Rosellら[28]は比較的慢性経過をとった2死亡例の病理学的所見から,PCV-2は豚の鼻・口腔から体内へ侵入し,扁桃や局所リンパ節で増殖した後,他のリンパ組織や肺,肝臓,腎臓へ伝播し,感染の慢性的影響によって免疫抑制,腸炎,問質性腎炎および肝障害が誘導されるとみている.リンパ器官におけるリンパ球の減少はマクロファージおよび抗原提示細胞の感染に関連して,濾胞および傍濾胞域に出現するので,TおよびBリンパ球の欠落によって少なくとも病の後期には免疫抑制が発現すると推測している.これに対して,PMWSの病理発生においてPCV-2と豚パルボウイルスの共同作用を重視しているAllanら[1]は,豚パルボウイルスは豚の免疫細胞で増殖するから,免疫障害を誘導しPCV-2の増殖を促進する可能性がある,あるいはまた,豚パルボウイルスはPCV-2の標的細胞である単核性食細胞系細胞を活性化して,PCV-2に対する感受性を増進させることもあり得るだろうと考察する.
  PMWSの病理発生における二次的感染因子の役割については病因の項で述べた.

診     断

  Rosellら[28]はPMWSの発生歴のある養豚場において発育不良,皮膚の蒼白および浅鼠径リンパ節の腫大を指標にして15頭の子豚を選び出して,病理学的検索,PCVの抗原および核酸の検出を行った.その結果,全例がPMWSに罹患していることを明らかにした.このことはPMWSの臨床症状が特徴的で,診断価値の高いことを示す.生前診断の一手段として血清抗体を証明するために,PCVh2感染培養細胞を抗原とする間接蛍光抗体法[1, 4, 20],免疫ペルオキシダーゼ単層培養法[7, 27]あるいはELISA[13]が応用されており,PCRによって鼻腔ぬぐい液および糞便からのPCV DNAの検出も行われている[21].
  死後診断における病理学的検索はきわめて有用である.肉眼的には全身リンパ節の腫大,肺の退縮不全あるいは固化・緻密巣の形成は本病を強く示唆する.病理組織学的に全身リンパ組織におけるリンパ球の減少,単核性食細胞系細胞の浸潤および多核巨細胞の形成,それら細胞における好塩基性あるいは両染性細胞質封入体の出現を観察すれば診断はほとんど確定的である.診断をさらに確実にするためには,PCVh2特異的抗体を一次抗体として用いる免疫組織染色による感染組織・細胞におけるPCV抗原の証明,PCVプローブによるISHあるいはPCV-2特異的プライマーを用いるPCRによるPCV核酸の証明が行われる[1, 4, 7, 13, 17, 25, 27, 28, 30].感染組織を超薄切片法により電子顕徹鏡で検索して,細胞質封入体内に直径約17nmのウイルス粒子を証明することも確定診断の一助として応用し得る.わが国ではOnukiら[26]よって1998年に山形県で発生した1死亡子豚の臨床的,病理学的,電子顕微鏡的および免疫組織化学的観察ならびにPCR増幅産物の制限酵素切断パターンおよび塩基配列の決定によってPCV-2が同定されている.
  PCVの細胞培養への分離については病因の項に記載した.