牛の発情同期化

  外因性の黄体退行物質投与の処置やプロジェステロン製剤の除去から発情までの期間は,処置終了時の卵胞波のステージにより変動する.選択された優性卵胞が存在する牛は,処置終了後2〜3日以内に発情を示し,処置終了時に優性卵胞が選択されていない牛では3〜7日間は発情を示さない.ホルモン製剤を利用して,発情の開始を正確に調整するには以下の3つの方法がある.
  1)PGFの利用
  発情周期の5日以後のPGFの注射により,黄体は急速に退行する.しかし,この急速な黄体退行にもかかわらず,発情の開始時期はばらつき,これは処置時の卵胞波のステージによる(図6)[37].発情開始時間を制御するためのPGFの利用法を,表3に示した.
  2)卵胞波の同調とPGF
  卵胞波のステージが制御されていない牛では,PGFの利用が制限されるため,それらの牛にGnRHやそのアナログを用いることによって[30],新しい卵胞波を開始させ,卵胞波の再プログラムを行うことができる(図7).PGF投与後の排卵時間をより集中化するためには,PGF投与後48〜56時間のGnRH投与があり,この結果,優性卵胞が排卵し,発情発見に頼らない定時人工授精が可能となる.

図6 牛のPGF投与時の卵胞波ステージと投与後発情開始までの日数


図7 発情周期を繰り返す牛において,排卵時間を制御するためのGnRH―PGF投与法
  Day 0:新しい卵胞波の同調,Day 7:黄体退行処置,Day 9:排卵時間の制御,Day 10:発情発見せずに,15〜18時間にすべての牛に人工授精を行う.