2.導入の手順
  HACCPプランをCodex委員会のガイドラインに従って作成し[1],これに沿って日常の衛生管理を実施していくが,これらの全体的手順は具体的に次の4段階から構成されている.以下に,食品の製造加工の場合について示す.
  1)HACCPシステム導入の前段階
ガイドラインの手順1〜5に相当し,食品生産施設みずからHACCPシステムを導入するという強い認識を持ち,システム全体を統括する専門家チームを編成して,対象とする食品について危害分析に必要なデータや情報をできるだけ多く収集する.
  (1) HACCP専門家チームの編成[手順1]
対象食品やその製造加工について幅広い専門的知識と技術を有する者から構成されるHACCP専門家チームを編成する.チームリーダーには施設の最高責任者またはそれに準ずる発言権のある実行力に富んだ者がなり,HACCPプランの作成とそれによる衛生管理に関わるすべてを統括する.
  (2) 対象食品とその原材料の明確化[手順2]
対象食品について,使用する原材料の種類,最終的製品の名称と特性,包装形態,製造加工,保存,流通および調理条件などを明確にする.
  (3) 意図する用途と対象消費者の確認[手順3]
対象食品について意図する用途および消費対象が一般健康人,幼児,老人,病弱者のいずれかなどについて確認する.
  (4) フローダイヤグラム(製造加工工程一覧図)の作成[手順4]
原材料の収受から最終製品の出荷にいたる食品の一連の流れを順を追って記載したフローダイヤグラムを作成する.なお,同時に食品と作業員の動線などを示した施設内見取り図を作成するとよい.
  (5) フローダイヤグラムの現場確認[手順5]
フローダイヤグラムが実情を示しているか,また一般的衛生管理プログラムがSSOPにより確実に実行されているかどうかなどを実際の作業現場で確認する.
  2)危害分析により危害リストの作成
ガイドラインの手順6,すなわち原則1に相当する.危害リストとは「危害分析の結果を集約したもの」で,フローダイヤグラムに沿って危害の発生する恐れのある工程,それらの工程における危害,その発生要因および防止措置が一覧表に示されている.危害分析には多くの情報やデータの収集・解析,ブレインストーミング(集団思考)の実施,適切な危険度評価が重要である.危害分析で必要とする情報およびデータは,前記手順2〜5で収集した生原材料,中間および最終製品に関するデータ,製造加工データおよび各種の疫学的および微生物学的データである[8].危害リストは,食品の種類,製造加工工程,施設ごとに次の5つの手順に従って作成していく[6].
  手順1:原材料および包装資材などについて,最終製品の摂食により危害となる可能性のある因子を具体的に列挙する.
  手順2:フローダイヤグラムに沿って,各工程において発生する可能性のある危害の挙動を具体的に列挙する.
  手順3:手順1および2で列挙された危害について,その発生頻度と発生した時の重篤度から危険度を評価し,特に重要な危害を特定する.
  手順4:手順3で特定された危害について,発生要因を具体的に細かく明らかにする.
  手順5:手順4で明らかにされた危害の発生要因を予防,排除または許容レベルに収めるための防止措置について,その方法や条件を具体的に細かい数値などで示す.