これら各国のPMWS罹患豚から分離されたPCVは抗原的に相互に類似するのみでなく,ヌクレオチド配列においても密接に関係し,相同性は96%以上であった.これに対し,PCV-1とは抗原性が異なるのみでなく,遣伝的にも著しく異なることが示された.すなわち両者の全DNAの相同性は80%以下であり,開放型読み枠1(open reading frame 1:ORF1)のDNAとアミノ酸の相同性はそれぞれ83%と86%,ORF2ではそれぞれ67%と65%であった[4, 5, 24, 25].これらの知見からPMWSに関連するPCVはPCV-2と呼ぶことが提案された[4, 5, 24].PCV-2については新たに出現したウイルスあるいは病原性を獲得した変異株ではないかと推測され,あるいはPCV-1はPCV-2が長期間の細胞継代によって病原性を失ったのではないかと考察されているが[18],正確な由来はわかっていない.
  PCV-2の細胞培養への分離には多くの場合,polymerase chain reaction(PCR)によってPCVに汚染していないことを確認したPK-15細胞,あるいはPCVフリーのPK-15細胞のクローンであるPS細胞が使われている.接種材料には肺あるいはリンパ節と肺,肝臓,腎臓あるいは脾臓の混合乳剤を用い,通常,エンベロープをもつ汚染ウイルス,たとえば豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルスを除くためクロロホルムで処理する.PCVの培養細胞における増殖は細胞のDNA合成に依存するので,人為的には感染細胞をグルコサミンで短時間処理することによって,ウイルスDNAを細胞核へ導入し,ウイルスの増殖を促進することができる[36].このためPCVの細胞培養への分離あるいは分離ウイルスの細胞培養での継代にあたっては感染細胞のグルコサミン処理が通常行われる.
  PCVは細胞培養で細胞変性効果を示さないので,通常,ウイルス接種3日後に免疫組織染色,間接蛍光抗体法,ISH,PCRあるいは電子顕微鏡検索によってPCVの抗原,核酸あるいはウイルス粒子の存在を調べてウイルス分離を確認する[3, 4, 13, 25, 27].