肺には軽度の多巣状あるいは高度のび漫性間質性肺炎がある.肺胞中隔は肺胞上皮細胞,特にII型上皮細胞の腫大・増生,水腫および細胞浸潤によって著しく肥厚し,肺胞内へは単核細胞,好中球および好酸球が滲出する.一部の肺では気管支・血管周囲性にリンパ球や組織球が浸潤し,時折,多核巨細胞の出現を伴う[13, 25, 28].
  肝臓では門脈周囲のリンパ・組織球浸潤が最もしばしばみられる変化である.洞様血管内の単核炎症性細胞の集簇と肝細胞の単細胞壊死を特徴とする肝炎がある.黄疸により死亡した慢性死亡例では肝小葉周囲の線維化,肝細胞の壊死・消失および単核細胞のび漫性浸潤が認められている[28].
  腎臓には軽度ないし高度の多巣状間質性腎炎があり,主として皮質にリンパ・組織球性細胞浸潤を認める.少数例に腎盂炎や急性滲出性糸球体炎がある[28].
  心臓には多くの例で種々の炎症性細胞浸潤を特徴とする軽度ないし中等度の多巣状心筋炎,胃および腸の筋層には種々の程度の筋炎がある.少数例に非化膿性髄膜脳炎,軽度の多巣状リンパ・形質細胞性副腎炎および各種組織における局所性肉芽腫性血管周囲炎がみられる[7, 13, 28].

免疫組織化学的染色によるPCV抗原の検出

  PMWS罹患豚におけるPCV抗原は,ホルマリン固定・パラフィン包埋切片の免疫組織染色[13, 28]あるいは凍結切片の間接蛍光抗体法[1]によって検出されている.抗原はPMWSの病巣と密接な関係において各種の器官・組織・細胞に広く分布し,PCVが多くの組織・細胞に親和性をもつことが示されている.抗原は通常,核より細胞質に多量に認められるが,その理由は明らかにされていない.
  リンパ組織は検索された全例で強い陽性反応を示し,単核性食細胞系細胞,抗原提示細胞,リンパ球,多核巨細胞および脾臓の脾柱平滑筋に証明される.肺では気管支,細気管支および肺胞の上皮細胞,間質の浸潤単核細胞,気道と肺胞腔内の滲出細胞,まれに気管と血管の平滑筋細胞および気管支腺上皮細胞に検出される.肝臓では肝細胞,胆管上皮細胞,クッペル星細胞および浸潤組織球,腎臓では浸潤単核細胞,尿細管上皮細胞および皮質の動脈平滑筋,消化管では腸管リンパ組織にしばしば,絨毛上皮細胞にまれに,副腎では主として毛細血管内皮細胞,膵臓では腺細胞および導管上皮細胞,心臓では炎症巣のマクロファージと心筋細胞,胃では筋層における炎症巣の細胞に検出される[1, 13, 18, 28].