病理学的所見

  PMWSの病理学的所見はほとんどすべての自然例と実験的感染例において記載されているが,本質的に異なるところはない.
  肉眼的変化:最も目立つ変化は全身リンパ節,特に浅鼠径,腸間膜,気管気管支および顎下リンパ節の腫大で,正常の2〜5倍,時には10倍に達する.割面は硬度を増し,白色均一にみえる[13, 18, 21].パイエル板も腫大する[7].細菌の二次感染を受けると,リンパ節病変に炎症と化膿性変化とが加わり変化が複雑化する[21, 30].肺の退縮不全はほぼ全例にみられ,重量と硬度を増す.一部の例では前葉下部における固質化・緻密巣(コンソリデーション)の形成を伴う.胃の無腺部における潰瘍形成が自然例の約半数[28],実験例の15例中2例[13]に発現した.少数例に皮膚の出血と壊死,腎症症候群,漿液線維素性多発性漿膜炎がみられる.
  病理組織学的変化:変化は全身の諸器官・組織に広く分布するが,リンパ節,扁桃,パイエル板,胸腺および脾臓などのリンパ器官が主要な標的である.これらの器官においてリンパ球の減少,単核性食細胞系細胞の浸潤,合胞体性多核巨細胞の形成および細胞質封入体の出現が最も特徴的である.リンパ節の皮質と傍皮質領域は単球,マクロファージおよび樹状細胞の高度の浸潤によって著しく拡大する[13].濾胞中心部にはしばしば巣状壊死があり,その周囲に組織球,類上皮細胞性マクロファージ,多核巨細胞,リンパ球および好酸球が集簇して肉芽腫性炎の形をとる[18, 28].
  細胞質封入体は主として組織球,マクロファージおよび多核巨細胞に出現し,スペインの発生例では60%の症例に認められた[27].大きさは5〜25μm,円形で限界鮮明,均質で好塩基性あるいは両染性に染まり,フォイルゲン反応陽性,細胞質に孤在あるいは多数の小封入体がブドウ房状に集合する.電子顕微鏡観察によると,高電子密度の限界鮮明な円形ないし卵円形の構造として認められ,直径17nmのエンベロープを欠く正二十面体のウイルス粒子が,切断の角度と高さによって異なる様式の結晶状配列を示す.核内にはウイルス粒子は認められない[18].PCV-1の持続感染しているPK-15細胞の電子顕微鏡検索では大型および小型の細胞質封入体が区別され,前者は自家貪食性ライソゾーム,後者はウイルス粒子の組み立てあるいは成熟の場であろうと推測されている.この研究ではウイルス粒子の直径が12±2nmと測定された[31].