を自記温度計を用いて,経時的にモニタリングすることが望ましい.あらかじめ,モニタリングの頻度,手順,記録方法,担当者を明確にしておかなければならない.
  (4) 管理基準から逸脱が認められた時の改善措置を設定[手順10:原則5]
  改善措置とは「モニタリングにより管理基準を逸脱した結果,CCPが適切に管理されていないことが認められた時に講じる措置」である.そのため,逸脱原因を迅速かつ的確に排除してCCPの管理状態を正常状態に戻すとともに,逸脱時に生産された製品を特定し,その取り扱いをどうするかをあらかじめ決めておく必要がある.また,HACCPプラン作成時に想定しなかったような事故が発生した場合のために,逸脱発生時の緊急連絡体制,原因究明の手順と担当者なども決めておく.
  (5) HACCPシステムの有効性を確認するための検証手順を設定[手順11:原則6]
  検証とは「衛生管理がHACCPプランに従って行われているか否か,HACCPプランの修正が必要かどうかを判定するために行われる方法,手続き,試験検査」である.食品生産者自身が行う内部検証と第3者機関が行う外部検証がある.検証には,モニタリングや改善措置結果に関する記録の点検,モニタリング作業の適性度の確認,原材料,中間製品および最終製品の試験検査,モニタリングに用いる温度計などの測定機器の校正,HACCPプラン全体の見直しなどが含まれる.あらかじめ,検証の方法,頻度,担当者,検証結果に基づく措置,検証結果の記録方法などを明確にしておかなければならない.
  (6) システムに係わるすべての記録の文書化とその保管規定を設定[手順12:原則7]
  HACCPプランとその作成に係わる記録および衛生管理の実施中に得られるモニタリング,改善措置,検証の実施記録についての書式,記載方法および保管方法を設定する.通常,HACCPプランにはCCPの工程のみを示すが,一般的衛生管理プログラムに関する事項を含めた“衛生管理総括表”を作成すると衛生管理の全容を把握できる.また,表中には要点のみを記載し,これらの詳細はCCPごとに“CCP整理表”を作成しておくとよい[9].