防 除 対 策PMWSは初発例発見後まだ日が浅く,その研究は緒についたばかりで,防除対策に関する情報はほとんどない.ワクチン開発は各国で活発に進められているものと推測されるが,恐らく企業秘密に属するため,成果の公表は現在までのところまったく見当たらない.現時点で取り得る対策としてはPCVおよびその感染を増悪させる二次的因子,特に細菌,マイコプラズマおよびほかのウイルスの豚群への侵入を防止するために,衛生管理を徹底し,疑症豚の早期発見による摘発・隔離・淘汰を実施することであろう.PCVはエンベロープのないDNAウイルスなので,サーコウイルス科のほかのウイルスと同様に物理化学的影響に強い抵抗性を有するものと予想されるが,有効な消毒薬は決定されていない. PMWS罹患豚に,抗生物質を投与しても効果は認められない[21, 25, 28, 29].しかしながら,Mycoplasma hyopneumoniaeあるいはPasteurella multocidaの混合感染が疑われるPMWS発生豚群に対して,抗生物質の飼料添加を行ったところ,2週間以内に豚群の死亡率が8%から2%に減少し,4週間以内に呼吸器病の新たな発生が停止したという事例報告がある[30]. あ と が きPMWSが発見されてから8年が経過し,その全貌は次第に明らかにされつつあるが,なお解決しなければならない多くの問題が残されている.PCV-2がPMWSと密接に関連することが証明され,細胞培養に分離されたが,それを感受性子豚に接種しても,PMWSの定型的病変が発現するにもかかわらず,臨床的疾患は再現されない.最近の研究によれば,臨床的疾患の再現にはPCV-2と豚パルボウイルスの共同作用が必要であるという.もしそれが事実であるとすれば,PMWSでは病原と疾患が1対1の関係にないことになる.本稿では便宜上『サーコウイルス感染症』の病名をあてたが,これは不適当であって,PMWSの病名には従来通り『症候群(syndrome)』の接尾語をつけなければならないことになる.PCV-2がいかなる経路で豚体内へ侵入し,いかなる機序で多器官・組織の病変を引き起こすのであろうか.PMWSの比較的慢性的な経過から,それら病変の総和が進行性の削痩や発育不良に導くものと推測されるが,最も特徴的で,PCVh2および二次的感染因子の増殖・侵襲のための基礎的病変と考えられる全身リンパ組織におけるリンパ球の脱落はいかなる機序で発現するのであろうか.早急に解明を要する発病病理の一課題である. 病因論的には,PMWSの発生において主役を演ずるとみられるPCV-2そのものおよび二次的な影響を及ぼすとみられている感染性因子や環境因子をさらに詳細に解析する必要がある. 現時点ではPMWSの病状を複雑化・重篤化させるとされている二次的感染因子を同定し,ワクチン接種や抗生物質で制御する以外には打つ手がないようである. |
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