発生状況と臨床症状

  PMWSは多くの場合,離乳直前から肥育初期の子豚に発生する.過去の文献における検索例の週齢は5〜15週の間にある.豚群における罹病率は3〜50%,死亡率は8〜35%と幅がある.発病豚の約半数は2〜8日以内に死亡し,ほかの半数は衰弱状態で数週間生残するが,回復する豚はほとんどなく,発症豚の死亡率は80〜100%に達する[13, 17, 18, 21, 25, 27, 28, 30].
  臨床的には発熱,元気消失,皮膚の蒼白,進行性の増体率の低下による削痩,発育障害,さらに,せき,くしゃみ,頻呼吸および呼吸困難を特徴とする呼吸器障害,体表リンパ節,特に浅鼠径リンパ節の腫大,一部の例では皮膚・可視粘膜の黄疸,下痢および嗜眠がみられる[17, 18, 21, 28-30].豚群の死亡率が増加することも一つの特徴である.アイルランド共和国における5〜6週齢の約250頭の豚群では,1.5%の死亡率がPMWSの発生によって8%に増加し,20%の豚がせき,くしゃみおよび呼吸困難により特徴づけられる呼吸器疾患をもち,下痢と髄膜炎症状を示す豚がわずかに増加した.これらの豚の大部分は発育不良で,10〜20%の豚の皮膚と可視粘膜に黄疸がみられた[30].
  PMWSの子豚への伝達実験において,ウイルス材料の経鼻接種をうけた豚にはPCV-2に対する抗体の陽転,PMWSに特徴的な肉眼的・組織学的病変の発現があり,それと密接な関係においてPCV-2の抗原および核酸が証明される.それにもかかわらず,臨床的にはこれらの豚に増体率の低下および軽度の発熱はあるが,ウイルス接種2週あるいは5週後に一部の豚が活力の低下と水様下痢を示したに過ぎなかった[7, 13].これらの観察から,PMWSの臨床症状と病変の軽重は被接種豚の年齢,接種ウイルス量およびPCV-1に対する抗体の有無によって影響を受けるであろうとみられている[7].ノトバイオート豚へのPCV-2の接種実験については病因の項で触れたが,これらの豚に臨床症状が発現しなかったのは,接種ウイルス量が少なかった,殺す時期が早すぎた,あるいはノトバイオート豚を無菌環境下で飼育したため,症状の発現に重要な環境因子に暴露されなかったためではないかと考察されている[13].
  PMWSの症状が細菌やウイルスの二次感染によって複雑化・重篤化することは多くの著者によって指摘されている[12, 13, 21, 28].