畜産食品の微生物管理と行政対応畜産食品の衛生管理について考える際には,農場から食卓まで(from farm to table)の考え方に基づいて,家畜の生産から最終製品が消費者に消費されるまでの衛生管理について理解しておくことが必要である.たとえば,食肉について,肉用動物の生産農場,と畜場,食肉製品生産工場,販売店,消費者にいたるまでの各過程における微生物管理のおもな要点を表1に示してみた.各過程で共通していえることは衛生的な環境の確保であり,そのうえで生産農場では健康な家畜の確保と病原微生物の保菌防止,と畜場では枝肉の微生物汚染と増殖防止,食肉製品生産工場では製品からの病原微生物の排除と新たな微生物の汚染と増殖防止,販売店では製品の微生物汚染と増殖防止,消費者は購入した製品の微生物の汚染と増殖防止および適切な調理による病原微生物の排除などがそれぞれおもな要点である.
わが国では,食肉およびその製品の安全性を確保する目的で,と殺解体処理については“と畜場法”および“食鳥検査法(食鳥処理の事業の規則及び食鳥検査に関する法律)”,それらが枝肉となり食肉となって以降は,製造加工,販売にいたるまで“食品衛生法”により法的に規制されている.これらのうち,と畜場法では各と畜場の標準的な点検(作業)手順,確認方法などを規定したHACCPシステムの考え方に沿った文書の作成を義務付け,さらに食品衛生法に基づいて食肉の保存基準を規定し,食肉製品ではその製品特性や製造加工方法により成分規格,製造基準および保存基準が細かく規定されている.乳・乳製品も食品衛生法に基づいて成分規格,製造基準および保存基準が細かく規定されており,殻付き卵および液卵についてはHACCPシステムの考え方を取り入れてサルモネラの制御を目的とした基準が定められている.このほか,食品全般の衛生規制として,病原菌,有毒・有害物質による汚染,腐敗・変敗,不潔などの人の健康を損なう恐れのある食品は製造加工,販売,陳列してはならないことになっている.なお,食肉製品と乳・乳製品の製造基準は,HACCPシステムを導入した総合衛生管理製造過程の承認を受ければ,その適用が免除されることになっている[7]. |
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